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   第五十八話  コレを忘れとったらアカンわ





 モカは、鳥居を潜る冒険者たちの後ろ姿を見つめながら。


「最初は馬鹿にされとんかと思うたけど、ウチを心配してくれとったダケやったんやな」


 そう呟いた。


「あれが高位の冒険者なんか。実力があるから余裕もあるんやろな」


 そしてモカは、パァンと両手で顔を叩くと。


「よっしゃ、ウチも負けてられへん! 「鬼ヶ島」をクリアして限界突破Lv2を手にいれるんわ、ウチやで! ロックにぃ、しっかり見とってな!」


 そう言い放ってから、ダンジョンの入り口である鳥居に足を踏み入れた。

 鳥居の先には砂利道が伸びていて、左右には草原が広がっている。

 大きな岩や木が視界を邪魔している場所もあるので要注意だ。

 その道をモカはズンズン歩いていく。

 が、直ぐに立ち止まると。


「せやせや、コレを忘れとったらアカンわ」


 手に持ったケージから犬、猿、雉を出した。

 犬は小型犬で猿も小型、雉もそれほど大きくない。

 だからケージは人が想像するより小型だ。

 そしてモカは。


「あの人らは犬・猿・雉が必要なんに気付かへんかったみたいやな。これでウチの勝利は確定やで!」


 ニンマリと笑うと、犬・猿・雉を引き連れて歩き出した。

 そして進むこと2分半。

 真っ黒な鬼が現れた。

 いや黒いというより黒光りしている。

 身長は3メートルほど。

 人間など足元にも及ばない筋肉量を誇っている。


「え~~と、これが金鬼ちゅうヤツかいな?」


 さっそくモカが鑑定してみると。


 金鬼

 レベル     2000

 基礎攻撃力    20万

 防御力     120万

 装備武器     15万(金棒)


 鋼の肉体が、どんな武器も跳ね返すという金鬼だった。


 ちなみに今のモカの攻撃力は206600、つまり20万と少し。

 防御力120万の金鬼にダメージを与えるコトはできない。

 ついでに言うと、モカの防御力は94300で、HPは96760。

 金棒の1撃でゲームオーバーとなってしまう。

 ハッキリいって、普通にやったら絶対に勝てない。

 でもモカは自信満々だ。


「さっそく強敵のお出ましかいな。せやけど準備は完ぺきなんやでぇ! ちゅうコトで猿! 出番やで!」


 モカの命令で、猿が金鬼に飛び掛かった。

 でもこの猿、どう見てもポケットモンキー。

 金鬼に飛び掛かって大丈夫なんだろうか?

 と心配になるが、猿は金鬼が振り回す金棒を掻い潜ると。


「ウキィ!」


 金鬼の右わき腹を引っ掻いた。

 と同時に。


「もろたで!」


 モカが金鬼の体を駆け上がり。


「りゃ!」


 猿が引っ掻いた場所にヤマセミロングを突立てた。

 その瞬間。


「がっ!!!」


 金鬼の体がビクン! と硬直し。


 ずっずぅん。


 そのまま倒れ込んで、地面を揺らした。


「やったで! 金鬼、倒したで!」


 モカが嬉しそうに叫ぶ。

 と同時に。


「ロックにぃ! レベルアップしてで! しかも一気に」


 輝く顏を俺に向けた。

 なるほど、金鬼の経験値は1000万もある。

 つまり経験値3000万を超えたから、モカはレベル100になったらしい。


 ちなみにレベルアップのファンファーレが聞こえるのは本人だけ。

 当然、俺にもモカにレベルアップを告げるアナウンスは聞こえなかった。

 聞こえたら、同じタイミングで喜べんたんだけどな。

 でもお祝いは言っておこう。


「よかったな、モカ」

「おおきにロックにぃ!」


 やっぱりレベルアップは何回やっても嬉しいよな、モカ。

 でも、さすがSS級ダンジョン。

 たった1匹倒しただけで一気にレベルが上がったな。


 しかし逆に言えば、まだたった1匹倒しただけ。

 まだまだ先は長い。


 と言いたいトコだけど、それは口にしない。

 できるだけモカ1人で攻略させるのが、今回の目的なのだから。

 と、そこで。


「け―――ん!」


 いきなり雉が泣いた。

 と同時にモカは地面に伏せ。


 ヒュオン!


 さっきまでモカも首があった場所をカマイタチが切り裂いた。


「今のが、風鬼が操る暴風かいな」


 モカが冷や汗を流しながら、カマイタチが飛んできた方向に目をやる。

 その視線の先にいたのは、体が緑色の鬼。

 風を操ったトコから判断して、これが風鬼なのだろう。


 と言いたいけど、最初から俺は風鬼だと知っている。

 だって俺がプログラムしたのだから。

 お、モカも風鬼を鑑定したらしい。


 風鬼

 レベル    2000 

 基礎攻撃力   20万

 防御力     20万

 経験値   1000万

 備考  暴風、風刃(攻撃力15万)


 つまり風刃が命中してたら死んでたワケだ。

 まあ、もし避けれないようなら、俺が何とかしたけど。


「あ、あぶな~~、攻撃力15万の風刃やて!? もし喰らっとったら終わりやったやないか」


 そう言いながらも、モカにはまだ余裕があるみたいだ。


「雉! 風刃の発動を、しっかり教えるんやで! 猿! 風鬼の急所も分かるんやろな!?」

「け~~ん!」


 雉は一声鳴くと、モカの頭上を舞い。


「ウキィ!」


 猿は、風鬼に向かって駆けだした。

 そしてモカは。


「け――ん!」


 雉が泣く度に地面に伏せてカマイタチを躱し。


「ウキィ!」


 猿が引っ掻いた場所にヤマセミロングを突立てた。

 この1撃で。


「がはっ!」


 風鬼は地面に足れ、二度と起き上がる事はなかった。


「やったで! レベルアップや!」


 モカがまた大声を出してる。

 まあ、それも当然だろう。

 レベル100からは、経験値を200万、手に入れるとレベルが1上がる。

 そして風鬼の経験値は1000万。

 1匹倒すだけでレベルが5もアップするワケだ。

 モカが大喜びするのも当然といえる。


 ま、しばらくは喜ばせておくかな。







2023 オオネ サクヤⒸ

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