第七十三話 どないしたら勝てるんや?
「1000の斬撃を遠くに飛ばせる大刀=大通連に、自動戦闘機能を持つ小刀=小通連に、毎秒1パーセントHPを回復させる小刀=顕妙連やと? 1つでも超チート武器やのに、それが3つもあるって、なんやねん!」
モカが愚痴るが、それで問題が解決するワケじゃない。
「くそ、どないしたらエエねん? どないしたら勝てるんや? よおく考えるんやでモカ」
モカが何度も呟いてる。
そうだモカ、よく考えるんだ。
大嶽丸に勝つ為の準備は、もう出来てる。
後は、それを有効に使うだけだ。
早く気付け、モカ!
という俺の心の叫びが届いたのか。
「ひょっとして?」
モカは3つの指輪に視線を落とした。
甲冑闘鬼との戦いでは、危険な場面で犬と猿が姿を現した。
でも大嶽丸との戦いでは、全く反応していない。
その理由に気が付いたかな、モカ?
「そういうコトかいな!」
うん、どうやら理解したみたいだな。
と安心する俺の目の前で。
「大嶽丸、勝負や!」
モカは大声で叫ぶと、大嶽丸に突進した。
「む? 相打ち狙いの特攻か? それは愚策だぞ」
大嶽丸は、そう言うと大通連を構え。
「ふしゅぅうううううううううう!」
1000の飛刃を放つ為に闘気を高めた。
が、大通連を振るう直前。
「犬!」
モカが叫ぶと同時に指輪が犬に姿を変え、大通連の柄に噛み付いた。
「猿!」
次の叫びと共に猿が出現。
真剣白刃取りの要領で、小通連の刀身を手と足で挟み止める。
最後に。
「キジ!」
モカが叫ぶと、雉が出現。
物凄い速度で、大嶽丸を掠める様に飛び去った。
その嘴に、しっかりと顕妙連を咥えて。
そしてモカは。
「これでもう、回復できへんで!」
大嶽丸との距離を一気にゼロにすると。
「これでどうや!」
ドドドドドドドドドン!!!!!!!!!!
とんでもない数の拳撃を、大嶽丸に叩き込んだ。
このモカの攻撃を、真面に食らった大嶽丸は。
「!!」
声を発するコトすら出来ずに、砕け散った。
そのあまりの威力に。
「想像以上に凄いな」
俺も目を見張ってしまう。
闘鬼の究極鎧の攻撃力は9500万。
その威力の武器を思いっきり使うと、これほどの威力を発揮するのか。
確かにプログラムしたのは俺だ。
けど実際に、その威力を目にすると、やっぱり感動かも。
やっぱりゲームとリアルは違うんだと痛感した瞬間だった。
そんな俺に。
「ロックにぃ! スキル『限界突破Lv2』手に入れたで!」
モカは会心の笑みを見せた。
「これでステータスの上限が99999から999999に増えたさかい、ドンドンステータスを上げれるで!」
「そうか、よかったな。じゃあモカのステータス、鑑定していいか?」
「もちろんや。ちゅうかロックにぃなら、いつでも好きな時に、ウチを鑑定してエエんやで?」
「親しき中にも礼儀あり、だよ」
俺はそう言いながら、モカを鑑定してみる。
……ちゃんと計画通りのスキルを手に入れてるな、安心したぞ。
え? どんなスキルかって?
それは『鬼族の覇者』ってスキルだ。
ちなみに大嶽丸を倒して取得できるスキルは『鬼が島の覇者』
HP&ⅯP&攻撃力&防御力+70万
力・耐久力・魔力・魔耐性・知性・速さ・運+60万
という効果を持つ。
でもモカは(俺も)スキル『究極の忍者』を持っている。
これは鬼に由来するスキルなので、その1部が『鬼が島の覇者』と融合。
『鬼族の覇者』
HP&ⅯP&攻撃力&防御力+90万
力・耐久力・魔力・魔耐性・知性・速さ・運+80万
真・鬼王降し
(毎秒1000ⅯPを消費して
攻撃力・防御力・魔法攻撃・魔防力を+5000万)
というチートスキルに進化したワケだ。
そしてモカの強化系スキルも。
超HP強化 Lv4 (HP + 320000)
超ⅯP強化 Lv4 (ⅯP + 320000)
超力強化 Lv4 (力 + 320000)
超耐久力強化 Lv4 (耐久力 + 320000)
超魔力強化 Lv4 (魔力 + 320000)
超魔耐力強化 Lv4 (魔防力 + 320000)
超知性強化 Lv4 (知性 + 320000)
超速さ強化 Lv4 (速さ + 320000)
超斬撃強化 Lv4 (斬撃 + 320000)
超拳撃強化 Lv4 (拳撃 + 400000)
超蹴撃強化 Lv4 (蹴撃 + 1200000)
に進化&レベルアップしている。
しかも。
「ロックにぃ! 大嶽丸の武器、3本とも残っとるで! 超ラッキーや!」
大通連、小通連、顕妙連まで手に入ったたらしい。
まあ、大嶽丸との戦いで、3本の武器が手に入る確率は5万分の1。
運が6万あるモカなら、手に入れるコトが出来ると思ってた。
でも喜ぶ前に、やるコトがあるだろ、モカ。
というコトで、俺はモカに声をかける。
「じゃあ、モカ。さっそく10倍に強化して装備してみたらどうだ?」
俺が、そう言うと。
「うん、ロックにぃ、そうするわ」
モカは素直に大通連、小通連、顕妙連を10倍に強化した。
これにより大通連の攻撃力は1億5千万にアップ。
もうSS級どころじゃない超絶強力な武器なんだけど。
「なんか邪魔やな」
12歳のモカには大刀=大通連は使い難かったらしい。
「大通連はデカ過ぎるさかい、マジックバックに入れとくわ。ついでに小通連も」
モカは、さっさとマジックバックに収納してしまった。
まあ、闘鬼の究極鎧を装備したら、それでも問題ないか。
でも。
「せやけど顕妙連のHP自動回復は貴重やさかい、顕妙連だけ10倍強化して装備しとくわ」
モカは1本だけ残しておいた顕妙連を腰に差しておくコトにしたらしい。
うん、そうだね。
それで限りなくゲームオーバーを防げるから安心だ。
と、そこで。
「ロックにぃ! 10倍強化したら、顕妙連の特殊能力が変わったで!」
モカは目を丸くして、俺に大声で報告した。
って、そこまで驚くほどのコトじゃない。
俺は、そうなると分かってた。
顕妙連の、HPを毎秒1パーセント回復させる特殊能力『生命の泉』。
それが、HPとⅯPの両方が自動回復する『神秘の泉』に変化すると。
なにしろ俺が、そうプログラムしたんだから。
まあ、とにかく。
モカは見事、ダンジョン「鬼が島」をクリアした。
闘鬼の究極鎧と、大通連・小通連・顕妙連も手に入れて。
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