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   第七十一話  アレがダンジョン「鬼が島」のラスボスかいな





 モカが大広間に出現する幽鬼を倒しながら、2階に続く階段に進む。

 そうだな、俺は後に付いていくだけにするか。

 手助けするのは簡単だが、今はレベルを上げたくない。

 だから可能な限り、敵はモカに倒してもらおう。

 モカのレベル上げにもなるし。


 そして階段を上った先の2階は、長い廊下が伸びていた。

 この廊下は2階を1周するようになっていて、その廊下を進んでいくと。


 ふ。


 突然壁や床から幽鬼が湧き出て、襲い掛かってくる、という仕掛けだ。

 1階との違いは床、つまり下からの攻撃にも気を付けないといけないコト。

 厄介さが1段アップしているワケだ。

 でも。


「千里眼と存在把握を同時発動しとったら、けっこう楽に倒せるんやな」


 モカが言うように、スキル『究極の忍者』を持つ者なら、攻略は簡単だ。

 出現する前には、必ず空間に揺らぎが生じる。

 その揺らぎを千里眼で察知し、存在把握で出現のタイミングを見計らう。

 後は、幽鬼がこの世界に進入してきた瞬間に攻撃。

 それだけで面白いほど簡単に幽鬼を倒せる。


 こうして幽鬼を倒しながら2階を一周すると、その先には、また階段が。

 その階段を上がると、そこはまた大広間だ。

 でも1階より、ちょっと狭い。

 ま、城は上の階ほど小さいのだから当然だけど。

 この広間を見回しながら、モカが呟く。


「また敵の姿は見えへんな。でも、またいきなり襲い掛かってくるんやろな。ま、返り討ちにしたるさかい、どっからでも掛かってこんかい」


 その言葉に答えたワケじゃないだろうが。


 グワッ!


 突然モカの目の前に、大きな口が出現した。

 軽自動車を丸呑み出来るサイズで、鋭く長い牙が生えている。

 その口が。


 バクンッ!


 モカに噛み付くが、モカは何とか躱す。

 しかし、モカが反撃する前に。


 フッ。


 巨大な口は消え去ってしまった。


「な、なんや今の!?」


 モカが、キョロキョロと周囲を見回している。

 こりゃあ鑑定する前に見失ったな。

 仕方ない、教えてやるか。


「モカ。今のは鬼一口って妖怪だ。突然現れて、人を一口で食べる鬼だから、鬼一口っていうんだ。口以外は誰も見たコトがないらしいから、本当に鬼かは分からないんだけどな。しかも空間が揺らいでから出現するのが幽鬼より速いから、空間の揺らぎに集中していないと、噛み付き攻撃を受けてしまうぞ」


 その上、モカが闘鬼の究極鎧を装備してたからだろう。

 さっきの攻撃は、鎧で覆われていないモカの首を狙ったものだった。


「いきなり出てきて、一口かいな。えげつな~~」


 顔を歪めるモカの真上に。


 グワッ!


 また何の前触れもなく鬼の口が出現。

 モカの頭を食い千切ろうとするが。


「同じ手は食らわへんで!」


 モカは身を躱すと同時に。


「や!」


 ドン!!


 鬼一口に金剛夜叉明王撃を叩き込み、その巨大な口を叩き潰した。

 そしてグチャグチャになって床に落下した口は。


 ブクブクブクブク。


 泡となって消えて行き、後には何も残らなかった。


「ふう、めんどくさい敵やな。空間が揺らいだと思ったら瞬間には、もう出てきとるさかい、鑑定するヒマもなかったわ」


 言い終わる前に、2匹目の鬼一口が出現。

 1匹目と同じくモカの首を狙うが。


「無駄や! 集中力は切れとらんで!」


 モカは鬼一口の牙を左手で粉砕しながら、右手で金剛夜叉明王撃を放った。

 と同時に鑑定も発動させたらしい。


「へえ、結構ステータス高いんやな。ま、幽鬼より厄介なんやから、幽鬼よりステータス高くて当然やけど」


 そう呟くと、再び前進。

 また現れた鬼一口を、再び金剛夜叉明王撃で粉砕した。


 ちなみに鬼一口のステータスは。


 レベル     4000

 経験値    1800万

 HP       28万

 攻撃力      35万

 防御力       5万

 備考   霊体  物理&魔法攻撃99・999%無効


 となっている。


 金剛夜叉明王撃がなかったら、S級冒険者でも倒せない強敵だ。

 逆に言えば、金剛夜叉明王撃を操るモカの敵じゃない。

 3階も、モカは苦戦するコトなくクリア。

 4階へと続く階段に足をかけたのだった。

 そして辿り着いた城の4階は、大きな扉で閉ざされていた。


「え~~と、普通にブチ破ったらエエんかいな?」


 拳を構えるモカに、俺は呆れた声を上げる。


「あのなモカ。建物タイプのダンジョンで大扉っていったらラスボスの間に決まってるだろ? この先には強敵が待ち構えていて、中に入ったら戦いが終わるまで扉は開かない。だから準備を整える為のセーフティーエリアが、ラスボスの間の前には用意されているんだ」

「エラい親切なんやな。もしウチがラスボスやったら、疲れとるトコ狙って不意打ちしたるんやけど」


 確かにその通り。

 でもモカ、それは「お約束」というヤツなんだ。

 深く追求するんじゃない。


「ま、エエわ。この方が助かるんは確かなんやし」


 モカは何度か深呼吸をして、肩の力を抜くと。


「よっしゃ、いくで!」


 ガン! と拳を合わせてから、ラスボスの間の扉を開け放った。


「ここがラスボスの間かいな」


 モカが周囲を見回す。

 3階よりも一回り小さいが、それでも100メートル四方はある広間だ。

 天井までは50メートルくらい。

 思いっきり戦うのに十分な広さと言えよう。


 そして、広間の中央に立っているのは、当然ラスボス。

 侍姿の鬼だ。

 身長が2メートルほど。

 甲冑闘鬼よりも、更に小さい。

 でも、一目で分かる。

 この鬼、甲冑闘気より遥かに強い、と。


 まあ、ラスボスなんだから当たり前なんだけど。

 腰には1振りの大刀と2本の脇差、合計3振りの刀を差している。

 そんなラスボスに。


「ふうん。アレがダンジョン「鬼が島」のラスボスかいな」


 モカが鑑定を発動させる。


 大嶽丸 

 レベル      9999

 経験値     9000万

 HP       700万

 基礎攻撃力    680万

 基礎防御力    500万

 装備       

 大通連(攻撃力1500万  特殊能力 千斬飛刃)

 小通連(攻撃力 450万  特殊能力 鬼の護り刀)

 顕妙連(攻撃力 200万  特殊能力 生命の泉)


 ラスボスだけあって強敵だぞ、モカ。









2023 オオネ サクヤⒸ

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