第五話 アイツ等が、次の獲物だ
ゲームの中なら、10分ほどでスライムを12匹倒し、レベル2になる。
しかしリアルじゃあ1日かけても倒せたのは、たった7匹のスライムだけ。
これがゲームとリアルの違いなんだろうな。
でも焦る必要はなんかない。
俺の体は、まだ3歳児なんだから。
という事で、今日も俺は家の裏の森で、スライム狩りをしている。
さっき倒したのが11匹目。
つまりあと1匹倒したらレベルアップできる筈。
そして、遂にその瞬間が。
スパッ。
「ピギィ!」
やった! スライム12匹を倒したぞ!
と、その瞬間。
パラパパッパッパパ~~!
聞きなれたファンファーレが脳内に響き渡り。
《獲得経験値が12を超えました。レベルが2になりました》
アナウンスが、そう続けた。
そして俺のステータスが、自動的に目の前に表示される。
ロック(転生者) 経験値 12
職業 里山の民
年齢 3
レベル 2
Hp 60
ⅯP 60
力 50
耐久力 50
魔力 50
魔耐力 50
知性 50
速さ 50
運 5
攻撃力 1000
「50+50+300(斬撃強化Lv1)+600(ミスリルダガー)」
防御力 100
魔法攻撃 100
魔防力 100
所持スキル
鑑定 マジックバック
斬撃強化Lv1(攻撃力+300)拳撃強化Lv1(攻撃力+500)
数値的には、大したアップじゃ無いように思えるかもしれない。
でも、基礎ステータスはレベル×25。
いきなり2倍にアップしたワケだ。
でも、圧倒的に強くなった、という程でもない。
(一般人と比べたら圧倒的に強くなってはいるけど)
だから。
「よしロック。また運動神経・反射神経・スタミナ・身のこなしを鍛える為の訓練をするぞ」
父さんが、俺にそう言った。
うんそうだよね、これからだよね。
って、おや? 父さんが心配そうな顔つきになったぞ。
「しかしだな、ロック。また苦しくて、つまらない訓練が延々と続くんだ。嫌ならやめてもイイぞ。強くなる方法は、他にもあるんだから」
これも父さんの優しさなんだろうな。
でも俺の答えは決まってる。
「父さん。1番効率がイイのは、その苦しくてつまらない訓練を続ける事なんだよね? じゃあボクは訓練を続けるよ。それにこの訓練は苦しくもないし、詰まらなくもないよ。だってこの訓練を乗り越えたら、ボクはもっともっと強くなれるんでしょ? そう思ったら楽しくてしょうがないよ」
「そうか」
父さんは、この俺の答えに。
「なら俺の知ってる最高の訓練方法をオマエに教えてやろう」
満足そうに笑ったのだった。
こうして充実した日々が続いた3か月後。
俺の身体能力は大幅にアップした。
おそらくだけど、全ての身体能力が金メダリストより上になったと思う。
だから父さんは。
「レベル3くらいまではスライム狩りがメインなんだけど、ロックなら、手順を3つくらい飛ばしても問題ないだろう。なにしろ拳撃強化Lv1も斬撃強化Lv1もレベル10以上でやっと取得できるスキルなんだから」
そう言って笑うと、森の奥へと俺を連れて行ったのだった。
そういやそうだった。
例えば斬撃強化Lv1。
これは職業『剣士』がレベル10を超えたあたりで取得するスキルだ。
まあ、レベル20を超えても取得できない人もいるけど。
もちろん斬撃強化は『騎士』や『大剣使い』なども取得できる。
斬撃強化Lv2ならレベルが20を超えたあたり。
Lv3なら30以上、Lv9ならレベル90以上ってトコかな。
思いっきりガンバれば、だけど。
だからレベル2で斬撃強化Lv1を取得してる俺って物凄く優秀といえる。
ま、レベル2の人間にしては、ともいえるけど。
などと、色々考えながら、2時間ほど歩いたトコで。
「アイツ等が、次の獲物だ」
父さんはゴブリンの集落を指さした。
集落といっても、木の枝を組み合わせて葉っぱを屋根にした小屋が10ほど。
いや、小屋というより子供の秘密基地程度だな。
集落の入り口を守っているのが3匹。
粗末な物見の塔に、見張りらしいゴブリンが1匹。
集落の真ん中で獲物を解体しているのが6匹。
他にも7匹のゴブリンが集落内をウロウロしている。
ふぅん、全部で17匹か。
と集落を観察している俺の目を、父さんが覗き込む。
「ロック。ゴブリンのHPは成人男性よりちょっと高い程度だが、武器を使う程度の知恵があるから経験値は3だ。普通だったら1匹ずつ倒して経験を積み、次に数匹、それから集団戦へと進んでいく。だがロックなら、いきなり集団戦でも大丈夫だろう。なに心配するな、父さんが援護する。だからロックは思う存分、経験値を稼ぐといい」
父さん、いきなりの無茶ブリですね。
でも俺のステータスを考えたら、これでもまだ控えめなクエストかも。
だってゴブリンのステータスは、こんな感じなんだから。
HP 15
ⅯP 0
基礎攻撃力 14
基礎守備力 12
そして俺の攻撃力からゴブリンの守備力を引いた数値。
これが実際にゴブリンに与えるダメージだ。
俺の攻撃力の数値=敵に与えるダメージ、というワケじゃない。
つまりゴブリンに与えるダメージは、攻撃力より低くなってしまう。
けど、それでも俺の攻撃力は1000もある。
たとえゴブリンの防御力によって弱められても、1振りで倒せる威力だ。
というよりオーバーキルだな、こりゃ。
というコトで、俺は自然な足取りでゴブリンの集落へと向かう。
そんな俺に、3匹のゴブリンが襲い掛かってきた。
集落の入り口を守っていたゴブリンだ。
手にしているのは錆びた剣だが、それでも攻撃力は24になっている。
へえ、あんなにボロボロの剣でも攻撃力は10もあるんだ。
まあ、いくらボロでも剣は剣なんだから、そんなモンか。
おっと、ゴブリンが目の前まで迫って来たぞ。
そろそろ攻撃するか。
バヒュ!
俺はミスリルダガーを一閃。
それだけで3匹のゴブリンの首が宙を舞った。
ちなみにダガーとは、貫通力に優れた武器。
急所への刺突が本来の使い方だ。
しかし切れ味が悪いワケじゃない。
特にミスリルダガーの切れ味は鋭い。
うん、イイ武器だ。
なんて考えてる場合じゃない。
集落から7匹のゴブリンが飛び出して来た。
よし、今度は俺が突進してみるか。
コォッ、と鋭く息を吐くと、俺はゴブリンへと飛び掛かり。
ヒュパパパパパパパ!
今度は7振りで7匹の首を切断したのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




