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   第九十四話  ヒャッハー!





 ジュンの賛成で、ゾンビを正面から撃退するコトに決まった。

 とはいえ、扉を開けた瞬間、ゾンビの群れが雪崩れ込んできてしまう。

 だから。


「まずは窓からゾンビを撃って、銃に慣れよう」


 俺は、そう提案した。


 ジュンもカキクケコも転生者だ。

 ゾンビは頭を撃たないと倒せないコトくらい知ってる筈。

 でもⅩⅯ5を使うのは初めてで、しかも試し撃ちさえしていない。


 ちなみにこの店は、かつて渋谷にあったナイフショップを参考にしている。

 四国でお肉屋さんをしつつ、渋谷にショールームという変わった店だ。

 しかし店主の方が亡くなられて閉店してしまった。

 俺も何十回も利用させてもらっていたので、凄く残念だ。


 そのナイフショップはビルの2階にあったので、この店も2階にある。

 だから窓を開けて、全員で外を覗いてみると。


「全部で50匹くらいやな」


 モカが言ったように、入り口をふさいでいるゾンビの数は50ほど。

 この数なら、簡単に倒せそうだ。


「よし。じゃあ試し撃ちを始めてようか」


 俺がそう言った瞬間。


 ドゥ! × 6


 ジュンとカキクケコがⅩⅯ5をぶっ放した。


 さすが銃の専門家。

 初めて撃つⅩⅯ5で見事にヘッドショットを決めている。


「凄いな」


 思わず呟いた俺に、ジュンが笑みを浮かべる。


「火縄銃でも200メートルで狙撃を成功させるのだ。いくら初めて撃つⅩⅯ5だろうが、ゾンビまでの距離は、たった20メートル。感覚で撃っても的を外す事などない。ま、射撃の精度を上げる練習は必要だが」


 そんなモンなのか?

 ま、そこが火縄銃とはいえ実際に銃を訓練してきた成果なんだろうな。

 って、感心してる場合じゃない。

 俺もⅯ4カービンの練習を始めるとするか。


 ちなみに俺が手にしているⅯ4カービンはホロサイト搭載モデル。

 画面の広い照準器に浮かぶ光の点が、着弾位置だ。

 だからホロサイトを覗いて光の点をゾンビの額に合わせ。


 ボシュ!


 引き金を引き、ゾンビの頭を撃ち抜く。

 うん、思ったより簡単だ。

 ホロサイトの視界は広いので、狙いやすい。

 一方モカも。


 ヴ! ヴ! ヴ!


 レーザーポインターで慎重に狙いながらゾンビを撃ち倒している。

 へえ、初めてなのに上手く使いこなしてるな。

 そして50匹ほどのゾンビを全て倒したトコで。


「ロックにぃ! これゴッツ楽しいわ!」


 モカが目をキラキラさせて歓声を上げた。

 いや、眼をキラキラさせてるのはモカだけじゃない。


「これが最新アサルトライフルか」

「凄い威力だった」

「日頃使っている火縄銃とは天と地の差だな」

「さすがアメリカ軍正式採用アサルトライフルだ」

「思ったより重さは気にならないな」

「それは我々のレベルが3だからじゃないか? しかし悪くはない」


 ジュンとカキクケコも嬉しそうだ。

 ともかく、ビルの入り口で群れていたゾンビも始末したし。


「そろそろ出発するか」


 俺はビルの外へ向かうコトにした。


 ダンジョンクリアが目的なら、地下に造られた巨大施設を目指す。

 でも目的は大量の武器弾薬。

 それはアライグマシティーの端っこ、入り口の反対側にある。


「直線距離で30キロくらいだけど、いろんな障害物があるから辿り着くのに2~3日かかると思う。食料と水はマジックバックに入ってるから心配いらないだろうけど、弾薬は補充が必要になるだろうから、隠し補給ポイント経由で進む」


 俺は、今後の方針をザッと説明すると。


「じゃあ出発しようか」


 新宿駅前の銃砲店を後にした。

 こうして乗り捨てられた車がアチコチにある大通りを進んで行くと。


 ガチャ。


 その車のドアがいきなり開き。


「はぁあああ~~~~~~」


 1匹のゾンビが、モカの足元に這い出てきた。

 俺もそうだけど、とモカにとってもゾンビなんかザコ以下。

 デコピンでも消滅させるコトができる。


 が、問題は、その見た目のインパクト。

 いきなりズタボロの動く死体に這い寄られたモカは。


「わきゃぁああああああ!」


 思いっきり絶叫を上げた。

 まあ、その気持ちは分かるが、問題は。


 メギィ!


 ビックリしてⅯP7を握りつぶしてしまったコトだろな。

 急激にアップした力を制御できてない。

 車のアクセルに例えると、分かり易いかな?

 普段は慎重に操ってるけど、今みたいに驚くと、思いっきり踏んでしまう。

 でも、だからこそ、良いトレーニングになる。


「ああ! しもた!」


 使い物にならなくなったⅯP7に、泣きそうな目を向けるモカに。


「モカ、これを使え」


 俺はマジックバックから取り出した、ⅯP7を手渡してやる。


「こんなコトもあろうかと、何丁か予備に持って来た。ビックリしたり夢中になって壊してもイイようにな」

「さすがロックにぃや!」


 モカはそういうと、直ぐにⅯP7を構え。


 ヴ!


 1発でゾンビの頭を撃ち抜いた。

 よし、この調子で手加減を身に付けたらイイ。

 でも、さっきの悲鳴はマズかったみたい。


『あ~~~~~~~~』

『う~~~~~~~~』


 路地裏から、かなりの数のゾンビが姿を現した。


「ウチのせいで……ご、ごめん!」


 涙目になっているモカに。


「気にするな。イイ練習台だ」

 

 俺は笑ってみせると。


 ボシュ!


 Ⅿ4カービンでゾンビの眉間を撃ち抜いた。

 と同時に。


 ドゥ! ドゥ! ドゥ! ドゥ! ドゥ! ドゥ! ドゥ! ドゥ!


 ジュンとカキクケコも、ⅩⅯ5を撃ちまくる。

 ⅩⅯ5の弾丸はⅯ4カービンやⅯP7より強力なので。


 ドパッ! ビシャ! ボッ! ガパッ! グシャ! ゴパッ!


 ゾンビの頭が派手に吹き飛んでいる。

 俺は、そんなかなりグロい光景からモカに視線を移すと。


「早く銃を撃つ練習をしないと、ゾンビを全部倒されちまうぞ」


 モカに向かって親指を立ててみせた。


「せ、せやな!」


 お、元気を取り戻したらしい。


 ヴ! ヴ! ヴ! ヴ!


 モカもゾンビを撃ち倒し始めた。

 よし、じゃあ俺も練習再開だ。


 ボシュ! ボシュ! ボシュ! ボシュ!


 うん、これがリアルのアクションホラーゲームか。

 プログラムした俺が言うのもナンだけど、実に良いデキだ。

 ゾンビは不気味だから罪悪感なしに撃ち倒せる。

 ここの出現するゾンビは走るヤツじゃないから、難易度も高くない。

 でも見た目のインパクトで、感じる恐怖もそれなり。

 そして本物の銃だから、威力も反動も臨場感タップリ。


 うん、これはハマる。

 マジで楽しくなってきた。


「ヒャッハー!」


 ボシュ!ボシュ! ボシュ! ボシュ!


 思いっきりエンジョイモードの俺に。


「ロックにぃ?」


 モカは一瞬、驚きの眼を向けるが。


「ひゃっはー!」


 ヴ! ヴ! ヴ! ヴ! ヴ!ヴ!


 俺の真似してⅯP7を撃ちまくると。


「ロックにぃ、なんやクセになりそうや」


 心から楽しそうな笑顔を俺に向けたのだった。










2023 オオネ サクヤⒸ

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