第六十話 うわ、キショ!
「うわっ!?」
土蜘蛛に奇襲されてしまったモカは、ビックリしながらも。
「強手裏剣!」
20を超える手裏剣を土蜘蛛に投擲した。
「ビィッ!」
その思いもしない迎撃を食らって、土蜘蛛が突進を断念する。
咄嗟の反撃としては、まあまあかな。
ところで今の強手裏剣による攻撃だけど。
マジックバッグに手を突っ込んで取り出してたら、絶対に間に合わなかった。
瞬時にマジックバッグの中の物を取り出せる「取り出しの指輪」のお陰だ。
伊賀のイベントで手に入れておいてよかったな、モカ。
そしてラッキーだった点が、もう1つ。
強手裏剣が当たったトコで、血が滲んでいる場所がある。
腹の裏側の部分、そして胸の裏側の部分だ。
というコトで、もう分かってるよな、モカ。
土蜘蛛の防御力が高いのは背中側だけ。
下になっている部分の防御力は低いぞ。
攻撃するなら、そこだ。
と思ったら。
「10倍強化金剛夜叉明王撃!」
いきなりモカが、最大火力の遠距離攻撃を放つ。
その雷の矢は土蜘蛛の体を突き破り。
バリバリバリン!
稲妻数十発分のエネルギーを放出。
「ギャピィ!」
土蜘蛛を黒焦げにしたのだった。
「はぁ~~、驚かせるんやないで! 寿命が縮んでもうたやないか!」
モカがそう言いながら、胸を撫で下ろしてる。
う~~ん、何の考えも無い力押しの攻撃だったな。
結果オーライだけど、もしも強敵と戦う時も同じだったらマズいな。
もっと頭を使った戦い方を教え込まないとダメだな。
やっぱ5歳児にしては強力過ぎるステータスを得た所為なんだろな。
なにか予想外の事が起きた時、金剛夜叉明王撃を撃つのがクセになってる。
格下の場合、それで十分だけど格上の敵との戦いじゃ最適解じゃない。
う~~ん、どうしよう?
もう少し見守るべきか、それとも……。
と俺が迷っていると。
バクン。バクン。バクン。バクン。
更に字面に4か所の穴が開いた。
いや、いきなり穴が開いたワケじゃない。
土でカモフラージュした蓋を跳ね上げたんだ。
え? どっちでも同じだろ、って?
いや、大きな違いがある。
それは。
「10倍強化金剛夜叉明王撃!」
モカの放つ攻撃を。
バリィン!
土でカモフラージュした蓋でなら、受け止められるからだ。
蓋の1部は地面に接してるから、雷のエネルギーは地面へと流れてしまう。
避雷針と同じだ。
そして金剛夜叉明王撃の直撃を間逃れた土蜘蛛は。
シュパァ!
腹から凄い数の糸を射出した。
「うわ、キショ!」
モカは嫌な顔をしながらも、その糸の奔流を避けるが。
シュパァア!
シュパァア!
今度は2匹を土蜘蛛がタイミングをズラして糸を噴出した。
凄く巧妙な作戦だったが。
「まだや!」
モカは5歳から鍛え上げた身体能力を駆使して何とか躱す。
しかし、それも計算されていたらしい。
シュパッ!
モカの背後に忍び寄った土蜘蛛が驚くほどの量の糸を射出。
しかも、射出速度も、今までとは桁違いに速い。
どうやら今までの3匹の攻撃は全て陽動。
4匹目の土蜘蛛が本命だったらしい。
この連携によりモカは。
「しもた!」
今度こそ糸に絡め捕られてしまった。
「クソったれが! こないな手に引っ掛かるやなんて」
これこれモカ、汚い言葉を使うんじゃありません。
これも後で注意しとかないとな。
と、それどころじゃないかも。
全身に糸が絡まったモカに土蜘蛛が近く。
「ウ、ウマソウナエモノダ」
「ドコカラクウ?」
「マダチイサイガ、ヤワラカソウナムネカラクウカ」
「シリモチイサイガ、ヤワラカクテウマソウダゾ」
口の造りが人とは違うので、喋り方がたどたどしい。
が、それが余計に不気味だ。
「くそ、食われてたまるかいな!」
モカが必死に暴れるが、かえって逆効果。
さらに大量の糸が絡まり、全く動けなくなってしまう。
「カカカカ、バカメ」
「ジブンデウゴケナクナリヤガッタ」
「デモコウツゴウ」
「ユックリ、クエル」
土蜘蛛の口が大きく上下に広がり。
更に、上下の顎が左右にカパァッと広がる。
まるで映画の〇レデターみたいだ。
その不気味は顎からネチャリとした液体が垂れるのを見て。
「い、いやや……いやァアアアア!」
初めて恐怖に襲われたのだろう。
モカが身をよじりながら悲鳴を上げた。
「助けてェ! 助けてェェェ!」
「クカカカカ。サケンデモムダダ」
「ダレモタスケニコナイ」
「イイコエデナク」
「オビエナガラ、ワレラノエサトナレ」
「ひっ……」
ジリジリと近づいてくる巨大な土蜘蛛に、モカは恐怖の目を向けるが。
「汚い手で触るんじゃねェ」
俺はそれだけ口にすると極鬼包丁を一閃させた。
「ギャピィ!」
その斬撃は1匹を真っ二つにするが。
「キサマ、ジャマスルツモリカ!」
「オマエモクッテヤル!」
「シネ!」
残った3匹は、怯むことなく俺に襲い掛かってきた。
って、コイツ等バカなのか?
目の前で仲間が瞬殺されたんだぞ。
俺に勝てないコトが分かんないのか?
とも思うが、逃げ出さないのは好都合。
モカを泣かせたんだ、惨たらしく殺してやる。
ヒュオッ!
地面スレスレに飛ばした飛刃で足先を斬り飛ばし。
「「「「ギャッ!」」」」
悲鳴を上げたとこを、更に飛刃で切り刻み。
「ヤメテクレェ……」
命乞いするまで虐め倒してから、止めを刺してやった。
ふん、ざまあみろ!
え?
怒るくらいなら、最初からモカに戦わせるな?
いや、モカに経験を積ませるコトは必要なコトだったから仕方ないよ。
でも感情は別。
モカを泣かせたヤツは絶対に許さん!
2023 オオネ サクヤⒸ




