第二百九話 じゃあ戻るか
魔王7人と魔将達が、俺達が倒した悪魔を再び生み出し。
そして悪魔の上位600は『浄玻璃の鏡』のスキルを得た。
行則は、そんな悪魔達を満足気に眺めると。
「こんでパンデモニウムはホンマに悪いヤツを、今まで以上に懲らしめるコトが出来るようになったワケやな。うん、エエ感じや」
そう呟きながら、自分が座っていた王座に断罪の剣5本を並べた。
そして行則は魔王と魔将、1人1人の目を見つめてから。
「この断罪の剣は、魔王と魔将に任せるさかい、お前等の判断で悪党に天罰を与えたらエエ」
と命令した。
が。
「ワシはオッサンと一緒に旅に出るさかい」
行則がそう付け加えたトコで、魔王と魔将が揃って騒ぎ出す。
「どういう事ですか!?」
「パンデモニウムの主は貴方なのですぞ!」
まあ、そりゃ驚くよな。
いきなりパンデモニウムの主が「出て行く」と言い出したんだから。
でも、もっと驚いたのはモカとヒカルちゃんだ。
「そないなコト、聞いてへんで!」
「ナニ考えてるんですか!?」
え? 俺?
もちろん驚きました。
だから俺も。
「ナンでそうなんねん?」
おもわず関西弁でツッコんでしまった。
そんな俺に行則が楽し気な笑みを浮かべる。
「かかかか、エエ反応や。ここまでウケるとは関西人冥利に尽きるわ」
「ウケとらんわ!」
更にツッコむ俺に、行則は更に笑みを深める。
「さすがオッサン、相変わらずツッコみ役の才能があるで」
「それはもうイイから、説明しろ」
「そないな冷たい返しもサイコーやで、オッサン!」
「お前な……」
俺は文句を言おうとしたが。
「ああ、エエなぁ。こないに笑ったんは261年ぶりや。魔神も悪くないけど仲間との他愛無い喋くりほど楽しいモンないわ」
行則の呟きに、文句を言う気が消え失せてしまった。
俺にとっては20年ぶりの再会だけど、行則にとっては261年ぶり。
その間、魔神として悪魔の頂点に立ち続けてたハズ。
つまり話す相手は魔神を敬う部下であって仲間じゃない。
心の底から笑い合うコトは、きっと無かったろう。
そんな行則の孤独の年月を思うと、何も言えなくなった。
あ、それはヒカルちゃんも同じか。
だからだろうな。
ヒカルちゃんも複雑な顔になってる。
でもモカが、そんなコトを知ってるワケがない。
「イクノリさん、本気でウチ等と旅するん気なんか?」
俺達の間に漂う微妙な空気など気にも留めず、行則にそう尋ねた。
「そしたらパンデモニウムはどないするん?」
「魔王も魔将も優秀やさかいな、ワシがおらへんでも何の問題もあらへん」
行則がそう言うなり。
「いや、そんな事……」
魔王達が反論しようとするが。
「ええか? 魔王も魔将も、転移くらい簡単に出来るやろ。やったら何時でもワシに報告出来るし、相談も出来る。せやったらワシがパンデモニウムにおらんとアカン理由は無いんちゃうか?」
『う……』
行則の言葉に、魔王も魔将も一瞬、言葉に詰まってしまう。
そこに行則が。
「それにワシはお前等ならナンの心配もいらんと信じとるさかいな。安心してパンデモニウムを留守にできるで」
更に、畳み掛けた。
この行則の言葉に。
『…………』
魔王も魔将も、完全に黙り込んでしまった。
これが噂に聞く「ほめ殺し」ってヤツなんだろな。
が、さすが魔王(?)。
直ぐに動揺から立ち直ると。
「何時でも伺う事が出来るのならばパンデモニウムに居られるのと同じ。ならば我らは今まで通り、職務に励む事にいたしましょう」
そう言って、全員が床に膝を突いた。
え? それでイイの?
マジで?
……まあコレは悪魔達の問題だし、俺が口出しするコトじゃないか。
それに、このコトは口に出す気は無いケド。
実は俺も、行則と再会できて嬉しかった。
バカバカしい掛け合いも楽しかった。
だから俺は。
「ほならオッサン。また楽しくやろうや」
そう言って行則が差し出した右拳に。
「ああ、楽しくいこう」
コンと俺の拳をぶつけたのだった。
そんな俺に、行則な満足そうに頷くと。
「モカちゃんも、ヒカルちゃんも宜しくな」
手をヒラヒラさせて、モカとヒカルちゃんに笑顔を向けた。
「ま、ロックにぃがソレでエエならウチに文句あらへん。ちゅうコトでイクノリさん、宜しく」
モカが屈託のない笑顔で答える横で。
「悪ノリは程々にしてくださいね」
ヒカルちゃんが諦めたような笑みで応えた。
うん、行則に何を言っても無駄って分かってるな。
なにしろ面白いと思ったら、我が道を行く男だから。
でも、とんでもないコトはするけどムチャなコトはしない。
周りがフォローできるギリギリの範囲内だ。
だからヒカルちゃんも、本気で嫌ってない。
というか、何だかんだ言っても楽しそう。
よし、ナンだか俺もノってきたぞ。
これなら楽しく、ファイナルクエストの世界を旅できそうだ。
などと俺が密かにワクワクしてると。
「それでもパンデモニウムの主は貴方様です。そして我々は永遠に貴方様の配下です。何かあれば、いつでも我々をお呼びください。パンデモニウムの悪魔全員を引き連れ、貴方様を護る盾となり、貴方様の敵を滅ぼす剣となりましょう」
魔王と魔将全員が行則の前に膝を突き、そう誓っていた。
行則は、そんな部下たちに。
「そうか、頼りにしてるで」
そう答えてほほ笑む。
行則の実力なら部下が必要になるコトなんて起きないだろう。
でも悪魔達の想いが嬉しかったのだろう。
頼りにしてる、という言葉を口にした。
やっぱり悪魔達の想いが嬉しかったんだろう。
って、行則の命令1つでパンデモニウムの全悪魔が参戦するワケだ。
これってよく考えたら、世界を征服できるくらいの戦力だよな。
う~~ん、チートだ。
なんて俺の考えを読んでみたいに。
「あのな、オッサン。オッサンもモカちゃんもヒカルちゃんも、パンデモニウムの戦力なんぞゴミ同然の戦闘力を持っとるんやからな」
行則がそう言ってきた。
そういやそうだった。
一気にステータスアップを果たしたから、今まで完全に忘れてた。
「せやさかい、ワシとの旅は、おっさんのリハビリにもってこいやと思うで。一気に上がり過ぎたステータスを使いこなす為の」
そうだな。
スキル『自主規制』があるから、ステータスに振り回される事はないだろう。
でもやっぱり自分の力。
自分の意志で使いこなせるなら、その方がイイに決まってる。
楽しい旅に、新しい目的が加わったな。
よし、目的も明確になったコトだし、そろそろ出発するかな。
というコトで俺は。
「じゃあ戻るか」
「うん!」
「はい!」
「よっしゃ!」
モカ、ヒカルちゃん、行則と共に、パンデモニウムを後にしたのだった。




