高坂との出会い
あれから俺はちゃんとした病院で治療して、万全な状態になるまで一週間入院して家にも帰って、何事もなく無事に日常を過ごせていた。
因みに神鹿狼奈は逮捕されたが、世間にそのことがばれると一斉にサマエルやマラクが暴れだしてしまう可能性があり、そうすれば世界中が大パニックになる。
そう言う判断をされて今は俺も知らないトップシークレットの、刑務所で暮らしているらしい。
そう言う俺はSOにいた。
「河上さん?」
「ん?」
「退院おめでとうございます」
「ありがとう」
「これは祝福しないとね、今日は飲みに行こ」
「それは沙雪さんが飲みたいだけでしょう」
「まあまあ良いじゃない、だって心太と一緒に居られるのももう少しで終わりなんだから」
「本当に行くのか?」
「うん、半年だけだけど日本の高校に戻る」
「そっか、じゃあ半年は会えないんですね」
「そうだね、まあ直ぐに戻ってくるよ」
俺は神鹿狼奈を捕まえることを評価されて長期休暇をもらった。
「やっと一息つけるわ」
「寂しくなるけど、此処は三人で守って行くから安心して」
「三人?」
「言ってなかったっけ、イーサンこのままここに残るの」
「えー、聞いてない」
「またお世話になる」
「僕は多い方が嬉しいし」
「蓮、また日本語教えてくれ」
「うん」
そんな話をしていると、ブザー音が鳴った。
「事件か?」
「ちょっと聞いてくる」
沙雪さんと入れ替わりでブランシェが駆け込んできた。
「おい、仕事だ」
「俺らいなくても良くない?」
「ブランシェさんが頼ってくれたんたんですから頑張りましょう」
「お前ら俺のことなんだと思ってるんだ?」
「で、なんで俺らが?」
「今此処から近いカフェで立てこもりが起きてるらしい」
「なんでそれで俺らが?」
「それが犯人がマラクの人間を連れてこいと言ってる」
マラクか、今までサマエルしか追ってこなかったから何か新鮮さもありながら現場に向かった。
現場に着くと周りに野次馬がいたりしいた。
「で、その立てこもり犯はどこに?」
「あそこだ」
ブランシェが指さす方を見て見ると、窓際に立って拳銃を頭につけて今でもマラクの頭を吹き飛ばしそうだった。
「今から立てこもり犯を射殺するらしい」
「え?」
「いくらなでもいきなり過ぎないか?」
イーサンが止めに入る。
「今人質になってる奴はサマエルに入る可能性が一番高い、まあ相当まあやばい奴だから上は何が何でも捕まえたいんだろう」
「分かった、最後に俺に人質と話をさせてくれないか?」
「は?」
「五分で良い、立てこもり犯の要望通り三十分でレイプ犯を捕まえてくる」
「そんなこと言ってもな」
「大丈夫それは私が何とかする」
「沙雪さん」
「分かったよもう、頭下げるのは俺だけで良い」
「さっすが~」
「ブランシェさんって意外と良い人かも」
小声で蓮君が言うので返した。
「実は狙ってるとか?」
「え、まじですか?」
「まあお似合いじゃない?」
「そうかも」
「なに二人でにやにやしてるのよ、ほらリーダーなんだから指示出して」
「はい、沙雪さんは此処で待機上とのやり取りをしてもらいます、俺と蓮君、イーサンはレイプ魔を探します」
「了解」
「その前に説得だけど、ブランシェ?」
「今、了承が出たが時間は三十分だけだぞ」
「分かった」
俺は、拳銃や危険なものを置いてカフェに入った。
「勝手に入ってくるな!!」
「まあまあ、落ち着いて」
「犯人は捕まったのか?」
「今から捜査する」
「そうやって何もしないつもりか?」
「いや、俺が捜査するから事情を聞かせてくれないか?」
「子供に何ができる?」
「子供でもしっかり捜査権と逮捕権あるから、まあ殺しで捕まる前に子供を信じてみる気はない?」
「勝手に話を進めるな!!」
マラクが話に割ってはいって来た。
「お前のことは知ってる、だから今は黙ってろ」
「ふざけんな!!」
「はいはい、黙ってね」
「さっさとこいつを捕まえろよ」
「黙れ、お前もマラクだってことは分かってるんだよ、道ずれにしてやる」
立てこもり犯が拳銃を頭に押し付ける。
「それで犯人に心当たりは?」
「マーシャル軍事大臣の息子だ、だからもみ消されたんだ」
「そうか、それだけ聞けるだけでいい。後三十分だけ待ってろ。此処に連れてくる」
そう言って俺はカフェを出た。
「どうだった?」
「マーシャル軍事大臣の息子が関わってるらしい」
「それはまた大変だな」
「蓮君その息子の居所と犯行時刻の防犯カメラを探してくれ」
「はい」
「イーサン車を出して」
「了解」
それから車でマーシャルの息子の住んでる家に突入した。
「なんだ!!」
「マイケルだな?」
マンションの一室には息子のマイケルとその友達数人がいた。
「全員顔一致します」
「分かった」
「なんだんだよお前ら」
「インターポールだ、全員連れてくぞ」
「ちょっと待てよ、俺の親父のことを知ってるのか?」
「知ってるよ」
「なら一介の捜査官なんて消せるぞ」
「はいはい、今の俺の携帯で録音したからそれでも引っ張れるな」
「俺の親父に頼めばお前なんて」
「分かったから、なら俺の名前でも言って電話しろよ」
「分かった」
「まあ無駄な時間だし、取り敢えず車こい」
渋々了承してマイケルとその友達を車に乗せた。
「河上さん、後十分です」
「分かった、イーサン飛ばしてくれ」
そんな会話をしているとマイケルが俺に携帯を渡してきた。
「なに?」
「今、俺の親父に繋がってる」
「分かった」
俺はスピーカーにして電話に出る。
『もしもし』
『君が私の息子を逮捕すると言ってる捜査官か?』
『はい』
『事件は終わったんだ』
『まだ終わってないよ、あんたがうやむやにしたせいで今度はまた別の事件を作った』
『そんなものは、下のお前らがすればいいだろう』
『そうだな、だから俺は好きにさせてもらう』
『最後に君の名前を聞いとこう』
『それは俺を首にさせる為か?』
『さあ?』
『河上心太、インターポール本部SO所属だ』
そう言うと、焦った声が帰って来た。
『河上、心太。まさか』
『何か分かったのか?』
『分かった、息子のことは好きにしてくれ、だが上には私のことは言わないでくれ』
「ちょっと待てよ親父!!」
『黙れ、お前がやったことだちゃんと罪を償え』
「そんな」
『頼む、どうかこのことだけはあの人達には』
『あんたが言うあの人って誰かは知らないが、今の会話は全て録音してるし証拠をもみ消したことも全て然るべき所に報告させてもらう』
『そんな』
俺は電話を切った。
「ほれ」
俺はスマホを返した。
「おい、お前に親父がもみ消せるって言うから俺らは付き合ったのに」
「うるさい、俺だって何が何だか分かんねえよ!!」
小競り合いをしている間にカフェに着いた。
俺は車を出て、近くにいたブランシェに話しかけた。
「連れて来たぞ」
「まじで?」
「うん、手伝ってくれ」
「それは良いけど、どうやってあのドラ息子を?」
「なんか俺の名前を言ったら素直に親父は引き払ったぞ」
「なるほどな」
「まあいいや、これで射殺は待てよ」
「はいよ」
それからマイケルとその友達を引っ張って、カフェに入った。
「丁度、三十分だ約束通り連れて来たぞ」
「本当に連れて来たのか?」
「ああ、こいつらがお前の娘と奥さんを殺した奴だ」
そう言うと立てこもり犯は、マラクを離して拳銃をマイケルに向ける。
「まてよ、遊びだったんだって」
「黙れ、お前らの遊びで俺の妻と娘を殺したのか?!」
「それは…」
「死ね」
拳銃の引き金を引く瞬間に俺は、マイケルを蹴っ飛ばした。
「何をするんだ!!」
「お前がこいつらを殺してもただの人殺しになる、そうなればこいつらとお前は同じ土俵になるぞ」
「しるかよ、俺はこいつを殺して俺も死ぬ」
「天国と地獄があるとして殺してそれから死んでもお前は天国の家族には会えないぞ」
「それでも!!」
「諦めろ、死んだ者が望むのは生きてる者の幸福だぞ」
「そんなの、理想論だろ!!」
「そうとも言えない、俺も家族、恋人、仲間を何人も殺されてる、だが恋人にはこの手で救えなかった人より多くの人を救ってから地獄で会おうって約束してんだ。だから理想論でもなんでもいい、俺はお前に人を殺させて死なせるわけにはいかないんだよ」
立てこもり犯は涙を流しながら拳銃を離して、膝から崩れ落ちる。
「俺は、…俺は」
「助かったのか?」
そう言うマイケルの胸元を掴んだ。
「覚えとけよ、パパが偉くてもな何しても許されると思うな、お前がやったことは何をしても許されない、そんなことばかり続けてるとな、いつか自分に銃口を突き付けられるぞ。さっきお前のパパがしたように段々人が離れて一人で死んでいくんだ。それを痛感しながら刑務所で暮らしていけ」
そう言うとマイケルは涙目で助けを乞う。
「助けてくれ、金ならいくらでも渡す」
「金で命は変えるのか、違うから今からお前は捕まるんだよ」
沙雪さんがマイケルをビンタした。
「連れてくぞ」
「ああ」
ブランシェと地元警察が連携してマラクと今回の事件を起こした犯人を連れて行く。
一週間後。
俺はフランスの留置場にいた。
「本当に良いのか?」
モーガンと資料を見て話をしていた。
「ああ、あいつは被害者だ、だからあいつは刑務所で罪を償うのではなく、そとで罪を償う方がいい」
「そうか、なら好きにしろ」
そうして、立てこもり犯と面会をするために部屋に入り椅子に座った。
数分経って、立てこもり犯が入って来た。
「なんの用だ?
「お前を此処から出す」
「は?」
「インターポールの保釈支援、更生プログラムでお前を出す」
「なんで?」
「お前は人の命を奪ってないし立てこもったのは、罪になるがお前が人質に取ったのはマラクの重要人物だ、数日経てば此処から出れる」
「俺は外に出てもやることはない」
そう言って立ち上がる立てこもり犯。
「なら、娘との家族との思い出を作って行けば良いだろ」
「どうやって?」
「墓の前で娘が二十歳になる時にでも酒を持って行って飲んでやれ、そこには一人だとしても、段々奥さんと娘の姿が一瞬でも見えるだろうよ」
「俺が一番楽しみにしてたことだ」
「そうだ、例え生きてなくとも誰かが生きてれば思い出を作ることは出来る」
「分かった」
「じゃあ外で待ってる」
そう言って俺は外で待ってると、髭が益々生えて長髪で見るからに怪しい。
「お前、髪と髭早くそ剃れよ」
「はい、ありがとうございました」
一礼してお礼を言われた。
「ああ、お前これからどうするんだ?」
「まだ何も決まってないですけど、家族に報告します」
「そうか」
「はい、あの貴方は?」
「俺は明日朝一の便で日本に行く」
「そうですか」
「ああ、じゃあなもう会うことはないだろうけどもう悪さするなよ」
「はい、本当にありがとうございました」
そうして俺は家に帰った。
「ただいまです」
「お帰りなさい」
ベルモンさんが迎えてくれた。
「これでお迎えの言葉を掛けるのは最後になるかもしれませんね」
「半年だけですよ」
「そうでしたね」
それから家族と夕食を食べた。
色んな話をした、宗一郎さんと理沙さんは寂しそうにしていた、隼人さんはいつでも会社に顔を出してほしいと言っていた。
冗談と思っていたが顔が本気だった、人からこんなにも必要とされたのは久しぶりかもしれない。
遥さんには日本で仕事することもあるから、その時は家に行くと言われた。
そうして一夜が明けて、俺は挨拶をして空港に向かった。
「心太」
そこにはSOのメンバーがいた。
「お見送りいらないって言ったのに」
「大事な仲間なんだから当たり前でしょ」
「そうだ、ましてやリーダーなんだから」
「河上さん、日本でも元気で」
「ああ、蓮君も無理してお姉さんを心配させないようにな」
「はい!!」
「あとこれ」
沙雪さんがお弁当を渡してくれた。
「あ、ありがとうございます」
「私じゃない」
「え?」
「ブランシェ」
「はい?」
普段こんなことしないので背筋が凍った。
「なんで?」
「お土産を頼むとさ」
「分かりましたよ」
「じゃあ、時間なので行きますね」
「うん、私達のお土産もお願いね」
「はい」
そう言ってバックを持って搭乗口の方に歩き出した時だった。
「あの、待ってください!!」
振り返ると昨日の立てこもり犯キャリーケースを持って走って来た。
「なんであんたが?」
「私貴方について行きます」
「は?」
「私の経歴見ましたよね?」
「ああ」
資料に英国王室の元執事養成学院を首席で卒業と書いてあったのを思い出した。
「私はこれから貴方の執事になります」
「なんでそうなる」
「私達、執事は仕えるお人の全てを聞きます、貴方は仕えるべき人だと判断しました」
「まあいいや、俺の名前は河上心太。よろしく」
「はい、私は高坂とお呼びください」
そうして俺は日本で半年高校生として過ごすことになった。




