第九十一話 絶望のどん底に叩き落す為に
「今から小田を攻め滅ぼす! 時間が勝負だ! 直ぐに出撃できる者のみで構わないから付いて来い!」
この小六の言葉から、俺は天下統一に向かって動いた、思っていた。
だから俺は。
「小田って、どんなヤツ等なのかな? まさかノブナガじゃないよな。ちょっと視てみるか」
わりと呑気に千里眼を発動させたのだが。
「助けて!」
「お願い、子供だけは……」
「やめてくれぇぇぇ!」
「オレ達が何をしたっていうんだ!」
「お父さ――ん!」
『ぎゃぁああああ!』
俺の千里眼が捉えたのは、侍が村人を虐殺している現場だった。
って、ナニやってんの、コイツ等!?
戦国エリアなんだから、戦いで命を落とすのは仕方ない。
しかし普通に暮らしている民を殺戮する必要がどこにある!
なんて無茶をしやがるんだ!
「モカ! 人が虐殺されてる! 急いで助けるぞ!」
俺は、そう言うと同時に本気で走り出す。
「了解や!」
モカがそう答えた時にはもう、俺は虐殺現場に到着していた。
「小田の非道を許すな! 命に代えても民を救え!」
そう叫びながら村へと突進する小六に。
「手伝う」
俺は、それだけ言うと大通連村雨を構え、千里眼で状況を把握する。
村の人口300人ほどの村のようだ。
その村に侵入した敵兵143人が、人々を殺戮している。
いや、村に押し入って弱い者イジメを始めたばかりみたいだ。
斬られた者もいるが、まだ息がある。
甲賀の特効薬なら助けられる状態だ。
なら、さっさとコイツ等を倒して、急いで治療だ。
ちなみに千里眼が捉えた敵兵の体には、既に赤い線が走っている。
大通連村雨が飛ばす斬撃が切り裂く場所だ。
後は大通連村雨の能力=千斬自在で斬撃を飛ばすだけ。
と、ここまでに経過した時間は0・0002秒。
速さのステータスは、戦闘時の思考まで加速してくれるのだ。
とはいえ、時間を無駄に出来ない。
だから俺は直ぐに斬撃を放つ。
と同時に。
ザシュ! × 143
143の斬撃が、143人の敵兵を切り裂き。
ドサァ × 143
綺麗に体を断ち割られた敵兵が、一斉に地面に倒れたのだった。
それを見て、蜂須賀一家の騎兵達は目を丸くし。
「なにが起こったのだ!?」
「一瞬で小田の兵を殲滅した!?」
「何という戦闘力!」
「これを、あの者がしたのか?」
一斉に騒ぎだす。
そんな喧騒のなか。
「領民を救ってくれた事、礼を言う」
小六は俺に駆け寄ると、そう言って頭を下げた。
へえ、俺に何の躊躇いも無く、頭を下げるのか。
領民を大切にする、良い大名みたいだな。
でも今は、そんなコト言ってる場合じゃない。
「まだだ」
俺はそう言い残すと、斬られた村人達へと猛ダッシュ。
手あたり次第、甲賀の特効薬を振りかけまくる。
と同時に。
「は! ワ、ワシは一体……」
「うわぁああ、父ちゃぁぁん~~!」
「あれ、母さん? 怖い人は?」
「ミヨ! ミヨォォォォ!!」
「あ、あなた……」
「おまえぇぇぇぇ!」
瀕死の重傷だった者達が、完全回復。
家族が泣いて抱き着く光景がアチコチに溢れた。
よし、千里眼で確認したけど、死者はでていない。
回復が間に合って、本当に良かった。
と、俺がホッとしていると。
「ロックにぃ!」
モカが駆け付けてきた。
「ウチに手伝えるコトあったらナンでも言うて!」
村の惨状を見て、声を震わせるモカに、俺は微笑む。
「敵は全員始末したし、怪我をした人も全員、甲賀の特効薬で助けたから、何の心配も無いぞ」
「そら良かったわ。さすがロックにぃや」
ホウ、と息を吐いてからモカは、敵の屍に鋭い視線を向ける。
「せやけどコイツ等、何モンや? こないな酷いコトしくさって」
「小田の侵略部隊だ」
怒りを込めたモカのセリフに答えたのは小六だった。
「このように村を1つ1つ潰して領地を奪うのが、小田の常とう手段だ。相手に気付かれないように少しずつ、こっそりと。そして気付かれたら『ソイツ等は野盗だから自分らとは関係ない。文句があるなら、全面戦争だ!』と、戦国エリア有数の軍事力で脅して黙らせる」
「犯罪者の手口やん!」
「その通り。姑息で卑怯で傲慢で、どんな汚い手も平気で使う、最低最悪の害虫のような国が、今の小田なんだ」
ペッと唾を吐く小六に、俺は聞いてみる。
「その小田の当主は転生者なんだよな?」
ファイナルクエストでは、戦国エリアに暮らす人々を兵士にして戦う。
だからどんな職業でも武士としての性格を持たせてある。
農民武士とか狩人武士などが、そうだ。
そして武士には侍の気概をプログラムしている。
だから誇りを持ち、命を懸けて己の正義を貫く。
そんな民族性を持たせているから、ゲームでは民の数は国力の目安だった。
なので、この地に生まれた者が、そんなクズの筈がない。
「そうだ。戦国シミュレーションをやり込んだプレイヤーらしいが、天下を統一する為なら虐殺、略奪、破壊、焦土作戦などの戦争犯罪を平気で行う、いや好き好んで行う性格異常者だ」
やっぱり転生者か。
「地球でも、そんな国があったな。侵略戦争を仕掛けて、沢山の戦争犯罪を行っておきながら、自分達は正しいと言い張って、核で脅してくる国が」
「そう、あの侵略国家そのものだ」
吐き捨てる小六に、俺は少し考えると。
「こりゃあ、急いで軍用ライフルを手に入れなきゃならないな」
そう呟いた。
小田を率いる転生者は、明らかに常軌を逸脱している。
これなら遠くない未来、堕天使が派遣されるハズだ。
でも、それじゃあ俺の気が済まない。
ケチョンケチョンに打ちのめしてやりたい。
絶望の中で歯ぎしりをさせてやりたい。
だから軍用ライフルを、急いで手に入れよう。
小田を絶望のどん底に叩き落す為に。




