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   第四十一話  銭湯があるのを知ってるか?





 俺は、様々な形態の国や地域をプログラムした。


 戦国シミュレーションゲームを楽しめる地域。

 皇帝や王を中心とする貴族社会の国。

 有力者による議会が統治する国や都市。

 民衆が議員を選ぶ、議会制民主主義国。

 強い者が王となる、弱肉強食的な地域や部族や種族。

 軍事強国に共和国。


 でも1番多いのは冒険者ギルドが治安を担っている町や都市や国だ。

 転生者は基本的に善良な者が多いからだろう。


 そして冒険者ギルドが人々から信用される理由の1つが堕天使を召喚する事。

 なにしろ悪人が堕天使を召喚したら、その場で堕天使に殺されるのだから。

 京の都も、そんな冒険者ギルドが治安を担う都市の1つだ。


 なので俺は、モカを連れて冒険者ギルドに飛び込むと。


「レンガ亭に鬼婆が出ました! お客さんだけじゃなく、店主や店員も皆殺しにされてます!」


 グラッグさんに、大声で報告をした。


「鬼婆だと!? 間違いないのか!?」


 グラッグさんが驚くのも無理ない。

 京の都は妖怪避けの結界が常時発動している。

 鬼婆程度の妖怪が侵入できるワケがないのだ。

 ぬらりひょんや剛腕鬼レベルなら話は別だけど。


「はい。入り口まで来てもらえますか?」


 ここで鬼婆の死体を出すと、床が汚れてしまう。

 だから外に出てから、鬼婆の首と体をマジックバッグから取り出す。


「むぅぅ。間違いなく鬼婆だ」


 グラッグさんは一声唸ると、ギルドに駆け戻り。


「ムサシ!」


 冒険者ギルド警備部門の責任者の名前を叫んだ。


 ムサシさんは元冒険者で、レベルは892。

 スキル「二刀流」を使いこなす、職業『侍』のS級+の冒険者だった。

 他の任務で百鬼夜行戦に間に合わず、悔しがってたっけ。


「どうしたんだ、グラッグ」


 ムサシさんが、強者らしい余裕を身に纏って顔を出すが。


「都の中に鬼婆が出た」


 グラッグさんが鬼婆の死体を指さすと。


「む!?」


 ムサシさんは、S級+の冒険者の顔になった。


「レンガ亭で客を皆殺しにしたらしい。ロックが倒してくれなかったら、被害は更に拡大してただろう」


 グラッグさんの説明を聞いたムサシさんが、大声で叫ぶ。


「1組・第1班、集合!」


 前に、警備部門は1組から第4組に分かれていると教えてもらった。

 4つの組が4交代制で、24時間勤務で京の都の治安を守っているらしい。


 6人で構成される班が、5つ集まったものが組だ。

 年齢やケガで引退した、善良な冒険者をスカウトしている、って言ってたっけ。

 やっぱ治安を担当するんだから、人柄が大事なんだろう。

 戦闘力は冒険者がカバーしたらイイんだし。


 で、2班から5班は、京の都に配置された屯所で警備活動を行い。

 1班は、冒険者ギルドで都全体の治安維持活動を担当している。

 その1組第1班の人達が。


「「「「「「は!」」」」」」


 ムサシさんが叫ぶと同時にギルドから飛び出してきた。

 そしてビシッと整列した警備部門の人達に、ムサシさんが指示する。


「レンガ亭に鬼婆が出現して、人が殺された。現場に向かえ」

「「「「「「は!」」」」」」


 即座に出動する警備部門の人達を見送りながら。


「悪い予感がするぜ」


 ムサシさんは、そう呟いてから俺に向き直る。


「ロック。鬼婆を倒してくれた事、そして報告してくれた事、感謝する。そして悪いんだが、状況を聞かせてもらえないだろうか?」


 はい。

 俺は、そう答えようとしたのだが。


 ギュルルルルル~~。


 そこでモカのお腹が派手に鳴った。

 モカの口元からは涎が垂れかかっている。

 空腹を我慢しているコトが見え見えだった。


 もちろんモカは文句を言ったりしない。

 可愛らしく、そして健気に我慢している。

 そんなモカを見てたら、なんかすごく悪いコトしてる気分になってしまう。

 と思ったのは俺だけじゃないらしい。

 ムサシさんがモカに優しい笑みを向けると。


「お嬢ちゃん。昼メシまだなんだろ? 御馳走するから、何が食べたいか教えてくれないかい?」

「ハンバーグ!」

「そうか、ハンバーグか。よし、ちょっと待っててくれよ」


 ムサシさんはそう言うと金の小鳥亭に向かい。


「金の小鳥亭の、特製ハンバーグだ」 


 大きなバスケットをかかえて戻ってきた。

 中身は、凄く美味しそうなハンバーグを乗せた皿が2つ。

 ライスとサラダとスープまで付いてる。

 どうやら俺の分まで用意してくれたようだ。


「さあ、お嬢ちゃん。ご希望のハンバーグだ。食べてくれ」

「わぁ~~、いただきます!」


 大喜びでハンバーグを頬張るモカを笑顔で見守りながら。


「食べながらでイイから話を聞かせてもらいないか」


 ムサシさんは、俺にもハンバーグを勧めてくれた。


「はい、頂きます」


 俺はハンバーグを食べながら、レンガ亭でのコトを説明する。

 ムサシさんとグラッグさんは、厳しい顔で俺の話しを聞いた後。


「結界の魔道具の点検が必要だな」

「そうだな。鬼婆が侵入したんだ、異常をきたした部分がある筈」

「ああ、早く結界を修復しないと、また被害が出てしまうからな」


 深刻な顔で相談すると。


「おい! 誰か結界を発生させる魔道具を点検してくれ!」


 グラッグさんが、ギルドの職員にそう命令した。


「はい!」


 職員さんが慌てて点検に向かうのを確認すると。


「見回りも強化する必要があるな」

「ギルドに待機してもらう冒険者も確保しておいた方が良いだろう」

「他にも……」


 グラッグさんとムサシさんは、相談を続ける。

 と、そこで。


「ごちそうさまでした!」


 モカがニコニコしながら、大声を上げた。

 ホントに満足そうな笑顔だ。

 よかったな、ハンバーグ美味しくて。

 でも可愛らしい顔がハンバーグソースだらけだぞ。

 さっそく俺が、モカの顔を拭いてやろうとすると。


「ロック。京の都に銭湯があるのを知ってるか? え、まだ行った事ない? なら嬢ちゃんを連れてってやったらどうだ?」


 グラッグさんが、そう勧めてくれた。


 銭湯かぁ、そりゃあイイ!

 やっぱ湯船にユックリ浸からないと、疲れが取れないんだよな!


 というコトで。

 俺はモカを連れて、銭湯に行くコトにしたのだった。








2023 オオネ サクヤⒸ

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