第九十二話 ようこそ、アライグマシティーに
小田を倒す為、軍用ライフルを手に入れるのを急ぐ!
そう俺が決意したトコで。
「この村の惨状……いったい何があったのだ?」
ジュンがヤタガラスの団を引き連れて到着した。
そのジュンに、小六が状況を説明すると。
「そうか、小田が……以前から常軌を逸脱したヤツだと思っていたが、これほどとはな」
ジュンはそう呟いてから、小六に鋭い目を向けた。
「小六よ。最初に攻め滅ぼす相手は小田だ」
「おう! 蜂須賀一家の縄張りでふざけた真似をした事、死ぬほど後悔させてやろうぜ!」
小六はグッと拳を握り締めてそう叫ぶと。
「ロック、聞かせて欲しいんだけどよォ、どうやって軍用ライフルを手に入れるんだ?」
俺に、そう聞いてきた。
「どうやら呑気に待ってるワケにはいかないようなんでよ。もしオレに出来る事があるなら手伝わせてくれ」
小六の言葉に、ジュンも頷く
「ワタシも聞きたいな。予想外の事が起きて聞きそびれてしまったが、どうやって軍用ライフルを手に入れるか聞いておかないと準備が出来ない」
そういや小六にもジュンにも詳しいコト説明してなかったな。
この際だからキッチリ説明しておくか。
というコトで、何が手に入り、どれほど危険か説明すると。
「戦国エリアに、そんなダンジョンが存在するのか!? こりゃあ、この目で確かめるしかねェな! オレも参加させてくれ!」
小六は目を丸くした後、パンと両手を合わせて頼み込んで来た。
「俺は構わないけど、参加人数は出来るだけ少なくしてほしい。あ、あと転生者が最低1人、必要だ」
俺がそう言うと。
「ならオレが行く事、決定だな。なにしろオレは転生者だから当然マジックバッグ持ちだし」
小六が即答した。
へえ、決断が速いな。
しかも自分が率先して危険に飛び込むのか。
一国のトップとしてはどうかと思う。
でも俺が兵士なら、こんな男に付いていきたいと思うだろうな。
天下を統一するのは、こんなヤツかも。
と俺が感心してると。
「いや、それはマズいだろう」
ジュンが反対した。
「小六は蜂須賀一家の頭領だ。そして頭領の役目は、自らが危険を冒す事ではないだろう? だからここは、ワタシに任せてくれないか? かならず軍用ライフルを手に入れて帰るから」
ジュンの説得に、小六は渋々頷く。
「確かにそうだな。オレの体は、もう既にオレ1人のものじゃなかったな。なら同盟軍ヤタガラスの団の団長孫一! 軍用ライフルを手に入れて、無事に帰ってきてくれ!」
「承知!」
妙に気迫のこもったやり取りの後。
「という事でワタシと、アタシが信頼している仲間を5名ほどでダンジョンに挑みたいが、構わないだろうか?」
ジュンは俺に、覚悟を決めた目を向けてきた。
「さっき説明した通り、これから向かうのは、かなり危険なダンジョンだぞ。覚悟は出来てるんだろうな?」
俺は一応、念を押してみるが。
「承知の上だ。こんな圧倒的戦力が手に入るなんて、戦国シミュレーションをやり倒したワタシですら知らない情報なんだ。簡単に手に入る筈が無いくらい、ワタシだって分かっている」
ジュンの覚悟は、1ミリも揺るがなかった。
「よし。なら今すぐ出発したいけど、大丈夫か?」
「もちろんだ。同行させるのは、常にワタシと行動を共にしてる、ワタシが最高に信用している仲間なのだから」
ジュンは、そう言うと。
「カ! キ! ク! ケ! コ!」
いきなり訳の分からないコトを叫んだ。
「なんだ、そりゃ?」
思わず俺が聞いてみると。
「戦場じゃあ、名前を呼んでる暇すらない時がある。そんな時に備えて、瞬時に命令を伝達できるように、団の要の者には1音の名を与えてるんだ」
ジュンがそう言った時には、もう5人の屈強な男が整列していた。
年齢は40歳前後。
40歳といえば、体力が充実していると同時に、十分に経験を積んだ年齢。
戦闘力が高いうえ、部隊を率いる隊長として活躍できる人材だ。
なかなかジュンも考えている。
「いつでも出発できるぞ」
そういうジュンから、俺はモカに視線を移す。
「モカ。さっき説明したように、今度のダンジョンは今までとは違う。数日でかえってくるから留守番しててもイイぞ」
俺がそう言うと、モカは直ぐに。
「いやや」
そう言って、フンと鼻を鳴らした。
「ウチは、そんくらいじゃビビらへん。ちゅうか、その程度でビビっとったら今後ロックにぃに付いて行けへん。せやさかい、ウチはロックにぃと一緒に行くで」
聞くと見るとでは、かなりインパクトが違うんだけど……。
それなら、今までとは方向性が違うダンジョンを体験してもらうか。
「ん? なんか言うた?」
モカが、俺の呟きを聞いて首を傾げるが。
「いいや、なんでもない」
俺はベタに誤魔化すと。
「じゃあ出発するか」
モカとジュン達を引き連れて、隠しダンジョンに向かうコトにした。
そして目的地に到着すると、俺は皆に振り返り。
「ここがダンジョンの入り口だ」
ちょっと芝居がかった仕草で言ってみた。
そして、ちょっと微妙な空気が漂った後。
「え~~と、ロックにぃ?」
モカが困ったような顏を、俺に向けた。
理由は分かっている。
今、俺の後ろにあるのは、雨傘神社という名の小さな神社。
どう見たってダンジョンがあるように見えないだろう。
でも説明するのも面倒だし。
「ま、とりあえずコレを」
俺は予め用意しておいた雨傘を全員に配った。
「雨傘? これで何を?」
首をひねるジュンに、俺は笑いかけると。
「まずは傘をさして、俺の後に付いて来てくれ」
そう言ってから鳥居を潜って雨傘神社の境内に足を踏み入れる。
次にやるべきコトは、神社の周りを回るコト。
でも適当に回っても意味がない。
右回りに1周、左回りに9周、右回りに9周、更に左回りに6周。
あるゲームの第1作が発売された年の数字だ。
そして、鳥居に向かって、こう叫ぶ。
「クリス!」
出来れば他のキャラの名前も出したかったんだけど。
何とか言い訳できる、この1言のみをキーワードとした。
著作権やらナンやら面倒なコトがあるからだ。
おっと、そんな愚痴を言ってる場合じゃなかった。
「さあ、次の手順でダンジョン突入だ。心の準備をしておいてくれ」
そう念を押すと、俺は鳥居を指さす。
「あの鳥居を潜った先は、説明しておいたダンジョンだ。突入していいか?」
更に念を押す俺に、全員が無言で頷く。
「よし。じゃあ一気に行くぞ」
俺は鳥居を潜ると振り返る。
うん、モカもジュンもカキクケコも遅れず付いてきたな。
じゃあ、ここはキメ台詞をいこうか。
「ようこそ、アライグマシティーに」
俺がそう言うと同時に、周囲も光景は一変し。
「あ~~~~~」
「う~~~~~」
「はぁぁぁぁぁぁ」
不気味なうめき声を上げながらゾンビが現れた。
そう。
ゾンビアクションサバイバルホラーをプレイする為の場所。
それが、この都市型ダンジョン=アライグマシティーだ。
俺がそうプログラムした。
2023 オオネ サクヤⒸ




