第九十六話 そんな企みが日本で!?
「で、この超高級マンションで何をする気なんだ?」
聞いてくるジュンに、俺は案内板を指さす。
「目的は、この部屋だ」
つまり最上階の全フロアを占める、超セレブの住居。
なんだけど、ここで。
「あ~~~~~」
「う~~~~~」
はい、お約束のゾンビさんの登場です。
「セキュリティーがシッカリしているこの超高級マンションに、どうやって侵入したのだろう?」
首を傾げているジュンに、俺は説明する。
「外部からゾンビは侵入しないけど、マンションの住民が変化したゾンビは徘徊してる。だってセキュリティーの所為で外に出るコトが出来ないから」
「そう言われたらそうだな」
ジュンは、そう答えると同時に射撃を開始。
そして最後の1匹を撃ち倒すと、ジュンは俺に聞いてくる。
「で? その最上階に何があるんだ?」
「それは見てのお楽しみ。と言いたいけど、実はある国の武器庫だ。日本でスパイ活動を行いながら、本国から命令があれば、いつでもテロ活動を起こせるように準備してるんだ」
「そんな企みが日本で!?」
大声を出すジュンに、俺は苦笑する。
「そういう設定の隠し補給ポイントさ」
「あ、ああ、ここはファイナルクエストがリアルになった世界だったな」
「というコトで、さっさと最上階に行くぞ」
そう言う俺の背中をモカがつつく。
「でもロックにぃ。上に行く為の階段があらへんのやけど」
そういやモカは、この世界の生まれだったっけ。
ならエレベーターを知ってるワケないよな。
なので俺はエレベーターを指さして説明する。
「あの扉の中には箱が入ってて、ボタンを押すと、その箱が俺達を最上階に運んでくれるんだ」
「へえ。便利やな」
モカはそう言うと、エレベーターに駆け寄り。
「このボタンを押したらエエんやろ?」
扉の開閉ボタンを押した。
「あ、でもモカ。油断するなよ」
俺は、慌ててそう言うが。
ウィーーン
「あ~~~~~」
「う~~~~~」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
遅かったか。
エレベーターから飛び出してきたゾンビを見て、モカが悲鳴を上げてる。
でも、次の瞬間。
ドゥ! × 6
ジュンとカキクケコが同時にⅩⅯ5を発射。
出てきたゾンビを瞬殺した。
「あ~~、ビックリしたぁ……」
尻もちをついているモカのデコを。
ピン!
「あいたーー!」
俺は指で弾いた。
「ロックにぃ、ナニすんねん?」
涙目で睨むモカの頭に、俺はポンと手を乗せる。
「いいか、モカ。たしかにゾンビごときに傷を受けるコトはない。でも油断し過ぎだぞ。廊下の角を曲がる時、階段を上がる時、扉を開く時。常にその先にゾンビがいないか注意しながら進むんだ」
「はぁい」
モカが素直に頷くが、ホントは千里眼を常時発動させればイイだけのコト。
でもそれではアクションサバイバルホラーの楽しみが半減してしまう。
扉を開ける時や、階段を上る時のドキドキ、ハラハラする感じ。
進んだ先に、ゾンビが待ち構えてたら、という恐怖。
これが、このゲームの魅力の1つなんだから。
ま、それは置いといて。
「じゃあ最上階に向かおうか」
俺はモカやジュン達と共にエレベーターに乗り込む。
そして最上階のボタンを押して扉が閉まると。
「モカ。今度は、油断はナシだぞ」
一応、そう言っておく。
「もちろんや」
モカはそう言うと、ⅯP7を構える。
「今度はウチがゾンビを全滅させたんねん」
そしてモカは、緊張した顔でエレベーターの扉が開くのを見守るが。
「はぁ~~~、ナンや、なんもおらへんやん」
開いた扉の先が無人であるコトを確認して溜め息をついた。
「でもモカ。まだ油断するなよ」
俺はそう言ってからエレベーターを降りると、周囲を見回す。
うん、俺がプログラムした通り、ここは広いエントランスになっている。
そして豪華な扉の先は、某国大使の住居に相応しい豪華なモノ。
何も知らなければ、単なる贅沢な別荘で通るだろう。
「でも。このデスクの上のパソコンに、キーワードを入力すれば……」
そう呟きながら、俺がキーを叩くと。
ズゥーーーーーーン。
壁が静かに左右に分かれ、そこには大量の武器が並んでいた。
「これで終わりじゃないぞ、と」
更に別のキーワードを入力。
ゴトン。
別の壁が開き、弾薬庫が現れる。
武器も弾薬も、駅前の銃砲店より遥かに多い。
なにしろ大国が日本でのテロ用に用意した武器なんだから。
(現実の如何なる国とも関係ありません)
「さ、弾薬補給の時間だ」
俺が言う前に、ジュン達は動き出していた。
まず、弾薬庫からⅩⅯ5の弾倉を集めると、弾丸を装填。
もちろん今までも持っていた空弾倉にも弾を込める。
そして全員で均等に分けると。
「予備武器にもサイレンサーが必要だな」
「予備武器の弾薬も全部マジックバックに入れておくか」
「これも予備武器としてもっていこう」
自分用の武器を、物色しだした。
そんなジュンとカキクケコに、俺は声をかける。
「全員、マジックバック持ちなんだろ? ゼンブもっていったらどうだ?」
「「「「「「あ」」」」」」
その瞬間、ジュンとカキクケコは声をハモらせると。
「言われてみたら、ロックの言う通りだな。全員、均等に武器をマジックバックに収容するんだ」
「「「「「は!」」」」」
ジュンの指示で、この隠しポイントにある武器弾薬を収容し始める。
そこでモカが。
「あ! ウチとロックにぃが使うとる弾は残しておいてや!」
焦った声を上げるが。
「心配無用だ。そのくらい、心得ている」
ジュンが言ったようにⅯP7が使用する弾は、そのまま残されていた。
もちろんⅯ4カービンの使用弾も。
「さすがだな」
俺が感心していると。
「アタシ達は銃での戦いを知り尽くしているからな。当たり前だ」
ジュンは、そう言って胸を張った。
2023 オオネ サクヤⒸ




