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   第三話  面倒くさいからって、ぶっちゃけすぎじゃないですか、神様?





 正拳突きを繰り返し、体力が尽きたら走り込んだ翌日。


「ロック。今日は素振りとサーキットトレーニングと瞑想だ」


 父さんが意外な事を言ってきた。


「昨日と同じコトをするんじゃないの?」

「ロックは3歳で転生者としての記憶を取り戻したろ? しかしだな。僅か3歳で記憶を取り戻した転生者の話なんて、オレは今まで聞いたコトがない。そして何より重要なのは、人生で神経組織が1番発達するのは3歳から4歳にかけてというコトだ。そして神経は、使わないと退化していく」


 へえ、よくそんなコト知ってたな。

 人間の神経組織は、3~4歳が発達のピークだ。


 あ、こんなコト、聞いた事あるかな?

 ゴールデンエイジ(8,9歳~12歳)に「運動神経」が爆発的に発達すると。

 でも正しくは「運動能力」が爆発的に発達する、だ。

 それ以前に、運動神経とか反射神経とかは、医学の言葉じゃないケド。


「それでだな、ロック。前代未聞の事だから何とも言えないんだが、今からシッカリ鍛えたら、普通の人間より遥かに高レベルの神経組織と身体能力を手に入れる事が出来るんじゃないか、ってオレは思うんだ」


 あ、もしそれがホントなら、凄いコトだ。

 神経が1番発達する3~4歳の時、大人の知識で運動したらどうなる?

 普通の3歳児に、大人レベルの真剣さで運動をさせるなんて不可能。


 でも俺なら、全集中で訓練できる。

 つまり人類史上、初めて高度な訓練を3歳児に課すコトが出来るワケだ。

 これは、想像を絶する身体能力が手に入るかも。


「武器による攻撃の為の素振りもそうだが、それに加えて神経組織と身体能力をさらに伸ばす為のサーキットトレーニング。そして魔法を使いこなす為に必要な魔力を操る感覚を習得する為の瞑想。今日はそれを訓練するぞ」


 という事で。

 父さんが差し出した木の棒を俺は受け取ると、俺は素振りを始めた。

 そして疲れてきたトコで。


「素振りに鋭さが無くなってきた。正しい動作じゃないと良い稽古にならない。だから今度はスタミナと神経組織と身体能力をアップさせる為のサーキットトレーニングだ」


 人間の基本的な運動は約80種類あるという。

 投げる、走る、跳ぶ、転がる、片足ジャンプなどだ。

 その基本的動作を繰り返すサーキットトレーニングを繰り返す。

 スタミナ、神経組織、身体能力を発達させる為に。


 そしてクタクタになったトコで。


「よしロック。今度は座って瞑想だ。体内を循環する魔力を感じ取り、自由自在に魔力を体内で動かせるようになることを目指すんだ。これにより、発揮できる魔力量が増え、しかも魔法を発動するまでの時間を大幅に短縮できる様になる」


 父さんの指示通り、俺は地面に座り込み、体内の魔力に意識を集中させる。

 これはゲームのファイナルクエストじゃ体感できなかった事。

 だから出来る様になるのは大変だと思ってたけど。


「あれ? 思ってたより簡単だ」


 俺は直ぐに体内の魔力の認識に成功する。

 言葉にするには難しいが、体の中にエネルギーの塊を感じる。

 その塊を右手に集中させたり、左手に集中させたり。

 あるいは小さく凝縮したり、大きくして体中に広げる。

 うん、慣れて来ると、これはこれで楽しいかも。


 そして体力が回復すると素振り再開。

 素振りの形が崩れそうになったらサーキットトレーニング。

 疲れ果てたら、瞑想で魔法能力を高めながら体力を回復させる、を繰り返す。

 3歳になって2日目は、こうして終わった。

 神経を、とんでもないレベルに発達させるコトを目指して。


 と言いたいが、まだ終わりじゃない。


「ロック。今日からこの世界のコトを、母さんから教えてもらえ。ゲームじゃないリアルのファイナルクエストを、な。まぁ夕食後の1時間程度で十分だけど」


 という事で、風呂に入って晩ごはんを食べた後。

 俺は母さんから色々な事を教えてもらうコトになった。


 いや、その前に聞きたい事が。


「ねえ母さん。どうしてこの世界はファイナルクエストそっくりなのかな?」


 明確な答えが返ってくるとは思っていない。

 でも何か判明している事があるかも。

 くらいのモノだったんだが。


「あ、それは神様が新しい世界を作らないといけなくなったんだけど、1から世界を作りあげるのは面倒くさいから、物凄く緻密な計算で構成されたファイナルクエストを、そのまま現実化したんだって。でもファイナルクエストをやり込んだプレーヤーの魂と縁がつながってしまってて、死んだらこの世界に転生するようになったのは計算外だったらしいわ」


 まさかの答えが返ってきた。


「転生者の中には神と対話できるまでレベルを上げた人がいるらしくてね。この世界じゃ誰でも知ってる事よ」


 そ、そうなんだ。

 でも面倒くさいからって、ぶっちゃけすぎじゃないですか、神様?

 とはいえ、俺は心の中でガッツポーズをとる。

 俺のプログラムをそのまま使ったのなら、間違いなく世界最強になれる。

 なにしろ俺しか知らないデータが山ほどあるのだから。


 もちろん解明されている事も沢山あるだろう。

 あれほどの数のゲーマーが、やり込みまくったのだから。


 でも、母さんの話によると。

 現在解明されているのは、俺がプログラムしたモノの1部だけみたい。

 まあ生涯を費やしても遊びきれないように俺が作ったのだから当然か。


 しかし俺が知っているのは、俺がプログラムした事だけ。

 歴代の転生者が、どんな文化を作りあげたか全く知らない。

 おっと、分からない事がまだあった。


「どのくらい前から、この世界に転生者が出現するようになったの?」


 そう。この世界がファイナルクエストそのものとしても。

 地球の人間が、この世界に転生するのは別の話しだと思……たんだけど。


「そうねぇ。神様がこの世界を作ったのは244年前らしいんだけど、その時かららしいわよ」

「244年前? どうしてそんな事が分かるの?」

「だってほら」


 母さんは壁のカレンダーを指さした。

 今まで気にしなかったけど、よく見たらそこには。

 創造歴244年、とハッキリ印刷されていた。

 つまり神様がこの世界を作ってから244年目ってコトなんだろな。

 ……印刷技術も確立されてたんだ。


 ま、それは置いといて、もっと大事な事を聞かなくちゃ。


「そんな前なの? ファイナルクエストが作られたのは数年前だった筈だけど」

「神様が転生に時間差をつけたからみたいよ」

「え!? じゃあボク、死んだと同時に転生したんじゃないんだ」


 そっか。

 じゃあもし後輩達が死んでたとして、そしてこの世界に転生してたとしても。

 この世界で巡り合う事は無いんだろうな。

 ……少し寂しいな。


「ファイナルクエストにのめり込んだゲーマーが全員転生したか分からないし、1度に転生したワケでもなさそうなの。ただ、どの時代にも数万人くらいは転生者がいるみたいよ」


 母さんはそう言うと、今日の勉強は終わりになった。

 もう1時間たったのか。

 そして俺は直ぐにベッドに潜り込む。


 なにしろ体は3歳児。

 しっかり寝ないと成長に悪い。

 そして次の日の朝。

 俺は目覚めと同時にステータスを確認する。


 ロック(転生者) 経験値 0

 職業    里山の民

 年齢    3

 レベル   1

 Hp    5(←4)

 ⅯP    4(←2)

 力     3(←2)

 耐久力   3(←2)

 魔力    3(←1)

 魔耐力   3(←1)

 知性    3(←1)

 速さ    3(←2)

 運     5

 攻撃力   6

 防御力   6

 魔法攻撃  6(3+3)

 魔防力   6(3+3)

 所持スキル 鑑定 マジックバック


 よしよし、順調に増えてるな。

 今日も修行、ガンバルぞ。




2023 オオネ サクヤⒸ

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