第四十五話 妖気カウンターだ
「とにかく聖属性の攻撃が出来るヤツを探さないとな」
席を立とうとするグラッグさんに、一応言っておこうかな。
「でもグラッグさん。京の都で妖怪が発生する原因は、百鬼夜行を倒した時に残った妖気かも、と思っただけで、まだそうと決まったわけじゃありませんよ」
「京の都に結界が張られてから1度も妖怪が発生した事はなかったんだ。そして百鬼夜行を倒して以来、急に妖怪が発生するようになった。なら1番怪しいのは百鬼夜行だろ。それに結界は妖怪を侵入させないが、逆にたまった妖気が外に出ていくのも邪魔してると思うんだ」
なるほど、確かにその可能性は高いな。
と納得する俺に、グラッグさんが続ける。
「でも原因解明のための調査はちゃんと続けるぞ。原因は他にあって、気が付いたら手遅れでした、じゃあ困るからな」
さすがギルドマスター。
俺が心配するコトなんか無かったみたい。
あ、じゃあコレだけ伝えておこう。
「グラッグさん。ボクとモカは聖属性の攻撃を使えます。もし力が必要なら声をかけて下さい」
「そうか、頼りにしてるぞ」
グラッグさんは漢の笑みを浮かべると、金の小鳥亭を出て行った。
はぁ~~、結構忙しい1日だったな。
お風呂も入ったし、晩ごはんも食べた。
後は寝るだけだ……とはいかない。
大威徳明王撃 不動明王撃 金剛夜叉明王撃。
俺が使える聖属性攻撃は、この3つだけ。
なにしろ明王とは、悪しきモノを滅す武神。
その攻撃は当然、聖属性だ。
でも明王撃だと破壊力が大きすぎて、街に被害が出る恐れがある。
というか、半壊しても不思議じゃない。
加えて、京の都に出現しているのは、レベルが低い妖怪ばかり。
だから低レベル妖怪を倒せる程度に威力を弱めた明王撃の呪符が必要だ。
つまり、これからに備えて劣化版の明王撃の呪符を作らないといけない。
ここで役に立つのが『解析』と『錬製』のスキル。
1枚呪符を作ってしまえば、簡単にコピーできる。
あ、そうそう、付け加えておくと。
「ボクとモカは聖属性の攻撃を使えます」
俺はグラッグさんに、さっきそう言った。
でも正確には、モカの職業が忍者だから明王撃の呪符を使える、だ。
つまり職業『忍者』の冒険者なら明王撃の呪符を使う事が出来る。
だから『忍者』の人の分も、劣化版明王撃の呪符を作っておくことにした。
でも不動明王撃はダメだな。
劣化版とはいえ、街中で炎攻撃なんかしたら火事になっちゃう。
水浸しもマズいだろうな。
というコトで、雷攻撃の金剛夜叉明王撃の劣化版を作るコトにした。
こうして迎えた、次の日の朝。
「忍者がいない?」
俺は、思わずグラッグさんに、そう聞き返した。
「忍者ってジパングを代表する職業なのに、その忍者がいないってどういうコトなんです?」
「それがな。忍者って対人戦闘力は高いけど、対モンスター戦は、それほどじゃないだろ? だから百鬼夜行の時、殆どの忍者は別の都に逃げ出したんだ。まだ死にたくないって言ってな」
確かにそうかもしれない。
伊賀や甲賀のスキルなしじゃ、忍者が岩石ムカデに勝つのは不可能だ。
「じゃあ京の都には、忍者が1人も残ってないって事ですか?」
「いや、ギルドの警備部隊に所属している忍者が3人ほど残っている。ま、彼らの主な役目は偵察や情報収集なんだけどな」
「でも出現してる妖怪のレベルは低いから、その忍者の人も妖怪退治に参加できますよね」
「ああ。戦闘に参加するコト自体には問題ない。でも忍者に限った事じゃ無いが聖属性の攻撃手段を持ったものがいない。妖怪を倒す事は出来ても、妖気を祓う手段が無いんだ」
眉間にシワをよせるグラッグさんに、俺は聞いてみる。
「聖属性の武器を冒険者に装備させるワケにはいかないんですか?」
この質問に、グラッグさんの眉間のシワが更に深くなる。
「聖属性を持つ武器って言ったら、草薙剣とか十束の剣とか布都御霊といった神代の剣くらいのモンだが、神社の御神体として祀られているモノばかりだ。実戦に投入するのは無理だろうな」
そっか。
ファイナルクエストじゃ、神剣は単なる優れた武器だった。
でも200年以上が経過したココじゃあ、そうなってても不思議じゃない。
ちなみにダンジョンを攻略したら、今でも聖属性の武器は手に入ると思う。
しかし今は、呑気にそんなコトしてる時間は無い。
となると、その3人の忍者の人に頑張ってもらうしかないか。
「グラッグさん。ボクとモカは聖属性の攻撃を使えると言ったけど、それは忍者という職業だけが使える聖属性の攻撃手段があるって意味なんです」
俺はそう言うと、マジックバックから呪符を取り出した。
「劣化版金剛夜叉明王撃の呪符1500枚です。明王の力ですから、その攻撃は当然、聖属性です。忍者の人なら職業スキルで使えるので、1人に500枚、渡してください。レベル20程度の妖怪なら1撃で倒せるハズですから」
「1500枚!? そんなに貰っていいのか!?」
目を丸くするグラッグさんに、俺は笑ってみせる。
「はい。3000枚くらいなら一晩で作れますので。ま、3000枚作るのは、かなり大変でしたけど」
つまりまだ1500枚、マジックバッグに入ってる。
「それは凄いな。じゃあ有り難く貰って、いやギルドが買い上げよう。今は緊急事態なので支払いは後になるが、今までの事と合わせて必ず納得いく金額を用意させてもらおう」
グラッグさんは金剛夜叉明王撃の呪符を受け取ると。
「ムサシ! 良いモノが手に入ったぞ!」
警備部門の責任者=ムサシさんを呼び。
「忍者だけが使える聖属性の武器だ。忍者に渡して、これで妖怪と退治してみてくれないか」
「ほう、妖気を払う手段が手に入ったか。よし、さっそく職業が忍者の者に手渡して使わせてみよう。おい! 誰か!」
ムサシさんは部下を呼び寄せると。
「この呪符は制属性だが、忍者にしか使えない。だから他の者は忍者をバックアップして、可能な限り忍者にこの呪符で妖怪を退治させろ」
「は!」
明王撃の呪符を手渡した。
そしてムサシさんは、部下が立ち去るとクルリと振り向き。
「こちらも良いモノを手に入れたぞ」
そう言って、スマホによく似たモノを取り出す。
というか、大きさも形もスマホそのもの。
薄い板状のモノで、片方が液晶画面みたいになってる。
「妖気カウンターだ。魔道具ギルドのケツを叩いて、大急ぎで作らせた」
ムサシさんはそう言ってスマホ……じゃなくて妖気カウンターを指差した。
その画面に表示された33869274という数字をグラッグさんが覗き込む。
「3386万9274か。ムサシよ、これが京の都を覆っている妖気の数値という事なんだよな?」
「その通り。そして問題は、妖気が10もあれば妖怪が生まれる、という事だ」
ムサシさんの説明に、グラッグさんが溜め息をつく。
「という事は、338万匹を超える妖怪が生まれると言う事か。10万の高レベル妖怪とレベル500の妖怪7匹分の妖気だから、当然といえば当然なのかもしれないがな」
そう呟いたグラッグさんに、ムサシさんが厳しい顔を向けた。
「レベル500以上の高レベルの妖怪が生まれる可能性もある。もし全ての妖気が1つに集まったら、ギルドの切り札である高位堕天使でも倒せないほど強力な妖怪になるだろうな」
2023 オオネ サクヤⒸ




