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   第三十話  来るぞ!





 今日は百鬼夜行が毎日出現するようになって10日目。

 つまり10万の妖怪が襲い掛かってくる日だ。


 ちなみに父さんと母さんは、帰って来るのに1週間かかる場所にいるらしい。

 はあ、父さんと母さんがいたら、楽勝だったのに。


「さて、いつ出現するんだろうな」


 俺の隣でそう呟いたのはグラッグさん。

 日が昇る前からギルド本部の入り口で、空を見上げていたらしい。

 グラッグさんと一緒にいるのはA級+が2名、A級が5名、A級-8名。

 この15名とグラッグさんと俺とモカ。

 合計18名が、レベル500の妖怪と戦うメンバーだ。


 ちなみに他の冒険者やⅯP持ちはギルド本部の地下に集合している。

 ギルドの地下に結界を発生させる魔道具が設置してあるからだ。

 そして結界がある限り、レベル99以下の妖怪は京の都に入れない。

 となると、レベル500の妖怪達は結界を破る為にギルド本部を襲う筈。

 その妖怪を、戦力を結集させて迎え撃つ、というのがグラッグさんの作戦だ。


 ちなみに結界だけど、不意打ちに備えて、もう展開してある。

 うん、なかなかイイと思う。

 別々の方向から結界に攻め入られたら、都にかなりの被害が出てしまう。

 でも攻撃される場所が1ヶ所なら、何とか対処できる筈。

 後はグラッグさんの作戦通り、ギルド本部を襲ってくれるかどうかだ。


 え? たった18人でレベル500の妖怪8匹に勝てるのかって?

 もちろんまともに戦ったら勝てる筈がない。

 でも百鬼夜行をプログラムしたのは俺だ。

 特性も弱点も分かってる。

 既にレベル500の妖怪を、どう迎え撃つか相談済だ。


 ただ心配なのは、これがリアルだというコト。

 244年の時を経て、百鬼夜行に何か変化が起こってたらどうしよう。

 などと、ちょっと弱気になったトコを狙うかのように。


「百鬼夜行だ!」


 誰かが声を上げ、空に百鬼夜行が現れた。

 10万匹か、やっぱりすごい数だな。

 なんか押しつぶされそうに感じる。

 でも襲ってくる様子はない。

 京の都の上空を練り歩くだけだ。


「ふん。結界に触れると多少はダメージを受けるから、どうするか迷ってやがるみたいだな」


 グラッグさんが鼻を鳴らすが、グラッグさんも分かっているに違いない

 そのうちレベル500の妖怪が、結界を突き破って入ってくるコトを。

 と、さっそくその時が訪れた。


 ミギィィィィ。


 8匹の妖怪がユックリと結界内に侵入してきた。


 一目でパワーファイターと分かる、ムキムキの剛腕鬼。

 大気が歪んで見えるほどの魔力が体から立ち昇っている、大天狗。

 身長30メートルの巨大なガイコツ、ガシャ髑髏。

 70メートルの巨体を誇る、岩石ムカデ。

 大型バスほどもあるクモの体に、鬼の顔が付いている妖怪、土蜘蛛。

 顏が狒々で手足が虎、尻尾は蛇で雷を操る妖怪、ヌエ。

 鉄すら断ち割る風の刃を操る、疾風鎌鼬。

 その7匹を率いるのは妖怪の総大将、ぬらりひょんだ。


 でも幸運なコトに、8匹は侵入しただけ。

 結界を破壊したワケじゃないから、他の妖怪は入ってこれない。

 おっと、こんなコト考えてる場合じゃなさそうだ。

 8匹がコッチに向かってきた。


「来るぞ! 打ち合わせ通りに行くぞ!」


 グラッグさんが叫び、15名の冒険者が身構えた。

 妖怪の先頭を切って襲い掛かってくるのは岩石ムカデ。

 俺がプログラムしたのだが、リアルで見ると、物凄い迫力だ。


 頭と背中が岩石で覆われているので、防御力は12000もある。

 巨大なキバによる攻撃力は9000。

 しかも毒まで持っている。

 尖った足による攻撃も強烈。

 踏みつけられたら、鎧でも簡単に穴が開いてしまう。

 大きいというコトは、それだけで強力な武器だ、という見本だ。


 おまけに細部まで緻密にプログラムしたから、凄くグロい。

 見ただけで鳥肌が立つ。

 そして、この岩石ムカデが先頭なのは、1番速度が速いから。

 じゃなくて何も考えてないから。

 ムカデがベースなんだから、ほとんど本能で動いてるようなモンだ。


 よし、予想通りだ。

 グッと拳を握る俺の横で。


「ロック! 打ち合わせ通りに攻撃したらイイんだよな!?」


 グラッグさんが大声で聞いてきた。


「待って! ボクに任せて!」


 俺はグラッグさんにそう返すと『空間機動』」で空を駆け。


「くらえ!」


 マジックバッグに収納した『秘密兵器』=大量の水を浴びせた。

 もちろん只の水じゃない。

 タバコを煮だして、ヤニで茶色くなった水だ。

 岩石ムカデは、その茶色の水をまともに浴びると。


 シャギャァァァァァァ!


 耳障りな鳴き声を上げながら地面に落下。

 その場をぐるぐると周り出した。


 妖怪岩石ムカデは、ムカデをベースにプログラムした。

 だからムカデがヤニを嫌うように、岩石ムカデもタバコのヤニが苦手だ。

 そのヤニをタップリ含んだ水を浴びせたのだ。

 岩石ムカデは苦しみで、のた打ち回る。


 そして、その苦しみ方も実物のムカデと同じにプログラムしている。

 つまり同じところをグルグル回るように。


 ただ、ちょっと失敗だったかも。 

 巻き込まれて、かなりの数の家屋が壊れてしまってる。

 ……弁償しろ、なんて言われないよね?

 おっと、さっさと岩石ムカデに止めを刺さないと。


(強手裏剣・棒!)


 考えるだけで、転送の指輪により強手裏剣が手の中に出現する。

 ちなみに強手裏剣は2種類ある。

 破壊に特化した八方手裏剣と、貫通に特化した棒手裏剣だ。

 そして今、手の中にあるのは貫通力に特化した棒手裏剣の方。


(さて、どこに撃ち込むかな)


 そう考えた瞬間、岩石ムカデの頭に光の点が現れた。

 どうやらスキル『急所探知』が発動したらしい。

 この光ってる部分が、急所である脳なんだろうな。


 ……って、小っちゃ!

 光の大きさ、野球のボールくらいしかないぞ。

 体長70メートルもあるのに、脳が野球のボール並みって……。


「って、そんなコトはどうでもイイか。さっさと撃ち抜こ」


 というワケで俺は、光の点に強手裏剣・棒を撃ち込む。

 その強手裏剣は狙い通り、光の点を打ち抜くが。


「1本じゃ心持たないから5本にしとくか」


 更に4本を撃ち込む。

 その結果、岩石ムカデは地響きを立てて、地面に崩れ落ちた。


 と言いたいトコだが。

 実物のムカデと同様、致命傷でも体は暫く動き回る。

 ムカデは頭を失っても動き回るからね。


 でも、もう2度と襲い掛かるコトはない。

『オマエはもう死んでいる』状態だから。

 なので俺は。


「岩石ムカデは仕留めました! 次に備えて下さい!」


 地面に着地すると、グラッグさんに、そう怒鳴ったのだった。








2023 オオネ サクヤⒸ

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