第五十四話 目的地はダンジョン「鬼ヶ島」だ
ファイナルクエストでは、Lvアップすると自動的にステータスが増える。
HP・ⅯPは、レベル×30。
力・耐久力・魔力・魔防力・速さは、レベル×25となる。
つまりレベルが99になった時の基礎ステータスは。
HP・Ⅿp = 2930。
力・耐久力・魔力・魔防力・知性・速さ = 2475。
この程度でしかない。
あ、前に言ったけど、運はLvアップじゃ増えない。
運をアップさせるには、スキルかマジックアイテムを手に入れる必要がある。
でもスキルもアイテムもかなりレア。
普通は生まれた時の運のまま。
大半の人は一桁台のまま人生を終える。
なので、殆どの人はHPや力を増加させる強化系スキル入手に励む。
『Hp強化』や『力強化』といった、単純強化系が1番、手に入り易い。
でも単純強化スキルだけでステータスをカンストさせるのは難しい。
だからある者は、更なる強化系スキル取得を目指す。
『全基礎ステータス強化』のように、更にステータスを増やせるスキルを。
またある者は、強化効果のあるマジックアイテム入手に必死になる。
「HP+300」とか「力+200」といった効果を持つアイテムを。
しかし、そうやってステータスをドンドン増やしていったら、どうなるか。
限界値の壁が、待ち構えている。
スキル『限界突破』を手に入れない限り、ステータスの上限は9999。
『力+10万』のスキルを得ても、力は9999までしかアップしない。
では、苦労の末ステータスをカンストさせた者は、どうするのか?
どうやったら9999以上のステータスを得られる?
誰でも考えるのは、スキル『限界突破』を手に入れるコト。
しかし『限界突破』は簡単に手に入るスキルじゃない。
それでも多くの冒険者が『限界突破』を追い求める。
もっと強くなれる方法があるなら挑戦するのがプレイヤーなのだから。
また、攻撃力と防御力には限界値が設定されていない。
だからやっぱり殆どの者は、強力な武具を手に入れようとする。
同時に、攻撃力&防御力強化スキルの取得も目指すのが一般的だ。
そして俺の場合。
『限界突破(Lv1)』しか取得してないから、限界値は99999となる。
でも入手済みスキルによって増加するステータス値は、それ以上だ。
つまり強化スキルの効果の1部を、損している状態だ。
まあ、チート武器のお陰で攻撃力はとんでもない数値になっているケド。
強力な武器をドロップしてくれた青行灯に感謝だな。
ついでに防具もドロップしてくれたら良かったのに。
おっと、話しを戻そう。
俺が言いたかったのは2つ。
無駄になっているステータスがもったいない。
そして攻撃力20194950に対し、防御力172475は低すぎる。
というコトだ。
だから『限界突破Lv2』と、防御力の高い防具。
この2つを目標にするコトにしよう。
ジパングには、まだまだダンジョンやイベントが隠されているのだから。
さてと、どれから手を付けるかな。
まず『限界突破Lv2』を手に入れるべきか?
ジパング最強の防具を手に入れるべきか?
『防御力強化』のスキル入手を目指すか?
それとも近い順に、片っ端からクリアしていくか?
さて、どうしたモンかな?
なんて俺が悩んでいると。
「なあ、ロックにぃ。ウチ等、ドコを目指しとんや?」
モカが声を上げた。
え? 話し方が違うって?
よし、説明しよう。
京の都は関西圏にある。
関西圏だから人々は関西弁を喋るようにプログラムした。
なので、転生者とイベント関連の人間以外は関西弁で喋る。
もちろん九州なら九州弁だし、東北なら東北弁だ。
そして転生者より、この地で生まれた者の方が遥かに多い。
だから京の都で生活していると、関西弁に接する場面が多くなる。
結果、モカは関西弁に染まり……いや、それは問題ないんだけど。
強烈なオバちゃんと話す機会が多かったのがマズかった。
モカは、かなりガサツな……ゲフンゲフン。
凄く元気な女の子に成長してしまった。
「京の都を出発したんはエエんやけど、目的地はドコなん? 目標は何なん?」
そのガサツ……ゲフンゲフン、元気なモカがそう言って首を傾げる。
うん、態度は別として、芸術品のように美しい美少女に育ったな。
すれ違う人が、必ず振り返ってる。
俺がプログラムした美の女神より美しいぞ。
ちなみに俺は、自分を天才的プログラマーだと思っている。
実際、地球ではブッチギリで1番だと思う。
でもリアルは、俺より遥かに上の美的センスを持っているらしい。
顔もスタイルもプログラムを超える美しさだ。
しかも最近じゃアチコチ育ってきて、思わずドキッとしてしまう時がある。
「ま、ウチはドコでもエエんやけどな」
そういってモカが俺の腕に抱き着いてきた。
う、周囲からの視線に殺気が混ざったぞ。
特に男からの視線に。
ま、今更か。
モカを一緒にいる時は、常に向けられる視線だ。
しかしモカの顔を見て、行先が決まった。
俺とモカ、両方強くなれるダンジョンにしよう。
だから俺はモカの頭にポンと手を置くと。
「目的地はダンジョン「鬼ヶ島」だ」
そう口にしたのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




