第二十三話ミニゲーム 『薬草と毒草を探せ!』
レア・アラクネは結局21億5000万ゴルドになった。
「レベル99のレアモンスターで、こんなに綺麗な素材は初めてだ! 商品価値も高いぞ!」
とは、素材買取り責任者の言葉だ。
ちなみに『強手裏剣』で倒してたら、素材の損傷は、もっと大きかった筈。
打撃と斬撃で倒して良かった。
とにかくこれで俺のギルドカードチャージ金額は53億7586万4500ゴルド。
凄い大金だ。
モカくらい、死ぬまで養ってやれる。
でも、それじゃダメだ。
俺はモカの面倒を見る、と言った。
それは俺が養ってやる、という意味じゃない。
自分の力で自分の人生を歩めるようになるまで育てる。
それがモカの面倒を見る、という事だと思う。
具体的には。
「モカ。ボクと一緒に甲賀の里に行こう」
甲賀忍者の力を手に入れてもらう事にしよう。
ちょうど甲賀イベントにチャレンジするとこだったから好都合だ。
甲賀イベントなら戦闘力いらないし。
というコトで、モカと一緒に甲賀イベント挑戦だ。
でも、この甲賀イベントも、やっぱり隠しイベント。
沢山のポイントをクリアする必要がある。
そこで、まずは第1ポイント。
京の都の東の1番端の薬草店に入り。
「珍しい薬草はありませんか?」
そう店主に聞く。
「ほう。例えば、どのような?」
こう聞き返してくる店主に、こう答える。
「この世界に存在する、全ての薬草に興味があります」
「全てですか? そうなると、ウチで揃える事は難しいですな」
店主が、そう返してくるから、ここでキーワード。
「そうですか? この近くに全ての薬草が生えている場所があるハズですが」
「おや、ご存じでしたか。では、そこで必要な薬草をお求めになってはどうでしょうか?」
「分かりました、そうします。ところで、その場所ってドコなんでしょう」
「今日の都から東に2キロ歩いたところにある神社の奥になる集落です」
これで甲賀の里に関するイベントが発生した。
逆に言えば、この言葉を聞かないと、甲賀の里に行っても何も起こらない。
でも、これで甲賀の里に向かったらイベント失敗。
「あ、それって誰でも迎え入れてくれるんですか」
「いえ、この印籠を持つ者だけです。差し上げましょう」
そう、キーアイテム「甲賀の印籠」。
これが無いと、甲賀の里にいっても、やはりイベントが始まらない。
でも、これで本当にイベントスタート。
だから俺は。
「ありがとう」
甲賀の印籠を受け取ると。
「モカ、じゃあ行こうか」
「うん!」
モカと手をつないで、まずは神社に向かう。
そして神社から更に500メートルほど進むと、甲賀の里に到着だ。
20件ほど藁屋根の家が建っており、どの家にも小さな畑がある。
その畑を耕している、1人の老人。
この老人が甲賀の印籠を渡すべき相手だ。
もちろん他に人に渡したら、そこでイベントは失敗する。
そして、まだクリアすべきポイントは残っている。
「全ての薬草を手に入れたいのですが」
このキーワードを口にする必要がある。
「全てを手に入れる? そんな事、人の身で出来る事ではない」
すると老人は、こう返してくるから。
「では人にはできなくても、甲賀の忍者なら出来るのでは?」
こう答える。
「ふむ、ついてきなさい」
そして老人と共に、里の裏手の山に向かうと。
「この本に載っている全ての薬草を採取しなさい」
老人から1冊の本を手渡される。
いや、本というより原色図鑑。
4300ページあり、この世界に生息する全ての薬草が網羅されている。
この世界に存在する全ての毒草と共に。
「では、お借りします」
俺は図鑑を受け取ると、開いて中を見てみる。
含まれる成分、効果、利用法、採取の注意点、保存法、生息地……。
あらゆる情報が記載されている。
薬草と、そして毒草について。
この図鑑を見ながら、記載されている全ての植物を集める。
それが、このミニゲーム『薬草と毒草を探せ!』だ。
徹夜しないとクリア出来ない量をプログラムした。
そのくらいのボリュームのミニゲームだが、今はリアル。
1月以上かかるだろうな。
だから俺は。
「ここで宿泊できる場所はありますか?」
そう聞いてみた。
このミニゲーム。
1度スタートさせたら、里から出る事は出来ない。
里から出たら、その時点でイベントは失敗になる。
だから、もし宿泊できる場所がなかったら用意をしないといけない。
食料やテントなどだ。
でも心配いらなかった。
「空いている小屋があるから、そこで寝泊まりすればいい。1件だけだが食堂があるので、もしも希望するなら食事も用意してやるぞ。金は貰うがな」
しっかりとメニューが用意されていて、値段は500~1500ゴルド。
肉も野菜も豊富で、栄養満点の食事ばかりだ。
うん、これならモカの食事も心配いらないな。
「村にある温泉は300ゴルドで利用できるぞ。清潔の生活魔法も300ゴルドで請け負う」
それは有り難いけど、俺は1通りの生活魔法は取得してる。
飲み水を出現させる『ウォーター』、煮炊きに便利な『ファイア』。
そして体や食器などを綺麗に出来る『清潔』などだ。
でも温泉はありがたいな。
やっぱり湯に浸からないと綺麗になった気がしないんだよね。
ともかく、これで何の心配もなくイベントを開始できるな。
というコトで。
「じゃあ、さっそく薬草を探しに行きます」
俺はキーワードを口にし。
「うむ。頑張りなさい」
こうしてミニゲーム『薬草と毒草を探せ!』が開始された。
ルールは老人が言った通り、図鑑に載った植物を全て見つける。
それだけ。
戦闘力は必要ないから、モカでもクリアできるミニゲームだ。
時間はかかるだろうけど。
というワケで、俺はモカと一緒に薬草と毒草を探しまくる。
ちなみに裏山の広さは富士山くらい。
とんでもなく広い上に、世界中の植物が生えている。
薬草と毒草だけじゃなく。
つまり、図鑑に載ってる薬草と毒草を探すのは、簡単な作業じゃない。
覚悟はしてたものの、ホントに長期戦になりそうだ。
2023 オオネ サクヤⒸ




