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   第三十一話  オマエ、面白いな





「岩石ムカデが襲い掛かってきた映像、ちゃんと撮ってるだろうな!?」


 怒鳴るグラッグさんに、ギルド本部から顔を出した人が叫び返す。


「はい! 撮影しながら、同時にギルド本部に転送してます!」

「上出来だ!」


 そっか、妖怪との戦いを撮影して転送したのか。

 なら、ここから10分間、持ち堪えたらイイんだな。


 ……10分間耐えたらイイんですよね? 

 早く『アレ』を派遣してください、お願いします!

 俺は心の中で祈りながら、グラッグさんの横に戻ろうとしたんだけど。


「オマエ等、絶対に手を出すなよ!!」


 剛腕鬼が仲間に向かって吠えると、俺の前にズドン! と着地した。

 そして牙をむき出してニヤリと笑うと。


「オマエ、面白いな」


 俺に嬉しそうな、でも狂暴な目を向けてきた。


 うわぁ、デカいな。

 身長3メートルはあるだろう。

 でも、もっと大きく見える。

 ボディビルダー並みの筋肉のせいだろうな。

 そのムキムキの体に着けているのは、虎の毛皮のフンドシのみ。


 いや、右手に小手を装備しているから、フンドシのみじゃないか。

 その小手からは、長くて鋭い爪が3本伸びていた。

 うわ、凶悪そうな爪だな。

 危険な気配をビンビン感じる。


 というワケで鑑定してみると。


 闘鬼の小手

 攻撃力 21000

 防御力 21000


 とんでもなく高性能な武具だった。

 いや、危険なのは闘鬼の小手だけじゃない。


 剛腕鬼

 HP    550000

 基礎攻撃力   9999

 防御力    12500

 装備武器   21000(闘鬼の小手)

 経験値   180000


 闘鬼の小手の持ち主である剛腕鬼のステータスもヤバい。


 って、総大将であるぬらりひょんより上じゃないかよ!

 まあ、ステータスに表示された数値だけが、強さの全てじゃない。

 ぬらりひょんが総大将なのは、それ以外の要素も大きいからだ。


 とはいえ、ステータスだけなら、剛腕鬼はぬらりひょんより上。

 まともに戦ったら、絶対に勝てない相手だ。

 そのまともに戦ったら勝ち目のない相手が。


「策を弄したとはいえ岩石ムカデを倒すとは、なかなか強いじゃないか。さて、今度はオレと遊ぼうぜ」


 そう言うと、闘鬼の小手を叩き付けてきた。


 うわ、いきなり!?

 命中したら大ダメージ間違いなしの1撃だ。

 でも大丈夫。

 俺は剛腕鬼の攻撃を紙一重で躱す。

 その直後。


 ドッカァァァン!!


 闘鬼の小手は轟音と共に地面に激突し、クレーターを作った。

 が、それで終わりじゃない。


「うがぁ!」


 剛腕鬼が大きく吠え、闘鬼の小手が俺目掛けて跳ね上がる。

 でも。やっぱり大丈夫。

 俺は再び闘鬼の小手を避けた。


 さっき俺は『まともに戦ったら勝てない』と言った。

 つまり、まともに戦わなければいい。

 どういうコトかというと、剛腕鬼の動きにはクセがある。


 というか、力自慢の素人の動き。

 必ずグッと力をタメ、反動をつけて叩き付けてくる。

 もっと詳しく言うと、グッと力をタメ、そこで攻撃する部位を見る。

 そして最大の破壊力を発揮しようとして、反動をつけて打ち付けてくる。


 だから力をタメた時、何処に攻撃しているかを見抜き。

 反動をつけて攻撃を仕掛けてきた瞬間、体をずらせばいい。

 後は勝手に空振りしてくれる。

 後は倒すだけだけど、剛腕鬼は俺との一騎打ちに拘ってるみたいだ。

 なら、「アレ」が派遣されるまでの時間稼ぎをするか。

 攻撃を躱すのは難しくないから。 


 あ、でも剛腕鬼の攻撃を、延々と躱し続けるのはマズイかも。

 退屈した妖怪が暴れ出すかもしれないから。

 だから少しだけ見せ場を作るか。


 ドカァァァァン!!


 闘鬼の小手が地面にクレーターを作ると同時に、俺は。


 ゴン。


 剛腕鬼の右脇腹に正拳突きを打ち込んだ。

 本気の1撃じゃないけど、この俺の攻撃に。


「ぐぬ!」


 剛腕鬼が顔をゆがめた。


 ふふん、効いただろ?

 おっと、また力をタメた。

 どこを狙ってるんだ? ふん、俺の頭を薙ぎ払う気か。

 それなら。


 ブォォン!


 物凄い音を立てて迫る闘鬼の小手を、しゃがんで躱し、今度は。


 ゴン。


 剛腕鬼の左脇腹に拳を打ち込む。


「ぐぬ!」


 またしても剛腕鬼の顔が歪んだ。


 俺の軽い攻撃で、どうして剛腕鬼が顔を歪めるのか?

 答えは、剛腕鬼の体の構造が、人間と同じだからだ。

 つまり俺が攻撃したのは、肝臓と腎臓。

 打たれ慣れたボクサーでさえ、打ち抜かれたら痛みで崩れ落ちる急所だ。


 でも、本気で打ち込むのは、まだ早い。

 10分間、時間を稼がないと。

 いや、もう3分くらいは稼いだハズだから、残り7分くらいかな。

 よし、もう少し戦いを面白くしてやるか。


 俺は、剛腕鬼の攻撃を躱すと、距離を一気に詰め。


 バシン!


 剛腕鬼の膝の内側に蹴りを叩き込んだ。

 膝の内側を触ると、骨が出ているコトが分かるハズ。

 この骨も急所の1つ。

 ここを強打されると、痛みで立っていられなくなる。

 もちろん剛腕鬼も立っていられず、膝をついた。


 よし、ここだ!


 俺は剛腕鬼に次の攻撃を放とうとして。


 ビュン!


「うわ!」


 剛腕鬼の反撃を、慌てた声を上げながらギリギリで躱した。


 ピンチだった剛腕鬼が、圧倒的な力で俺を追っ払った、と見えたハズ。

 どうだ、面白い攻防だろ?

 と思ったトコで。


「剛腕鬼よ。今のままじゃオマエは負ける。ここは儂に任せい」


 ぬらりひょんが、いきなり声を上げた。








2023 オオネ サクヤⒸ

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