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   第四十四話  オマエはどう思う?





 京の街に出現したのは「猫又」や「おとろし」だけじゃなかった。


 小さな蜘蛛を吐き出して人を襲わせる「女郎蜘蛛」。

 鋭い角と爪で人を襲う「牛鬼」。

 熊や狼を簡単に食い殺す、巨大な猿=「狒々」。

 物凄い速さで吹き抜けて、人を切る「カマイタチ」。

 人を棺桶に引きずり込んで食い殺す「うわん」。

 井戸から突然現れて人を襲うガイコツ=「狂骨」

 人の内蔵が好物の、狂暴な河童=「魍魎」

 鶴瓶を人の首に巻き付けて引き上げ、食い殺す「鶴瓶火」

 急に倒れてきて人を押し潰す妖怪「塗り壁」

 麻痺の邪眼で動けなくしてから人を食う、下半身が蛇の妖怪「濡れ女」


 他にも色々な妖怪が姿を現していた。

 もちろん、見つけると同時に瞬殺。

 俺がヤマセミロングで斬り倒し、モカが炸裂玉で吹き飛ばす。


 ちなみに炸裂玉とは、手榴弾の破壊力を持つパチンコ玉みたいなモノ。

 ぶつけると爆発し、妖怪を粉々にする。

 もう戦いじゃなく、清掃作業状態みたいなモンだ。


 でも楽勝なのは、俺とモカのステータスが高いからじゃない。

 妖怪のレベルが低いからだ。

 殆どがレベル一桁で、高くても12程度。

 C級どころかD級冒険者でも、負けるハズがない妖怪ばかりだ。

 だから。


『うおおおおおおおお!』


 グラッグさんが派遣した冒険者達が京の都を駆けまわり。

 都から妖怪を一掃するまで、そんなに時間はかからなかった。


 ふう、どうやら暗くなる前に妖怪を全部退治できたみたいだね。

 ああ、よかった。

 これで安心して金の小鳥亭に戻って、晩ごはんを食べるコトが出来る。

 あ、その前に冒険者ギルドに顔を出しておいた方がイイか。

 というコトで。


「グラッグさん、いますか?」


 冒険者ギルドに行って、グラッグさんを探していると。


「あ、ロックくん、ごめんね。ギルドマスター、まだ現場なの」


 エリさんが対応してくれた。


「伝言があるなら、聞いておくわよ」


 気を使ってくれるエリさんに、俺は聞いてみる。


「妖怪退治も一段落したみたいなので、金の小鳥亭に戻ろうと思うんですけど、何か急いで対処しないといけない案件はありますか?」

「あ、ありがとね、ロックくん。でも取り敢えず出現した妖怪は全滅させたみたいだから、金の小鳥亭でユックリして貰って構わないわよ」

「分かりました。じゃあ金の小鳥亭に戻ります」

「ええ。あ、報酬は明日までに計算しておくわね」

「ありがとうございます」


 俺はエリさんに頭を下げると、モカと一緒に金の小鳥亭に向かう。

 おっとその前に、銭湯で汗を流すか。

 というコトで。


「モカ。お風呂に行かないか?」

「いくーー!」


 モカと銭湯に行って1日の汗を流してから金の小鳥亭に戻り。


「ダンガさん! 晩ごはんを食べに来ました!」


 俺とエビフライ定食、モカはオムライスを注文した。

 うん、金の小鳥亭の料理は美味しいな。

 こうして美味しい料理を食べてると、やっと1日が終わったと実感する。


 でも、これで一件落着とはいかないだろうな。

 どうしてこんなに妖怪が大量発生したのか?

 再び発生するコトはないのか?

 それを解明しない限り、安心して京の都で暮らす事は出来ないだろうから。

 少なくとも普通の人は。


 もちろん、そのことを1番理解しているのは、ギルドを任されている者。

 つまり冒険者ギルドのマスター、グラッグさんだ。

 とはいえ。


「ロック。オマエはどう思う?」


 金の小鳥亭で晩ごはんを食べてるトコに、いきなり現れないで欲しい。


「……子供のボクに聞かれても、答えに困りますよ」


 肩をすくめる俺に、グラッグさんが食い下がる。


「いや、前世の年齢を合計すると、子供って事はないよな? それにロックの知識は普通の転生者じゃ考えられないレベルだろ? 頼む! 京の都に暮らす人々の為の知恵を貸してくれ」

「知恵だけでイイんですね」


 念を押す俺に、グラッグさんが真顔で答える。


「出来れば力も貸して欲しい」

「正直過ぎませんか」


 俺が苦笑いすると、グラッグさんも苦笑を浮かべた。


「カッコ悪いと自分でも思うぞ。でも、オレが恥をかいて人々を救えるのなら、幾らでも恥をかくぞ」


 ああ、やっぱりグラッグさんは、尊敬に値する人だな。

 なら、グラッグさんの為にガンバルとするか。


「ならグラッグさん。今、判明しているコトを教えて下さい」

「おう。といっても、殆ど何も分からないのと変わらないな。結界に問題ないのに妖怪が発生した。発生した妖怪は、全て低レベル。でも、京の都のあちこちに出現し、そこに規則性は見出せない。これくらいしか言えないんだからな」

「結界内に侵入された理由ですけど、他の妖怪は分かりませんけど、猫又が普通の猫に化けて入り込んだ可能性はないでしょうか」


 これが1番、気になるトコロ。

 もしコレが事実なら困った事だけど、対策は立てられる。

 でもグラッグさんは。


「それはない」


 即座に否定した。


「結界は妖気に反応する。そして妖気は消そうと思っても消せるもんじゃない。たとえ、どれほどレベルが高い妖怪でもな」

「そうですか」


 それだけ言って、俺は考え込む。

 妖怪が侵入したんじゃないとしたら、妖怪は京の都の中で生まれている?

 でも、なんで急に妖怪が生まれるようになったんだ?

 いままで、そんなコトなかったのに。


 って、ああ!

 ひょっとして、妖怪が生まれるのは。


「百鬼夜行の所為かもしれません!」


 思わず大声を出した俺に、グラッグさんが鋭い目で聞いてくる。


「百鬼夜行の所為? 百鬼夜行は終わってないという事か?」

「いえ。百鬼夜行は間違いなくベールゼブブが消滅させました。でも、百鬼夜行が纏っていた妖気は残留して京の都に降り注いだんじゃないでしょうか。だってあの時、堕天使の攻撃によって一瞬でしたけど、結界が消えてましたから。そして堕天使の攻撃が聖属性じゃないコトも原因の1つだと思います」


 天使の攻撃だったら、妖気を完全に浄化してただろう。

 なにしろ天使の攻撃は、聖属性なんだから。


 でも堕天使は堕天する事によって、聖属性を失う。

 天使の時より、遥かに高い戦闘力を得る事と引き換えに。

 そして堕天使が打ち砕いた妖怪の妖気は、浄化されずに残ったのだろう。


「つまり百鬼夜行を倒した後に残った妖気が、妖怪を作り出してるって事か。なら話は簡単だ。出現した妖怪を聖属性の攻撃で倒したらいいんだからな」


 グラッグさんが、ホッとした顔になった。

 解決のメドが立ったからだろうけど、そう簡単にはいかない。


「でもグラッグさん。聖属性の攻撃で妖怪を倒せる人がいますか?」


 俺がそう聞くと、グラッグさんの顔色が悪くなった。


「ぐ。そういや聖属性の冒険者の殆どは回復職だ。攻撃手段を持ってるヤツは、殆どいなかったな」


 はぁ~~、そうなんだよな。

 聖属性の攻撃手段を持ってる人って、極端に少ないんだよね。









2023 オオネ サクヤⒸ

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