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   第七十話  でっかい城やなぁ





 第3ステージの中ボス=甲冑闘鬼を倒し、洞窟を進んでいくと。急に開けた場所に出た。

 広さは東京ドームがそのまま入るくらい。

 その広場の先に見えるのは。


「うわぁ、でっかい城やなぁ」


 モカが言ったように、物凄く巨大な城だ。

 城の土台である石垣は、縦横300メートル、高さ60メートル。

 普通の人間の軍では、この石垣を攻略するコトすら不可能だろう。


 そして天守の高さは400メートルで、内部は複雑な迷路となっている。

 攻め入った敵を惑わし、罠に誘導し、確実に殲滅する為の造りだ。

 まさに日本の城らしい城といえよう。


 というか、日本に存在した、どんな城より強固な城だ。

 俺がそうプログラムした。

 攻略法も知り尽くしている、とも言う。


 だけど、今回のダンジョントライはモカの腕試し。

 極力、モカに自力でクリアしてもらおう。


「モカ。この城がダンジョン『鬼が島』の最終ステージ=第4ステージだ。今まで以上に厄介な場所だぞ」

「うん、分かっとるでロックにぃ。千里眼を常時発動しながら進むわ」


 モカはそう言うと、城に向かって足を踏み出した。

 その瞬間。


 ごひゅひゅひゅひゅひゅひゅひゅう!


 50を超える岩が物凄い速さでモカに撃ち込まれた。


 弓矢や鉄砲で攻撃する為に、城の壁面に空けられた穴を佐間さまという。

 その佐間から、矢や鉄砲玉の代わりに岩が放たれている。

 A級冒険者程度なら即死する威力の攻撃だが。


「ふん、つまらん攻撃や」


 闘鬼の究極鎧を装備したモカにダメージを与えられるワケがない。

 モカは途切れる事無く撃ち込まれる岩を、拳で砕きながら歩を進めてる。

 そして石垣に造られた正面門の前に辿り着くと。


「邪魔や!」


 瞬装の小手を一閃。

 分厚い鉄の門扉を、跡形もなく吹き飛ばした。

 と同時に、岩の投擲がピタリと止まる。


「モカに進入されたから、城内で迎撃するつもりかな」


 俺は呟きながら城に向かうコトにする。

 いきなり岩が飛んできても対処できるように気を付けながら進むが。

 結局、岩が飛んでくるコトはなかった。


 やっぱり城内での戦いに、全力を注ぎこむツモリなんだろうな。

 というワケでモカが砕いた正面門から中に入ると。


「なんや? えろう狭い階段やな。ウチとロックにぃが並んだら、誰も通れへんようになってまうで」


 モカが言ったように、狭い階段が上の階へと続いていた。


「鬼の城やのに、何でこないに狭いんやろ? こないに狭かったら、鬼かて困るやろうに」


 モカが首を傾げてるけど、ちょっと考えたら分かるコト。

 あ、でもモカは日本の城を知らないから無理ないかも。

 よし、ここは教えておこう。


「モカ。階段がこんなに狭いのは、1度に少人数しか攻め上がれないようにしているんだ。これなら大軍が攻め込んできても、数人ずつした階段を上がってこないだろ? そこを圧倒的な力で殲滅する戦法さ。実際、その階段の先で、敵が万全の態勢で待ち構えているハズだ」

「うわ、厄介やな。せやけど、それなら金剛夜叉明王撃を先に叩き込んだらエエだけや」


 呪符を取り出そうとするモカを、俺は慌てて止める。


「ちょっと待て! そんなモン使ったら、城が崩れ落ちるぞ。ここに来たのは強力なスキルや武器や防具を手に入れる為だ。城が崩れたらナンの為に鬼が島に来たのか分からなくなるぞ」

「あ、せやった。ロックにぃ、どないしよ?」


 おいモカ、いきなり考えるコトを放棄するな。


「その為の千里眼だろ」

「あ、忘れとった」


 モカは俺が言った通り、千里眼を発動させると。


「へ? なんもおらへんで」


 拍子抜けした声を上げた。

 そして階段を登りきると、キョロキョロと辺りを見回す。


「広い部屋やな。ここで大軍で待ち構えられとったら厄介やったんやろうけど、1匹も鬼がおらへん。どないなっとんや?」


 まさにモカの言う通り。

 階段を上った先は、300メートル四方もある大広間のど真ん中。

 日本の城なら、登って来た敵に四方八方から矢や鉄砲を射かけていた筈だ。

 上の階に上る階段が、大広間の奥に見えている。


 が、この場所から階段までは150メートルほど。

 普通の冒険者では、辿り着く前に矢や鉄砲で撃ち倒されてしまう距離だ。

 まあ、飛んでくるのは、さっきみたいに岩だろうけど。

 とにかくこの場所は、侵入者を殲滅するのに格好の場所だ。

 なのに、大広間はシンと静まり返っていて、物音ひとつしない。


「せっかく有利な条件で戦える状況やのに、どないしたんやろ? ま、ナンもおらんのなら、それに越したコト無いわ。さっさと先に進ませて貰うさかい」


 モカは気楽な声を上げると、大広間の奥に見える階段に向かう。

 が、そこで。


 ぽう。


 急に目の前に現れた鬼が、モカに爪を振るってきた。


「うわ!」


 モカは思わず声を上げるが、シッカリと爪は躱している。

 けど敵は目を狙っていた。

 闘鬼の究極鎧に守られてない場所をシッカリ狙ってくるとは。

 これはかなり危険は敵だな。

 いつでも戦いに割り込めるように、準備しておくか。

 と身構える俺の前で。


「どっから現れよるんや! ビックリするやろ!」


 モカが敵を怒鳴りつけていた。


 でも、それは演技。

 今度はシッカリと鑑定を発動させている。

 ならモカにも視えたハズだ。


 幽鬼

 レベル     3000 

 経験値    1000万

 HP        1万

 基礎攻撃力     2万

 防御力       2万

 備考   霊体(物理&魔法攻撃99・999%無効)

 

 というステータスが。


「ってナンやねん、攻撃99・999%無効って! せっかく敵のHP低いのにダメージ通らんのやったら意味ないやん!」


 幽鬼は隠形鬼と違って目に見えないんじゃない。

 でも霊的空間に身を隠し、突然現世に姿を現して襲い掛かってくる。


 ついでに言うと、体が半透明なのは霊体だから。

 なので物理攻撃も魔法攻撃もすり抜けてしまう。

 結果、ほとんどダメージを与えるコトは出来ない。

 さあモカ、どう戦う?


 と俺が見守っていると。


「物理攻撃も魔法攻撃もアカンのやったら、もうウチにはコレしかあらへん。金剛夜叉明王撃!」


 モカは覚悟を決めた声で叫ぶと、呪符を握った拳で幽鬼を殴りつけた。


 またソレかい!

 と、ツッコミたいトコだけど、これはこれで正解。

 物理も魔法も効かないなら神の力で攻撃すればイイ。

 そして金剛夜叉明王撃を纏ったモカの拳は。


 ぼふ。


 意外なほど軽い音と共に、勇気を消滅させた。


「ナンや。これが効かんかったら、どないしよと思ったかど、思ったより遥かに簡単に倒せてもうたで」


 モカはそう言うと。


 ぽふ、ぽふ、ぽふ、ぽふ。


 次々と現れる幽鬼を、金剛夜叉明王撃をまとった拳で消し去っていった。










2023 オオネ サクヤⒸ

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