第九十九話 後で役に立つんだ
今回の目的地=大量の武器弾薬が手に入る場所。
それがこの場所、軍の補給部隊の中継地点だ。
「ロックにぃ。アレ、ナンやの?」
聞いてくるモカに、俺は説明する。
「ゾンビの大量発生に対して、政府は5000名の兵士をアライグマシティーに派遣した。そして、その5000名の軍はアライグマシティーに臨時基地を設置。その臨時基地への物資輸送の中継地点がココだ」
「こんなに高性能の武器を持った兵士が5000人もおったらゾンビくらい簡単に殲滅出来たんとちゃうの?」
モカの疑問も当然だけど。
「軍ってのは民間人を保護しなきゃいけない。そして保護した民間人のなかにはゾンビに噛まれたのを黙ってたヤツも交じってた。そして夜中にゾンビ化して人を襲いまくってゾンビが大量発生。兵士達は、背後からゾンビの不意打ちを食らって壊滅ってワケさ」
「そら気の毒やな。まあ、それは置いといて、結局ココはナンで人がおらんの?」
「その臨時基地の兵士5000名に補給する為の、軍用ライフル5000丁と弾薬をトラックで輸送してたんだけど、この中継地点に辿り着いたトコでゾンビの大群に襲われた。そしてトラックの運転手は、臨時基地と連絡が取れない時点でトラックを捨てて逃げ出したってワケさ」
「まだ仲間が生き残って戦っとるかもしれへん、ちゅうのにかいな。ふん、その逃げ出した運転手ちゅうヤツはクズやな。もしウチがその場におったら、そいつブン殴ってやったわ!」
プンプンと怒るモカに、俺は苦笑いする。
「いや、そう言う設定なだけで、ホントに任務を放棄したクズがいるワケじゃないんだけど」
「へ?」
モカが首を傾げるが、そこで。
「話しの邪魔をして悪いが、そろそろ武器弾薬をマジックバックに収納しても構わないだろうか」
ジュンが困ったような顔で、そう聞いてきた。
「あ、ゴメン! それが目的やったわ」
モカがパンと手を合わせたトコで。
「ああ。誰が何をマジックバックに収納するかはジュンに任せる。俺達に構わず進めてくれ」
俺がそう言うと。
「了解だ」
すぐにジュン達は行動に移る。
そしてトラックの荷台の武器弾薬を全てマジックバックに収納すると。
「ロック。心から感謝する」
ジュンが俺に、深々と頭を下げた。
「まさに圧倒的な力を手に入れる事が出来た。これならきっと、戦国エリアを統一出来ると思う。ロックのお陰だ」
「いや、まだ出発地点に立っただけだ。戦国シミュレーションゲームをやり込んだのなら分かってるだろ? 本番は、これからだって」
「それを言うなら、ロックこそ分かっているのだろう? これにより、圧倒的に有利な所から出発できると」
「まあね」
ジュンの返しに俺は苦笑する。
確かにコレは、チートの中のチート。
強くてニューゲーム的な楽しみ方をする為に用意したモノだ。
「じゃあジュン。この圧倒的な力を戦国エリアに持ち帰ろうぜ」
俺はそう言うと、トラックを指さす。
アメリカ軍ご用達の5tトラック、Ⅿ939だ。
5tトラックというが、それはオフロードでの話し。
舗装された道路なら10t近い運搬量を誇る。
まあ現実ではオシュコシュFⅯTⅤに代替わりしつつあるけど。
とにかく、その6×6輪駆動のパワーならゾンビを蹴散らせるハズ。
「念の為に1人1台で行こう。もし1台に何かあっても、すぐに別のトラックに乗り移れるように」
「良い案だな、それで行こう」
ジュンはカキクケコの順で、Ⅿ939を走らせる事にしたらしい。
その後ろにジュンのⅯ939で、最後尾は俺が運転するⅯ939だ。
そしてトラックの運転が出来ないモカは、俺の隣に座ると。
「ウチも運転してみたかったなぁ」
ちょっと残念そうに呟いた。
「今は帰るコトを優先するけど、今度来たトキ運転を教えるから我慢してくれ」
俺がそういうと、モカは顔を輝かせる。
「ホンマ!?」
「本当だ。そのうちココには何度か戻って来るコトになる筈だ。その時に運転を教えてやろう」
「やったで!」
モカが拳を突き上げて喜んだトコで。
「出発!」
ジュンが大声を上げ、カが運転するⅯ939が走り出した。
Ⅿ939の車重は9・8t。
車体を動かすのは、14000cc6気筒ディーゼルエンジン。
その重量とパワーが生み出す破壊力は、簡単にゾンビを轢き倒す。
続いてキクケコ、ジュンが運転するⅯ939の順で走り抜けて行く。
そして最後尾を走るのは、俺が運転するトラックだ。
でも、ただトラックを走らせているワケじゃない。
ボシュ! ボシュ! ボシュ! ボシュ!
ヴ! ヴ! ヴ! ヴ! ヴ! ヴ!
俺はモカと、揺れるトラックからゾンビを狙い撃つ練習を行う。
スキルを手に入れる為と、スキルレベルを上げる為だ。
「なんや、こういうのも楽しいわ」
モカが楽しそうにⅯP7を撃ちまくってる。
これならモカも、新たなスキルを手に入れるんじゃないかな。
ま、この練習で手の入るスキルは射撃関係のモノ。
今直ぐに役立つスキルじゃないけど、役に立つ時がきっと来る。
……たぶん。
なんてゾンビ相手に射撃練習を繰り返していると。
「へえ。もう着いたんや」
モカが感心した様に、出発してから数時間で新宿駅前に到着した。
ゾンビの群れを突破するのに数日費やしたけど。
Ⅿ939なら、あっという間だったな。
そういや映画なんかじゃ、こんなシーンが良くある。
ゾンビの群れに突っ込んだ車が、ハンドルを取られて横転する場面が。
でもカは、そんなミスはしない。
群がるゾンビを轢き倒しながらもトラックのコントロールを失わなかった。
素直に、大したモンだと感心する。
ジュンは仲間に恵まれてるみたいだな。
ま、それはそれとして。
新宿駅前の道路には、魔法陣が輝いている。
ダンジョンの入り口である、雨傘神社に戻る為の魔法陣だ。
その魔法陣を目にするなり、モカが嬉しそうな声を上げる。
「あの魔法陣に入ったら、戦国エリアに戻れるんやな。銃を撃つんは楽しかったんやけど、ゾンビのルックスと匂いは、ちょっとウチにはキツかったさかい、なんやホッとしたわ」
そうか、ゾンビはやっぱり嫌だったか。
でも、モカには悪いけど。
「その前にやるコトがあるんだ」
「ええ~~~~?」
俺は、イヤだ、と全身でアピールするモカの頭にポンと手を置く。
「そんな顔するな。直ぐ済むから」
「ほんま?」
「本当だ」
俺はきっぱりと言い切ると、Ⅿ939から降りて、魔法陣の前に立つ。
そんな俺に、ジュンがⅯ939の運転席から尋ねてくる。
「どうしたんだ? 帰らないのか?」
「コレをやっておいたら、後で役に立つんだ」
俺はそう言って、ジュンに笑いかけたのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




