第九十七話 こんな別荘があってもエエな
自分達用の武器弾薬をタップリ補充した。
では本来の目的=戦用の大量の武器弾薬を手に入れよう。
と言いたいトコなんだけど。
「もう夕方だ。夜の移動は危険だから、今日はこのままココに泊まらないか?」
俺は、この超高級マンションで一泊するコトを提案した。
「アライグマシティーに、安心して寝られる場所は殆ど無い。でもセキュリティーがシッカリしているココなら、ゾンビに襲われる心配をせずに、安心して寝るコトが出来る。どうだ?」
反対する声はゼロ。
全員が賛成してくれた。
それはそうだろう。
寝ている間に、ゾンビに襲われる。
そんな危険を冒したい者など、居る筈が無い。
ついでに言うと、ココには豪華な食材が保存されている。
有名ホテルのビーフシチューとかカレーとかのレトルトだ。
某国大使の別荘を装う為なんだけど、種類は豊富。
その豪華な食材を楽しまない、なんて選択肢はない!
というコトで俺達は。
豪華な料理を楽しみ、広い風呂に入り、フカフカのベッドで寝たのだった。
そして次の日の朝、豪華な食事を済ませた後。
「なんや、このままココで暮らしたくなってきたで」
フカフカのベッドにスリスリしながら呟いてるモカに、言ってやる。
「それもアリだぞ。どの食料も1週間でリポップするから永遠に食べ物には困らないし、風呂も洗濯機も乾燥機も完備されてる。漫画やDⅤDも万単位でストックされてるし、ゲームソフトも日本で発売されたモノ全てが揃ってる。死ぬまで退屈するコトはないだろうな」
「いややなロックにぃ、冗談や。ウチは死ぬまでロックにぃと一緒やで」
慌てて飛び起きるモカに、俺は笑いかける。
「ま、このアライグマシティーはモカにとって遊び場みたいなモンだから、こんな別荘がある、と覚えておいたらいい。もしもノンビリしたくなった時なんか、ここで休暇を取るのも悪くない」
「せやな。こんな別荘があってもエエな」
モカがニッコリと笑ったトコで。
「出発準備、完了だ」
ジュンが俺の元にやって来た。
「よし、じゃあ行くか」
俺はそう答えると、超豪華マンションを後にした。
「アライグマシティーの反対側まで行く。ゾンビは、撃ち倒せるようなら撃ち倒すし、時間がかかり過ぎるようなら避ける。ミンナ、それでイイかな?」
反論は出なかったので、その予定で目的地を目指す。
そしてふらふらと脇道から姿を現すゾンビを射殺しながら進んでいると。
「なあロックにぃ。なんやステータスアップした体、ちゃんと使いこなせとる気がするんやけど」
モカが俺に、そう言ってきた。
「銃も壊さなんと撃っとるし、ゾンビの不意打ちも十分に余裕をもって対処できるようになった気がするんや」
それは俺も感じていたコトだ。
でもそれだけじゃ十分じゃない。
「なら全力で迎え撃ったり、半分の力で戦ったりして、パワーの使い分けが出来るか試してみよう」
というコトで、試しに全開で戦ってみる。
「あ~~~」
ボシュ!
「あ~」
ボシュ!
「あ」
ボシュ!
「」
ボシュ!
「ちょっと待ってぇな、ロックにぃ。ウチらが銃を構える前にゾンビを全滅させるんは勘弁してぇな」
文句を言うモカに、ジュンもカキクケコも頷いてる。
「ワルイワルイ。俺の方は十分に確認っできたから、次はユックリ撃つから」
と、俺がペースをもとに戻すと。
「あ~~~」
ヴ!
「あ~」
ヴ!
「あ」
ヴ!
「」
ヴ!
今度はモカが、ゾンビ出現と同時に瞬殺し始めた。
それが20分ほど続くと。
「モカ。そろそろワタシ等にも撃たせてもらえないだろうか」
今度はジュンが声を上げた。
「あ、ゴメン。つい夢中になってもたわ」
モカはテヘッと笑うと、先頭をジュンに譲る。
「ほならジュンねェ、お先にどうぞ」
「悪いな」
そう言ってジュンが前に出るが……俺は、そこで初めて気が付く。
ジュン達が、特殊部隊の戦い方をしているコトに。
よし、これはモカにも教えておかないと。
「モカ。ジュンとカキクケコの進み方を、良く見てみるんだ」
「進み方?」
最初は何を言われたのは、よく分からなさそうなモカだったが。
「へえ。まず1人が先行して周囲を確認。その1人目がそのまま警戒しとる間に今度は2人目が、更に先に進んで周囲を確認。その間、1人目は警戒したままで、もし2人目に何かあったら、直ぐに援護できるようにしとる。そして2人目が周囲を警戒しとる間に3人目が先に、と常に互いを援護しながらカキクケコが1つの戦闘ユニットとして動いとる。これが戦いのプロの動きなんか。勉強になるで」
良く出来ました。
ついでに言えば、進む距離やカバーの仕方、呼吸の合わせ方も見事。
本物の特殊部隊の動きだ。
え? ナンでそう言い切れるんだって?
そりゃあ実際の特殊部隊の戦い方を研究したコトがあるからだ。
アメリカのネイビーシールズやグリーンベレー。
イギリスのSASや、ドイツのGSG9とかを。
そしてカキクケコの動きは、そんな特殊部隊に負けてない。
これは人が思うより凄いコトだ。
「ヤタガラスの団は、思ってたより遥かに強力な傭兵集団みたいだ。これはジュンが訓練したのか?」
俺が指揮を執っているジュンに聞いてみると。
「カキクケコも戦国シミュレーションをやり込んだプレイヤーだが、かなりのミリタリーマニアでもあるんだ。だから本物のⅩⅯ5を手に出来て、しかも大好物のゾンビ系ガンシューティングサバイバルホラーをリアルで体験出来て、張り切っているんだろう」
そう言われてみたら、カキクケコは緊張してるけど嬉しそうに見える。
ま、その気持ちは良く分かる。
戦々恐々としながら探索し、遭遇したゾンビを撃ちまくる。
その恐怖にまみれた爽快感は、他のゲームじゃ味わえない。
別格の感動と言っても過言じゃないと、俺は思う。
だから俺は、アライグマシティーをプログラムしたんだ。
あの別格の快感を、心の底から楽しみまくる為に。
ついでに言うと、ゾンビ系ガンアクションホラーダンジョンは他にもある。
そのうちトライしてみようかな。
リアルだと、こんなに楽しくて充実してるとは思わなかったから。
などと考えてたら。
《新たにスキル『精密射撃Lv1』『動態狙撃Lv1』『移動狙撃Lv1』を入手しました》
脳内で、アナウンスがそう告げた。
2023 オオネ サクヤⒸ




