国会議員に秘密
あれから調べて色んな事が分かった。
全ての証拠を集めるのに一週間かかったがそれでも十分だった。
俺は一芝居打つことにして、その日を待った。
そうしてその日は来た。
午前の授業中を受けていると、突然大勢の大人が教室に入って来た。
「困ります、急に」
先生が止めるがそれは成す術がなかった。
「皆さん、あそこに座っているのが金崎ジャーナリストの娘の金崎妃花です」
大人がテレビカメラやスマホ、カメラで金崎を一斉に取り出す。
皆はポカンとしていて先生は撮らないでくれと言うがそんな言葉は大人の耳には届かない。
「彼女はパパ活などをしてお小遣いを稼いでいる乱らな人間なのです。そんな父親に私は、藤村俊二は殺されそうになりました」
金崎は怯えていて動けなくなっていて、クラスの皆も何が起きているのか分かっていなかった。
「警察の皆さん彼女を補導させてください」
そう言って一人の警察官が金崎の腕を引っ張った。
「嫌だ…」
金崎の声も弱弱しく出る。
俺はそれを見て動かずにはいられなかった。
そして金崎の腕を掴む藤村の手を俺は強く握った。
「行かなくていい」
俺は金崎に話しかけた。
「なんだね君は?」
「ただの高校生です」
「そんなことして正義の味方のつもりか?」
「真実を明かすと言う意味ではそうかもしれませんね」
「何を言っているのやら、君も金崎に絆されか?」
藤村は馬鹿にするように笑う。
「じゃあこれを皆さんに見てもらいましょう」
「は?」
俺はカバンから紙を大量に持ち出して後ろにいる記者に渡した。
「何を渡してる?」
「藤村さん、貴方の不正の数々をです」
「さっきから何を言っている?」
「まず、アフリカに学校を作るプロジェクトを藤村さんが主導で行ったでしょう?」
「そうだが」
「その費用は約三臆円だが、実際は二億もない。それはどう言うことですか?」
「何を根拠に…」
「これって…」
記者が俺の書類を見て驚愕し始めた。
「その資料の一枚は藤村さんの口座の一部です。プロジェクトが進んでいるとある日に二億円が振り込まれている」
「これは“借入金”として扱われており、政治資金収支報告書にも記載する予定だった。決して裏金ではない。返済計画もあった」
「では、こちらをご覧ください」
俺はカバンからiPadを取り出してそこに映ったのは、後援企業の経理担当の証言映像だ。
『そのような献金はしていません。
そもそも当社は政治献金を禁止しています』
ざわり、と記者たちがざわついた。
藤村の顔色がわずかに変わる。
「ま、待て……あれは経理の勘違いだ」
「勘違い、ですか。では──こちらは?」
企業側の内部監査報告書。
“政治献金の記録は存在せず、該当時期に二億円の出金は確認できない”
藤村は唇を噛む。
「……それは……。部下が処理をミスしたんだ。
口座に入れたのは秘書の判断だ! 私は知らない!」
「なるほど、秘書のせいですか」
「では──その秘書さんは、なぜあなたの“個人口座の通帳と印鑑”を
常時、携帯していたのでしょう?」
教室が静まり返る。
藤村は答えない。
俺が続ける。
「あなたは国会の規定で“政治団体の資金と個人口座を混同してはならない”と
議員向け講習で何度も聞いているはずです」
「……だ、だから私は預かり金だと言っている!」
藤村は声を荒げる。
俺は一切怯まず、淡々と突きつけた。
「では──この点を説明できますか?」
藤村の個人口座に二億円が入金された“十七分後”
藤村が自宅のWi-Fiからその口座にログインし、
残高を確認していた接続履歴。
藤村の顔が凍りついた。
河上は静かに言葉を落とす。
「秘書が処理したのなら──
なぜ議員ご本人が、自宅から口座へアクセスしているんです?」
「……そ、それはだな……」
言い訳が詰まり、喉がひくつく。
記者たちが一斉にマイクを向けた。
──「説明責任は?」
──「議員、これは裏金ですか?」
──「金崎さんの父親を陥れたのは本当ですか?」
藤村は後退りする。
俺は一歩、前に出た。
「藤村議員──
あなたはアフリカの学校建設プロジェクトの予算を半分横領し、
記事にしようとした金崎記者を“揉み合いの末”ではなく
計画的に襲撃した」
藤村が震える。
俺の声は冷たく鋭く、しかしどこか哀しみを帯びていた。
「そして自分の保身のために、生徒を脅し、
彼女の名誉を踏みにじり、
今日この場で、彼女を“公開処刑”しようとした」
教室の空気が完全に藤村から離れた。
そして警察官に目配せをして合図を送った。
それを見て警察官は藤村の前に逮捕状を出して、手錠をかける。
「待て、なぜ私が逮捕されるんだ?」
「こんなにも証拠が出てる上に貴方には殺人の容疑もあります」
「殺人など断じてしていない」
「これを見てもですか?」
俺はiPadでとある防犯カメラの映像を見せた。
そこには金崎の父親を故意に突き飛ばしている映像とその後、秘書に刺されている映像も映し出された。
「これは秘書が私を殺そうとした、証拠では?」
「なら、その際の肉声もありますが」
「は?」
そうしてスマホから流された音声には、藤村の声で腹部に軽く刺せして直ぐに救急車を呼べば大丈夫だと言っている肉声が流れた。
「違うこれは」
「もう言い逃れ出来ないくらいに証拠はあるんです」
「私は知らない!!」
最後まで往生際の悪い男が警察に連行されて行き、その後を記者が追って行った。
そして、一人の女性警察官が金崎に近寄って行った。
「金崎さん、お父さんの意識が戻ったらしいよ」
「え?」
金崎はまだ現状を理解できないままだった。
「行って来いよ」
「え?」
「お前に父親は殺しなんかしてない、それどころか闇を暴こうとした正義感の強い人間だ。
事件が終わったと報告してやれ」
「分かった」
そう言って涙ぐみながら、立ち上がり警察官と共に教室を出て行った。
「河上」
担任の先生が怒りながら俺に近寄って来た。
「ちょっと来い」
そして廊下に連れて行かれた。
「これはどう言うことだ?」
「これとは?」
「全てだ、説明しろ」
「それは構いませんが、先生だけではなくきちんと教員を集めて放課後に説明をさせて下さい」
「分かった」
そうして、放課後に教員が全員集まり、校長などの前で説明をし始めた。




