第七十九話 なんちゅう凄い眺めや!
富士山を目指す旅の途中で俺が見つけた「あるもの」を目にしたモカが。
「うわ、なんちゅう凄い眺めや! デッカイ岩の上に城が建っとる」
感嘆の声を上げた。
まあ、それも当然かもしれない。
「デッカイ岩」は高さ700メートル、直径300メートルもあるんだから。
そして岩の上は平地になっていて、そこに城が建っている。
サイズは熊本城の3倍くらい。
ヘタな街より沢山の人が暮らせる大きさだ。
ギリシャのメテオラを見ながら、これが日本だったら?
という発想から、俺がプログラムした。
その城が建っている巨岩を、7つの大岩が取り囲んでいる。
1番大きな岩は高さ600メートル、直径250メートルほど。
1番小さなもので、高さ500メートル、直径150メートルくらいだ。
その全ての頂上に築かれているのが丸太造りの砦。
造りは粗末だけど、太い丸太で建設してるから防御力は高い。
これらの砦は吊り橋によって繋がっているので行き来も簡単。
そして全ての砦から、城が建っている岩へと吊り橋が掛かっている。
砦に辿り着く手段は、岩の絶壁に刻まれた細い道のみ。
しかも1番大きな岩にしか道は刻まれてない。
これが何を意味するのか悟ったモカが、今度は称賛の声を上げる。
「凄いやん。もしこの城を大軍で攻めるモンがおったとして、ソイツ等は狭い道を1列に並んで頂上を目指すしかあらへん。その途中で、隣の岩の砦から攻撃されてお終いや。もし登り切っても、到達した順番に1人ずつ倒されてまう、ちゅうワケやな。まさに天然の要塞やで」
なかなか良く見てる。
でも、ココが凄いのは、それだけじゃない。
よし、教えてやるとするか。
「それだけじゃない。1番大きな岩以外、上れる道がないだろ。つまり城に行くには砦に上ってから、吊り橋を渡るにかない。だから砦が敵に落とされたら吊り橋を切断して切り離すコトによって敵の侵入を防ぐ造りになってるんだ」
ついでに言うと、俺がプログラムした通りなら。
この天然の要塞に陣取っているのは、野党のハズだ。
え? なんで「ハズ」なのかって?
だってこの世界じゃ200年以上が経過してるんだ。
それだけあれば、全く違うモノになってても不思議じゃない。
でも俺がプログラムした通りなら、これは大チャンス。
素通りするワケにはいかない。
おっと、その前に、モカに説明しておかないと。
というコトで、これからの計画をモカに伝えると。
「ええ!? ロックにぃ、そないなコトする気なん!?」
モカは目を白黒させながら大声を出した。
うん、やっぱり驚くよね。
この世界の裏側のコトだから。
そしてコレは、プログラムした俺だけが知ってるコトだから。
ま、そんなコトは置いといて。
「じゃあモカ。そういうコトだから、もしも俺の考え通りだったら、上手く話を合わせてくれよな」
俺はモカに念を押すと、巨岩の城を目指して歩き出す。
どうか俺がプログラムした通りのままでありますように。
という祈りが天に通じた……のかは分からないケド。
「なんだ、オメェら」
巨岩の城へと続く道に入り口を見張っていたのは、ガラの悪い男達だった。
うん、どう見ても犯罪者だ。
よしよし、どうやら俺がプログラムした通りらしいぞ。
なら芝居を始めるか。
俺は心の中で呟くと、男達に声をかける。
「なあ、ちょっと聞くケド、ここは冒険者ギルドの決まりに従わない者の集まりなんだろ? 俺も冒険者ギルドの決まりに縛られたくないんだ。だから俺達も仲間にしてもらえないかな」
ファイナルクエストでは、基本的に何をやってもいい。
ちょっとくらいなら、他のプレイヤーに迷惑をかけてもイイ。
でもやり過ぎはアウト。
あまりにも酷いコトをしていると、冒険者ギルドから堕天使が派遣される。
例えば世界征服を目指すのはイイけど、虐殺や略奪はダメ。
戦いで敵を殺すのはイイけど、快楽殺人はアウト、といった感じ。
つまり『神の前で恥じる事のない生き方』が冒険者ギルドの定める法。
常識的に考えて許されない事は禁じている、と言ってもイイ。
だから法律としては緩いけど、それでも治安は維持されている。
でも、もっと自由にプレイしたい、というプレイヤーが存在するのも事実。
ってか、ぶっちゃけ。
自分が好き勝手するのを邪魔する奴はブチ殺す、という犯罪者タイプ。
そんなプレイヤーが集まる場所が、この巨岩の城だ。
だから来る者は拒まず、去る者は追わず、という場所のハズなんだけど。
「あ? ここは子供が来る場所じゃないぞ」
「奴隷として売り払ってもイイが、さっさと立ち去るなら見逃してやろう」
「見張りが俺達じゃなかったら、身ぐるみ剥された上、殺されてたぞ」
男達は、そう言ってシッシッと手を振った。
確かに俺は17歳でモカは12歳。
子供と見くびられても仕方ないと、俺も思う。
でも、俺だって大人しく引き下がるワケにはいかない。
だから。
「あのな。俺は転生者だ。見た目で判断してるとマズいコトになるぞ」
俺はそう言って、目に殺意を込める。
いや、眼に殺意を込めるなんて器用なコト、俺には出来ない。
ただ男達を瞬殺できる様に、戦闘態勢を取っただけ。
しかし俺がその気になったら殺される、と察知したんだろう。
男達の顔色が青くなる。
そして、その中の1人が。
「わ、分かった。隊長を呼ぶから、少し待っててくれ」
そう言うと、狭い道を駆け上がっていった。
そして待つコト数分後。
「お前等か、厄介になりたいってヤツは」
身長2メートルを超える男がやってきて、俺をジロリと睨んだ。
ガッシリした顎が、男の顔を四角く見せている。
和風の服の上からでも分かるほど分厚い胸に、丸太のように太い腕。
背中に背負っているのは、刃渡り180センチはありそうな巨大な刀。
斬馬刀と呼ばれる類の刀だと思う。
「転生者だろうが、子供は子供。男のほうはともかく、そんな小さな女の子の居場所なんぞ、ここには無いぞ」
モカをちらりと見た大男に、俺は聞いてみる。
「アンタ鑑定の使えないのか?」
「使えん。俺は転生者じゃないんでな」
フンと鼻を鳴らす大男に、俺もフンと鼻を鳴らし返す。
「じゃあ鑑定できるヤツを連れてきて、モカを視て欲しい。そうしたら、どうか仲間になって下さいと頭を下げるコトになると思うけど」
「ほう、大きくでたな。なら連れてきてやるが……そこまで口にしたんだ。中途半端な実力だったら、死ぬまで下働きとして、こき使ってやるからな」
大男はそう言うと、狭い道を戻っていく。
そして数分後、大男は小柄な男を連れてやってきた。
って、マジで小さい。
大男の並ぶと、子供に見える。
ガマガエルを思わせる顔と体をしてる男で、歳は50歳くらいだろう。
そのカエル男はモカを鑑定すると。
「おい! この方達に失礼な事、していないだろうな!?」
顔色を変えて、大男を怒鳴りつけた。
2023 オオネ サクヤⒸ




