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   第六十七話  あ、ナンか体が痺れてとる





 毒にも色々ある。

 死に至るモノ、麻痺するモノ、精神異常を引き起こすモノなど様々だ。

 その、ありとあらゆる毒が待ち構えている場所。

 それが「鬼が島」ダンジョンの第3ステージ。

 つまり俺とモカがいる、この場所だ。


 そしてステータスの高さでは毒を防げない。

 もちろんHPや耐久力の数値が高ければ、即死するコトはめったにない。

 しかしジワジワと毒に侵され、最後には死に至る。

 だから鬼が島の第3ステージは、物凄く厄介な場所と言えよう。


 でも、それを逆に利用する。

 それも今回のダンジョントライの目的だ。


「ロックにぃ。この先に毒ガス溜まりがあるんやけど、息を止めて一気に駆け抜けたらあかんかな?」

「モカがそう思うのならトライしてみたらイイ。あ、でも念の為、甲賀の特効薬を出しておいた方がイイだろうな。何時でも飲めるように」

「了解や!」


 というワケで、俺とモカは毒ガス溜まりを駆け抜けたが。


「あ、ナンか体が痺れてとる」



 モカはそう言うと、甲賀の特効薬を1口飲んだ。


「よっしゃ、完全回復や。でも、何で痺れたんやろ? 息は止めとったのに」


 やっぱこの世界で生まれた者は、科学の知識が乏しいな。

 ここは教えとかないと。


「皮膚から吸収されたんだよ。吸い込まなくても、触れただけで毒に侵される場合もあるんだ」

「皮膚から? 毒って触れたダケでアウトなん? それやったら、息を止めても無駄やん!」

「無駄とまでは言わないけど、完璧でもないかな」

「ほなら何でロックにぃは、ウチが息を止めて駆け抜ける、言うた時に反対せぇへんかったん?」

「それは運が良かったら……」


 俺が、そこまで言った時。


《スキル『無呼吸』を取得しました》


 そうアナウンスが告げ、俺は『無呼吸』のスキルを手に入れた。

 よし、これで説明が楽になったぞ。


「モカ、俺を鑑定してみるんだ。『無呼吸』ってスキルがあるだろ?」

「あ、ホンマや」

「息を止めて走ったから、取得できたスキルだ。この『無呼吸』のスキルを取得すると、息が出来なくても平気になるんだ」

「それ便利やな。せやけどロックにぃは、スキル取得が速うてエエな。ウチも早くスキル手に入れたいわ」


 モカが唇を尖らせている。

 ま、まだまだ子供ってコトか。

 って、12歳は本当に子供か。

 ここはフォローしておくか。


「そこは職業特性ってヤツだから、仕方ないさ。でも、このダンジョンはSS級だからな。レベルの差が大きいほどスキル取得は早くなるから、モカもそのうち取得できると思うぞ」

「よっしゃ! ガンバルで!」


 お、一気にやる気を出したな。

 なら、この勢いで先に進むとしよう。


「よし、じゃあガンガンいくぞ」

「了解や!」


 というワケで、第3ステージを進んでいく。

 麻痺したり、痺れたり、嘔吐したり、死毒に侵されながら。

 もちろん、そのたびに甲賀の特効薬で回復して。

 それを何回か繰り返したところ。


《スキル『状態異常完全無効』を取得しました》


 アナウンスが、そう告げた。

 って、想像以上の成果だ。

 麻痺無効とか、毒無効なら手に入ると思っていた。

 でもよく考えたら、毒によって発生する麻痺とか嘔吐とかは状態異常だ。

 なので、状態異常を無効化するスキルを得たんだろう。


 でも、これは俺の職業『里山の民』だからこそ。

 職業が『忍者』のモカは、まだ取得できてないみたいだ。

 心を鬼にして、もっと毒を食らって貰うとするか


「あ! 毒グモに噛まれてもた!」

「げぇえええ! 苦しい……」

「アカン、また痺れてもた!」

「あかん、なんや頭がクラクラする……」

「おえええ。気持ち悪ぅ……」

「あ、右足が動かへん!」


 などと毒を食らいまくった結果。


「ロックにぃ! スキル『毒無効』を手に入れたで!」


 なんとかモカも、新しいスキルを手に入れたようだ。

 これで毒による麻痺や嘔吐や頭痛などは無効に出来るだろう。

 でも毒由来じゃない状態異常には役に立たない。


 出来れば俺みたいに『状態異常完全無効』を手に入れて欲しかった。

 けど、これはどうしようもない。

 職業特性は絶対に変えられないのだから。

 とはいえ『毒無効』は、かなり優秀なスキルだ。


「よかったな、モカ。第3ステージで手に入れたかったスキルだぞ」

「ホンマ? やったで!」


 素直に喜ぶモカは、最高に可愛いな。

 よし、もっと良いスキルを取得させて、もっと喜ばせてやろう。

『鬼が島』のボスは良いモノをドロップするんだ。


 というワケで、洞窟を進んだ先に見えてきたドーム状の空間。

 ココが第3ステージの中ボスが待ち構えている場所だ。


「あれが第3ステージのボスなん?」


 モカがドーム状の空間の手前で足を止めた。

 ドームの大きさは直径50メートル、高さは25メートルほど。


 その中心に立っているのは、身長3メートルほどの鬼だ。

 西洋甲冑の良いトコを取り入れた和風の鎧=南蛮胴具足を身に付けている。

 今まで倒してきた鬼と比べると、やや小ぶりかも。

 でも強者だけが持つ空気を身に纏っている。

 一目で青行灯より遥かに強いと分かるレベルの鬼だ。


「まずは鑑定やな」


 呟くモカと一緒に、俺も中ボスを鑑定してみる。

 その結果は。


 甲冑闘鬼

 レベル      7000

 経験値     7100万

 HP       400万

 基礎攻撃力    320万

 基礎防御力    270万

 装備       闘鬼の最上鎧(防御力950万&攻撃力950万)。

 実質攻撃力   1270万

 実質防御力   1220万

 

 というモノだった。


「うわぁ。マジで帰りたくなってきたわ」


 モカがぼやいてる。

 ま、それも当然かもしれない。

 普通だったら瞬殺されるレベルの敵だ。

 でも。


「せやけど、苦労して犬・猿・雉の指輪を手に入れたんは、こんな場面で使う為なんよな」


 モカは、そう呟くと。


「犬・猿・雉! 役に立ってみせェ! 期待しとるでェ!」


 気合と共に、甲冑闘鬼に向かって走り出した。









2023 オオネ サクヤⒸ

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