第七十六話 ウチかて融合練成したかったわ
第3ステージの中ボス、甲冑闘鬼を倒した。
さて、これからお楽しみの時間だ。
つまり極上のドロップアイテム、闘鬼の最上鎧を回収。
そして錬成で10倍に強化して闘鬼の究極鎧を手に入れた。
のだが、ここで予想外のコトが。
《「闘鬼の究極鎧」と、マジックバックに収納している「闘気の小手」とを融合練成する事が可能です》
アナウンスが、そう告げたのだ。
闘鬼の小手?
ああ、百鬼夜行の剛腕鬼がドロップした戦闘用の小手か。
って、そういやそうだった。
同じ系統の武器なら融合練成によって性能アップできる仕様だったっけ。
というワケで闘鬼の小手を10倍強化してから闘鬼の究極鎧と融合練成。
真・闘鬼の究極鎧
攻撃力 1億3千万
防御力 1億3千万
備考 瞬装の小手(特上)
という超チート鎧を、俺は手に入れたのだった。
つまり攻撃力は10倍強化極鬼包丁を遥かに超えている。
だから俺は10倍強化極鬼包丁をマジックバックに収納。
真・闘鬼の究極鎧を装備して、第4ステージに進むコトにした。
そして第4ステージに突入すると同時に幽鬼が出現。
さっそく俺は拳撃を叩き込む。
金剛夜叉明王撃を纏わせてない、只の拳を。
それを不思議に思ったのだろう。
「ロックにぃ、ナンで金剛夜叉明王撃を纏わせへんの?」
モカが俺に聞いてきた。
「金剛夜叉明王撃を纏った拳やったら1撃必殺やのに、ナンで普通の打撃、しかも手加減した打撃やの?」
「それは新しいスキルを手に入れる為さ。お、さっそく取得したぞ。モカ、俺を鑑定してみな」
「新しいスキル? あ、この『霊撃』ちゅうスキルかいな!」
正解。
霊的なモンスターに、攻撃力の数値通りのダメージを与えるスキルだ。
これで幽霊、死霊、怨霊なども倒せるようになった。
物理攻撃でも、魔法攻撃でも。
でも、これで終わりじゃない。
今度は鬼一口に手加減した打撃を放ち、上位霊撃を手に入れる。
上位霊撃とは文字通り、上位の霊体にもダメージを与えるスキル。
これで俺は、悪魔や堕天使や天使も倒せるようになったワケだ。
さて、必要なスキルも取得したコトだし、そろそろ大嶽丸と戦うか。
レベル 9999
経験値 9000万
HP 700万
基礎攻撃力 680万
基礎防御力 500万
装備
大通連(攻撃力1500万 特殊能力 千斬飛刃)
小通連(攻撃力 450万 特殊能力 鬼の護り刀)
顕妙連(攻撃力 200万 特殊能力 生命の泉)
という、ダンジョン「鬼が島」のラスボスと。
ちなみに、この戦いで最も厄介なのは。
1000の斬撃を飛ばす大刀=大通連。
自動的で持つ主を守る小刀=小通連。
毎秒1パーセントHPを回復する脇差=顕妙連。
この3振りの刀だ。
でも攻略法はモカがやった通り。
だから俺は第4ステージのラスボスの間=城の最上階に乗り込み。
「いけ」
さっそく犬・猿・雉を解き放つ。
そして犬が大通連、猿が小通連を押さえ、雉が顕妙連を持ち去った瞬間。
ヒュッ!
俺は大嶽丸との距離を瞬間転移でゼロにし。
ドン!
大嶽丸の首に手刀を叩き込んだ。
その攻撃力1億3千万の真・闘鬼の究極鎧による1撃は。
ボキン。
簡単に大嶽丸の首をへし折り。
そして俺は大通連、小通連、顕妙連を手に入れたのだった。
もちろん、直ぐに10倍強化だ。
と、そこで。
《10倍強化大通連と、マジックバックに収納されている妖刀村雨を融合練成する事が出来ます》
アナウンスが、また融合練成出来るコトを告げた。
今思い出したけど、どれも人が作り出した武器じゃない。
だから同じ系統の武器として、融合練成が可能となるんだ。
ちなみに人が作った武器を融合練成して性能を上げるコトは出来ない。
ま、そんなコトより今は融合練成だ。
まずは10倍強化大通連と10倍に強化した妖刀村雨とだな。
というワケで、この2つの融合練成すると。
大通連村雨
攻撃力 2億2千万
特殊能力 千斬自在
という、とんでもない攻撃力の武器になった。
けど、もっととんでもないのが、その特殊能力。
1000の飛刃を自由自在に操れるもの。
具体的に言うと、多数の敵に囲まれた場合。
急いで倒すべき相手は赤の点。
今すぐじゃないけど、倒さないといけない相手は黄色の点。
倒す必要のない相手は緑の点。
と脳内に表示される。
同時に攻撃マーカーが赤い点を優先して表示。
後は大通連村雨を振るえば、1000の斬撃が赤い点を切り捨ててくれる。
千斬飛刃は、1000の刃を飛ばすだけ。
単なる広範囲攻撃だ。
でも千斬自在は、その100の斬撃を思い通りに操れる能力。
斬る対象を精密にコントロールできるワケだ。
つまり敵味方が入り乱れている場面でも、敵だけを斬るコトが可能。
どんな戦いでも安心して使える武器に進化してくれた。
「じゃあ次は小通連を10倍強化だな」
俺がそう呟きながら実行すると。
《10倍に強化した小通連と、大威徳明王撃・不動明王撃・金剛夜叉明王撃の呪符の何れかと融合練成できます》
アナウンスが、そう告げた。
「そうか。じゃあ小通連と金剛夜叉明王撃の呪符を融合練成するか」
俺がつい、そう呟くと。
「金剛夜叉明王撃の呪符と小通連を融合練成やて!? ウチなそないなコト出来ひんかったのに、ナンでロックにぃダケ、そないなコトが出来るん!?」
それを聞きつけたモカが大騒ぎする。
「ヒドいやん、ウチかて融合練成したかったわ!」
頬を膨らませているモカに、俺は説明するコトにした。
「あのな。モカは大嶽丸に小通連を使わせてしまっただろ? 大嶽丸が使った時点で小通連は鬼の穢れを受けてしまったんだ。だから聖なる金剛夜叉明王撃の呪符と融合練成できなくなってしまった。でも俺は大嶽丸に小通連を使わせなかった。だから俺が手に入れた小通連は穢れてないから、金剛夜叉明王撃の呪符と融合練成できるんだ」
「せやったら、最初から教えてくれたらエエやん……」
まだむくれているモカの頬に、俺はそっと手を当てる。
「大丈夫だ。モカの職業「忍者」の為の特別なダンジョンがある。そこで手に入るスキルと武器にくらべたら、この程度のコトなんか誤差でしかない。安心しろ」
「そ、そうなん?」
目を輝かせるモカに、俺は頷く。
「俺を信じろ。モカは今より遥かに強くなれる」
「うん!」
よし、機嫌が直ったな。
じゃあ小通連と金剛夜叉明王撃の呪符と融合練成するか。
2023 オオネ サクヤⒸ