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   第六十九話  『瞬装の小手』に変化しとる!





 犬と猿のコンビネーションにより、地面に手をついた甲冑闘鬼に。


「ここや!」


 モカは渾身の1撃を放つ。


 同じ手は、もう2度と通用しないだろう。

 なら、ここで決める!

 そう心に決めたモカが狙うのは、甲冑闘鬼の首筋。

 全ての生物の急所である、小脳が攻撃目標だ。

 しかし。


「サセヌ!」


 甲冑闘鬼はヤマセミロングの切っ先が届く前に顔を上げた。

 それにより首筋は兜に隠されてしまい。


 ギャリン!


 ヤマセミロングの切っ先は、火花を上げながら兜の表面を滑っただけ。

 甲冑闘鬼には何のダメージも与えられなかった。


 でも、まだ状況はモカに有利だ。

 今の甲冑闘鬼は、四つん這いになって顔だけ上げた状態。

 つまり無防備に顎を突き出した姿勢になっている。

 その顎に、モカが真横から。


「やっ!」


 思いっきり膝蹴りを叩き込んだ。

 甲冑闘鬼の頭は兜で守られている。

 そして顔面も鉄の面当てで覆われている。

 だから真横からのモカの膝蹴りは、完全に死角から放たれたコトになり。


 ガコン!!


 モカの膝蹴りは甲冑闘鬼の顎に、まともにヒットした。


 ところで前にも言ったが、人型の妖怪の体は、人間と同じ構造になっている。

 だから顎を真横から強打された反応も、人間と同じ。

 すなわち。


「ウガ?」


 モカの膝蹴りの衝撃は甲冑闘鬼の脳を揺らし、まともに動けなくした。

 俗にいう「足にきた」状態。

 意識はシッカリしているのに、足が思うように動かない状態だ。

 フルコンタクト空手を学んだ人やボクサーなら、体験した人がいるかも。


 しかし甲冑闘鬼にとって、脳を揺らされるなんて初めての体験。


「コ、コレハ!? ドウシタンダ!? ナニガオコッタンダ!?」


 自分の足が思い通りに動かない、という事態に狼狽えている。

 ま、それも当然か。

 甲冑闘鬼の防御力は1220万もあるんだ。

 脳を揺らされたコトなんか1度もないんだろうな。


 しかし、よほど衝撃を受けたんだろうな。

 甲冑闘鬼のヤツ、モカに背中を向けたまま茫然としてる。

 それじゃ急所の首筋が、モカに丸見えだぞ。

 もちろん、そんなチャンスを見逃す冒険者などいない。


「往生せぇ!」


 モカが甲冑闘鬼の首筋に、渾身の刺突を放った。

 そのヤマセミロングの切っ先は、今度こそ甲冑闘鬼の小脳を貫き。


「ゴァアアア!!!」


 甲冑闘鬼の断末魔の声が響き渡った。

 こうして甲冑闘鬼が2度と動かなくなったトコで。


「ロックにぃ! ウチ、やったで!」


 モカは俺に、会心の笑顔を向けたのだった。


 と同時に、ガコンと音を立てて壁に穴が開いた。

 第3ステージの出口だ。

 よし、じゃあ第4ステージに進むか。


 おっと、その前に。

 頑張ったな、モカ。よくやったぞ。

 それに幸運なコトが起こってる。

 甲冑闘鬼が装備していた甲冑が、そのまま残っているのだ。

 防御力950万、攻撃力950万というチート武具『闘鬼の最上鎧』が。

 もちろんモカも『闘鬼の最上鎧』が、どれほどチートか分かっているから。


「やったで! これで一気に防御力、超絶アップや!」


 文字通り、飛び跳ねながら喜んでいる。


 ふうん、ホントに嬉しい時って、思わず飛び跳ねるんだな。

 こんなトコは、まだ12歳の女の子。

 可愛らしくて微笑ましいや。

 

 ちなみに甲冑闘鬼との戦いで、闘鬼の最上鎧が手に入る確立は1万分の1。

 だけど、モカの運は6万あるからゲットできたんだろうな。

 というか、手に入ると分かってたから「鬼が島」にトライしたんだけどね。


 まあ、とにかく凄い防具が手に入ったんだ。

 直ぐに装備すべきかもしれないが、その前にやるコトがある。


「あのな、モカ。直ぐに装備したいのは分かるけど、その前に錬製で10倍に強化してから装備した方がイイぞ」

「あ、せやった」


 モカは装備しかけていた闘鬼の最上鎧を、1度地面に置くと。


「10倍強化!」


 気合の入った声を上げて、錬成を発動した。

 これで鎧は更にチート化。

 防御力9500万、攻撃力9500万という超絶武具となった。

 でもこの鎧が優れているのは、それだけじゃない。


「じゃあモカ。強化が終わったら、もう1回鑑定してみるんだ」


 俺のアドバイスに、モカは素直に鑑定し。


「あ、ロックにぃ! 『闘鬼の最上鎧』が『闘鬼の究極鎧』に変わったで!」


 嬉しそうな声を上げた。

 でもモカ、俺が言いたかったのはソコじゃないんだよ。


「モカ、鑑定で表示されたコトを、全部確認してみるんだ」

「ほえ? ゼンブ?」


 間抜けな声を漏らしながらも、モカは鑑定結果を確認すると。


「あ! 闘鬼の究極鎧の小手の部分が『瞬装の小手』に変化しとる!」


 今度は大声を上げた。


『瞬装の小手』とは「瞬装」の一言で鎧が体を覆ってくれる優れモノ。

 つまり片手に舜装の小手を装備してたら。

 声を上げるだけで、一瞬で闘鬼の究極鎧を装着できるワケだ。


 なにしろ鎧というモノは、着心地が良いものじゃない。

 冒険中なら仕方ないが、1日中装備するのは苦痛だ。

 まあ、普段はマジックバックに収納しておく、という手もあるだろう。

 でもそれじゃあ、取り出してから装備するのに時間がかかる。

 不意打ちを受けた場合、それでは間に合わない。


 しかし片手に舜装の小手さえ装備しておけば、一言で鎧装備完了。

 それに片手に小手を付けてる程度なら、それほど邪魔じゃないし。

 という俺の説明を聞いて。


「ほんならさっそく」


 モカは瞬装の小手を右手に装備すると。


「瞬装!」


 大声で叫んだ。


 いや、そんなに大声出さなくてもイイんだけど。

 なんかコッチが恥ずかしくなってくるぞ。

 ま、いっか。


「あ! ホンマに便利や!」


 モカが嬉しそうにしてるから。

 それに瞬装の小手の防御力と攻撃力も9500万。

 小手で防御して、そのまま殴るダケでも殆どの敵を撃破できる。

 不意打ちにも十分対応できる、優秀な武具だ。

 というワケで、一気に防御力・攻撃力をアップさせたモカと共に。


「さて、第4ステージに進むか」


 俺は壁に空いた穴に向かって歩き始めたのだった。








2023 オオネ サクヤⒸ

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