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   第二十一話  ホントに捨て子かよ!





「伊賀の試練のダンジョン」攻略。

 これにより俺は一気に強くなった。


 でも『忍者』強化イベントは、他にも用意してある。

 しかも、ここ京の都で発生するイベントが。

 だから、このまま他のイベントも攻略してしまおうかな。

 俺はワクワクしながら先を急ぐが、そこで。


「あ」


 路地裏から顔を出した、5歳くらいの女の子と目が合ってしまった。

 凄く可愛らしい顔をしてる。

 まるで天使みたいだ。


 と、俺が思わず足を止めてしまうと女の子はトトト、と俺の前に来て。

 ニパァ、と笑った。

 そのあまりにも無邪気な笑顔に、俺も思わず微笑み返す。


 でも、凄く汚いカッコしてるな。

 きっと貧しい暮らしをしてるんだろうな。


 ……まさか、捨て子じゃないよな。

 もし捨て子だったらどうしよう。

 見捨てるなんて後味が悪すぎるぞ。

 でも、かといって俺に小さな子の面倒なんてみれるワケがない。

 どうしよう……。


 ま、とりあえず鑑定してみるか。


 モカ     経験値 0

 職業   捨て子(忍者)

 年齢     5

 レベル    1

 Hp     4

 ⅯP    10

 力      1

 耐久力    1

 魔力     1

 魔耐力    1

 知性     1

 速さ     1

 運    500

 攻撃力    2(1+1)

 防御力    2(1+1)

 魔法攻撃   2(1+1)

 魔防力    2(1+1)

 所持スキル  なし


 モカって名前なのか。

 うん、ステータス凄く低い。

 ま、5歳なら当たり前か。


 でも、職業『捨て子』ってなんだ?

(忍者)ってあるから、大きくなったら忍者の職業を得る……のかな?


 ってか、ホントに捨て子かよ!

 どうしろって言うんだよ、コレ!

 とりあえず冒険者ギルドのギルドマスターの相談してみるか。


「おいで」


 俺がそう言うと、モカはニパッと笑って付いてきた。

 でも捨て子なら腹が減ってるんじゃないかな。

 と気が付いて、辺りを見回すと。


「お。串焼き肉か」


 串に刺した肉を焼いてる屋台を見つけた。

 今のモカは、かなり汚いカッコをしている。

 普通の飲食店だと、入店を断られるかも。

 だから屋台は好都合。


「3本ちょうだい」

「あいよ!」


 俺は串焼き肉を3本買うと、モカに差し出す。


「食うか?」

「うん!」


 目を輝かせるモカに串焼き肉を手渡すと。


「はぐはぐはぐはぐ」


 物凄い勢いで食べだした。


 どのくらい食べてなかったんだろう。

 こんな可愛らしい子を捨てるなんて、酷い親がいたモンだ!

 などとムカムカしながら歩いていると、いつの間にかギルドに着いてた。


 さっそく冒険者ギルドに入ってギルドマスターのグラッグさんを探す。

 あ、いた。

 カウンターで受付の女の人と、なにか話している。


「グラッグさん、相談があるんですけど!」


 俺は、さっそくグラッグさんに駆け寄ると。


「捨て子を見つけたんですかど、どうしたらイイんでしょう?」


 そう聞いてみた。

 そんな俺に。


「まあ、落ち着け。まずは、その子をキレイにしてやるほうが先だ」


 グラッグさんは、そういうと。


「クリーン」


 清潔の生活魔法を唱えた。

 と同時にモカの体から汚れが消え、服まで清潔になった。

 まあ服自体がボロボロなのは変わらないが。


 しかし失敗だったな。

 俺も清潔の生活魔法は習得している。

 だから会ったトキに、直ぐキレイにしてあげれば良かったんだよな。

 今まで使わなかったから、スッカリ忘れてた。

 と、そこでグラッグさんが、俺に聞いてくる。


「で、見つけた捨て子をどうしたらイイか、って相談なんだよな?」

「はい」


 頷く俺に、グラッグさんが顔を曇らせた。


「教会が運営する孤児院に預けるしかないだろうな。運が良ければ金持ちの家庭に貰われていくが、大半の子供は12歳までに働き口を見つけて孤児院を出ないといけない。でも『オマエの職業は農夫だから農夫になれ』と言われても、もっと稼げる職業を目指すってヤツもいる。だから一獲千金を夢見て冒険者になる子供の方が多い。で、最初はE級の依頼で何とか食つなぐ」


 そしてグラッグさんの顔が、更に曇る。


「で、だ。ギルドも未熟な冒険者に危険な依頼を仲介したりしないんだが、モンスターの素材は何時でも買い取りしてる。だから実力以上のモンスターに挑んで、命を落とすヤツは後を絶たないんだ」


 なるほど。

「ドブさらい」「猫探し」「薬草採取」「雑用」

 駆け出し冒険者の鉄板だ。

 苦労の割に実入りが少ないが、最低眼の生活は出来る。


 逆に言えば、最低限の生活しか出来ない仕事ばかり。

 もっと金になるモンスターを狙うのも自然な流れだ。

 しかし、素人が想像するほどモンスターを倒すのは簡単じゃない。

 ひょっとしたら不意打ちなら倒せる、と考えたのかも。


 でもモンスターの殆どは、気配に敏感だ。

 そんな察知能力に優れたモンスターを不意打ちで倒す。

 駆け出しの冒険者に出来る事じゃない。

 でも、それが分からないから駆け出しなのだ。


 そして無茶のツケは自分の命で払う事になる。

 しかし、そんな無茶を強行する人を笑う気にはなれない。

 リアルで底辺を這いずる者の気持ちなど、俺に分かる筈なんか無いのだから。

 転生者で、最強へのルートを知り尽くしている俺には。







2023 オオネ サクヤⒸ

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