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   第七十二話  魔法が使えるワケがなかろう





 ダンジョン「鬼が島」のラスボス=大嶽丸たいごくまる

 そのステータスはSS級に相応しいモノだったが。


「ふん。1番強力な大通連とかいう刀でも、攻撃力は1500万かいな。防御力9500万の闘鬼の究極鎧を装備したウチの敵やないな」


 モカは大嶽丸を鑑定して、フンと鼻を鳴らした。

 どうやら、もう勝った気でいるらしい。


 まあ、それも仕方ないかも。

 なにしろ大嶽丸の最大攻撃力は基礎攻撃力に大通連の攻撃力を足したモノ。

 つまり2200万が、大嶽丸が放てる最高の攻撃力だ。

 一方モカは、というと装備した鎧の防御力だけでも9500万。

 大嶽丸の攻撃では、傷一つ追う事は無い。


 と思ってるんだろうが、モカ。それは大間違いだぞ。


「ほなら、ちゃっちゃと倒して、スキルと武具を手に入れさせてもらうで」


 自信満々のモカに、大嶽丸がニヤリと笑う。


「そうか。しかしコレを食らっても、同じ事を言えるかな?」


 そして大嶽丸は、大通連を振りかぶると。


「ふしゅぅうううううううううう!」


 陽炎が立ち昇る程、闘気を高め。


「チェイストッ!」


 岩すら砕きそうな気合と共に、大通連を一閃させた。

 でも、モカとの距離は50メートルほど。

 絶対に刃は届かない距離だったが。


「!」


 モカは顔色を変えると、両手をクロスさせて顔を守る。

 と同時に膝をついて姿勢を低くして、渾身の力で守りを固めた。

 それに送れる事、刹那。


 ザシュシュシュシュシュシュシュ!!!!!!!!!!!!


 とんでもない数の斬撃が、モカに降り注いだ。


「な、なにが起こったんや?」


 訳が分からない、という顔のモカに、今度は大嶽丸がフンと鼻を鳴らす。


「さっきワシを鑑定したくせに、そんな事も分からないのか? ワシの愛刀、大通連の特殊能力よ。一振りで1000の飛刃を発生させて首を飛ばす。これぞ100万の軍隊すら切り捨てた事すらある大通連の特殊能力=千斬飛刃よ」


 言い終わると、大嶽丸は。


「ふしゅぅうううううううううう!」


 再び闘気を極限まで高め。


「チェイストォ!!」


 1000の刃をモカに放つ。

 闘鬼の究極鎧に守られていない首なら斬り落とせる威力の斬撃だ。


「ち!」


 今回もモカは、両手で首と顔をカバーして1000の飛刃から身を守った。

 が、さっきと違い、モカはそのまま大嶽丸に突進する。


「その千斬飛刃ちゅうの、連発は出来へんやろ!? そこが千斬飛刃の欠点や!」


 モカは叫びながら、大嶽丸に拳を叩き込もうとするが。


「それなら普通に斬れば良いと思わんか?」


 大嶽丸はそう答えると、大通連を一閃。


「うわ!」


 急停止したモカの顔ギリギリを、大通連の切っ先が通り過ぎた。


「あ、危な~~。剣の腕も、超1流ちゅうコトかいな」

「SS級ダンジョンのラスボスだからな」


 大嶽丸はそう答えると、また斬撃を放つ。

 それをバックステップでモカが躱したトコロで。


「ふしゅぅうううううううううう!」


 大嶽丸は闘気を高めた。

 が、そこでモカが動く。


「それを待っとったんや!」


 バックステップが地面に接触すると同時に、地面を蹴って急接近。

 その勢いのまま、モカは大嶽丸に正拳突きを放った。

 が、その拳は。


 キィン!


 金属音と共に弾かれてしまい、大嶽丸に届かなかった。

 そこに。


「チェイストォ!」


 1000の斬撃が炸裂。


「負けへん!」


 モカは何とかガードするが。


「うわわわ!?」


 1000の斬撃が生み出す衝撃により、吹き飛ばされてしまった。

 しかし着地した時には、既に態勢を整えている。

 普通なら、さあ反撃だ、というタイミングなのだが、そこでモカは。 


「な、なんや?」


 大嶽丸の頭の上に浮いている刀に気付き、目を丸くした。

 そんなモカ様子に気を良くしたのか、大嶽丸が楽し気に語る。


「さきほど鑑定しただろう? 小通連の特殊能力、鬼の護り刀だ。分かり易く言うと、自動的に戦ってくれる刀だ。敵意のある者を切り伏せ、背後を守り、そしてワシの体を傷つける攻撃を自動的に防いでくれる」


 そう。さっきモカの正拳突きを弾いたのは、小通連だ。


「反則やろ!」


 思わず叫んだモカを、大嶽丸が笑う。


「その反則級のスキルと武器を手に入れる為に、鬼が島に来たのだろう? なら今更泣き言をいうのは止めるのだな」

「むぐ……」


 モカは言葉を失うが、直ぐに切り替える。


「ほんなら、その1000の斬撃と自動防御、正面から叩き潰したるわ!」


 モカは吠えると、スキル『瞬間転移』を発動。

 大嶽丸の背後に出現すると。


「てやっ!」


 大嶽丸を守ろうとする小通連を蹴り飛ばし。


「どうや!」


 大嶽丸の右わき腹に、渾身のフックを放った。

 その拳は。


 メキャッ!


 軋むような音と共に、大嶽丸の肋骨を砕き。


「がはっ!」


 大嶽丸は血を吐いて、地面に膝を付いた。

 そこを狙いすまして。


「トドメや!」


 モカは大嶽丸の首の骨を砕こうと、踏み込み蹴りを放った。


 踏み込み蹴りは、空手の技の中で最強レベルの破壊力を持つ。

 この1撃を受けたら、大嶽丸も終わりだったのだが。


 ヒュオン!


 蹴り飛ばした小通連が戻ってきて、モカに斬りかかる。


「ち! もっかいドッカに行ってこいや!」


 その小通連を、モカが再び蹴り飛ばすが、そこに。


 ビュオッ!


 大嶽丸の斬撃が襲い掛かってきた。


「ち! 肋骨砕かれとるクセに、元気がエエやないか」


 舌打ちするモカに、大嶽丸がニヤリと笑う。


「もう1度、ワシを鑑定してみろ。いいものが見れるぞ」

「なんやと?」


 モカは戦闘態勢のまま、鑑定を発動する。

 その結果は、先程と同じ。

 ステータスにも、装備にも変化はない。


「別にさっきとナンも変わっとらんで」


 油断なくそう告げるモカに、大嶽丸の笑みが深くなる。


「もっと良く見た方がいいぞ。特にHPとかな」

「HP?」


 モカは言われた通り、大嶽丸のHPに確認すると。


「な、なんや? HPがドンドン回復しとる!? 鬼のクセに、回復魔法も使えるんかいな?」


 そう呟いて、大嶽丸を睨んだ。

 しかし。


「鬼に魔法が使えるワケがなかろう。この顕妙連の特殊能力『生命の泉』の効果で1秒に1パーセントHPが回復するのだ!」


 大嶽丸はそう語ると、腰に差した刀をパァンと叩いたのだった。









2023 オオネ サクヤⒸ

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