第二十五話 どこから出るでしょう?
『甲賀の薬草の知識』『甲賀の投擲玉』により入手した『分析』と『練成』。
これもチート能力だ。
『分析』は、あらゆる物の構成物質を解析する。
『錬成』は、あらゆる物を作り出し、強化できる。
つまり未知の物質でも『分析』によって、何で出来ているか分かる。
そして『錬成』でコピー出来る。
加えて『錬成』は、それ以上の物すら作り出せるスキルだ。
あるいは、その物質を強化出来る。
だから手持ちの武器や防具を強化できるようになったワケだ。
でも、もっと重要なのは。
手裏剣、爆水の呪符、火炎の呪符、轟雷の呪符も強化出来る事だ。
しかも大威徳明王撃、不動明王撃、金剛夜叉明王撃も強化できる。
もちろん投擲玉の強化も可能。
ちなみに2倍になら、何の代償の無しに強化できる。
だから、さっそく手裏剣や呪符、投擲玉を全て2倍に強化した。
でも、それだけじゃない。
『錬成』は、3倍から10倍まで強化可能なんだよね。
つまり甲賀のスキルは、伊賀のスキルとセットで超チートというワケ。
でも、3倍以上に強化する場合、ⅯPが必要。
3倍なら30ⅯP、10倍なら100ⅯPが必要となる。
なので、調子に乗って強化してたら、すぐⅯPが尽きてしまうんだけど。
《スキル『錬成』を手に入れた事により、ⅯPが3000、魔力が3000、魔耐力、知性が3000アップしました》
アナウンスが、更にそう告げたように魔力系のスキルがアップした。
でもⅯPが300増えたとしても、それでも強化できる数は限られている。
なので全部を強化するなんて無理。
でも、切り札として何個か強化しておくか。
いや、まず武器と防具を強化しておこう。
と言うワケで、ヤマセミロングと龍の戦衣を10倍に強化。
うわぁ……分かってたケド、攻撃力と防御力が跳ね上がったよ。
攻撃力33750って、完全に限界突破レベルだ。
というワケで、俺は凄く強くなった。
でも、まだ甲賀の里のイベントは終わりじゃない。
直ぐに次の家に向かう。
そこで待っていたのは。
「いひひひひひ。何の用かェ」
不気味なバ……個性的な老婆だった。
ここでのキーワードは。
「甲賀の技を見てみたくて」
これだ。
もちろん、この言葉以外じゃミニゲームは始まらない。
「そうかえ。殊勝な心掛けじゃな。ならばついて来るのじゃ」
老婆はそう言うと、家の裏庭へと俺達を案内した。
地面のあちこちには、直径1メートルほどの丸い影が20個。
見上げてみると、バルーンが20個、浮いていた。
これらの影は、このバルーンの影というワケだ。
そこで老婆は、クルンと振り返ると。
「よく見ておるのじゃぞ」
そう言って、スポンと自分の影に潜った。
と思ったら。
「これが甲賀の『影渡り』じゃ」
俺の影から老婆が頭を出した。
そしたまた影に沈み込み。
「次にワシが姿を現す場所を当ててみるんじゃ」
モカの影から頭を出して、そう言った。
ミニゲーム「どこから出るでしょう?」の開始だ。
出現場所は、20個の影のどれか。
連続で10回、当てないといけない。
かなりの無理ゲーなのだが。
「まずは1回目じゃ」
影から頭を出した老婆に。
「ああ、1回目成功だな」
俺は声をかけた。
老婆の目の前に、モカと一緒にしゃがみ込んで。
「ほう。なら2回目じゃ」
老婆は、再び影に沈んだ。
でも次の出現場所も分かってる。
俺がプログラムしたんだから。
というコトで。
「これで全部、成功だな」
俺が10回連続で老婆の出現場所を当てると。
「ようやったの」
老婆がニコリと笑い。
《スキル『影渡り』を手に入れました》
アナウンスの声と共に、新たなスキルを取得した。
スキル『影渡り』。
影から影へと、自由に移動できるスキルだ。
転移の魔法と違うのは、ⅯPを消費しない事。
気力の続く限り、何度でも使える便利なスキルだ。
そして次の家でのミニゲームはかくれんぼ。
難易度は低いミニゲームなんだけど、ひたすら面倒。
甲賀の里に隠れた鬼を見つけたら、つぎは俺とモカが隠れる番。
そして見つかったら鬼交代。
これを延々と繰り返すクソゲーだ。
他のミニゲームと違い、ひたすら忍耐を試されるゲームなのだが。
「きゃはははは!」
モカが、凄く楽しそうに村中を駆けずり回っている。
そういや、まだ5歳だったもんな。
捨て子だった事を考えたら、子供らしい遊びなんてした事なかったろう。
俺がプログラムしたんだから、さっさと終わらせる事は出来るんだ。
このさいだから、モカが飽きるまで見守る事にするか。
いやいや、見てるだけじゃスキルが貰えない。
しかたない、俺もかくれんぼに参加するか。
って、やってみると結構楽しい。
相手はゲームマスターの老人。
この老人が村のあらゆる所に隠れる。
タンスの中や畳の裏なんてザラ。
天井裏や隠し部屋、秘密の通路に隠れていたりする。
隠れ場所も俺がプログラムしたから、見つける事は不可能じゃない。
でも100か所の隠れ場所をプログラムした。
それを1つずつ確認していくのだから、簡単には見つからない。
そして鬼が交代になると、俺達は知恵を絞って隠れ場所を探す。
だがゲームマスターの老人も手ごわい。
どこに隠れても、必ず見つかってしまう。
でも、なんかすごく楽しい。
コントローラーを操作するのと、体を動かすのと、こんなに違うのか。
いや、モカと一緒だから童心に帰れて、楽しめたのかも。
答えは謎だが、俺とモカは日が暮れるまでかくれんぼに熱中した。
そして空に星が瞬き出したところで。
「かくれんぼクリアじゃ」
そう告げられ。
《スキル『五感強化』を手に入れました》
アナウンスと共に、新たなスキルが手に入った。
2023 オオネ サクヤⒸ




