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   第二百五話  ぶもぉおおおおおおおおお





 行則の希望で作られた5本の短剣=断罪の剣。

 その何となく物騒な感じのする短剣を見て、モカが行則に尋ねる。


「で、イクノリさん。それがナンの役に立つん?」

「ふ。ま、それは後のお楽しみ、ちゅうヤツや」


 行則は黒い笑みを浮かべてから、オーディンと小人に頭を下げた。


「おおきに。大事に使わせてもらうわ」

「礼を言われるのは悪い気分ではないが、効果を確かめなくて良いのか?」


 オーディンの質問に行則はニィッと笑う。


「北欧神話の最高神が用意してくれたモンや、信用しとるで」

「そうか。では、そろそろ本当に帰るとするか」


 そう言って消えるオーディンに、行則はもう1度、声を掛ける。


「ホンマ、おおきに!」


 そして行則は千手観音に向き直る。


「千手観音はんも、おおきにな。ワシはワシのやり方をするけど、千手観音はんが言うように、悪人も救えたらエエとは思っとるで。無理やとも思っとるけど」

「はい、貴方はそれで良いと思いますよ。では、そろそろ私達も、お暇する事にしましょうか」


 そう言うと、千手観音は消えていった。

 明王と天部衆を引き連れて。


 と同時に周囲の様子が一変。

 俺達はパンデモニウムの王座の間に戻っていたのだった。


「ふう。なんや家に帰って来た、ゆう感じやな。留守してたんは、ちょっとの間やのに」


 そう呟く行則に、モカが興味津々の視線を向ける。


「で、イクノリさん。何時になったら、その断罪の剣ちゅうたかいな? その短剣の使い方を見してくれるん?」

「そないに焦らんでも、直ぐに見したるがな」


 行則は仕方ないな、と言いながらも楽し気な目で断罪の剣を掲げると。


「ほならさっそく、断罪の剣のお披露目や。シッカリその目で確かめてや。ほならいくでェ!」


 そう言ってから、行則はドリエーツに鋭い目を向けた。


「ドリエーツ。お前、前世の記憶をシッカリ持っとるんやったな? そしたら、お前等を酷い目に遭わせたヤツ等の国に儂を案内できるわな?」

「は。アイツ等から受けた仕打ち、片時も忘れた事はございませんので」

「ほうか。ならワシ等を案内してくれるか?」

「御意」


 ドリエーツは、そう答えるなり転送を発動したんだろう。

 俺、モカ、ヒカルちゃん、行則、魔王達は見知らぬ土地に立っていた。


「ここが、かつて私の村があった土地です」


 ドリエーツがそう言って指さした先は、荒野が広がっているだけ。

 きっと村が滅ぼされてから、かなりの年月が流れたのだろう。

 村だった面影は失われていた。


 が、良く見たら廃材を積み上げたダケの様な小屋が点在している。

 どうやらここで生活している人間がいるみたいだ。

 そんな荒廃しきった故郷を前に、ドリエーツが硬い声で続ける。


「ここで暮らしているのは、生きていけぬ程の重税を課せられて、仕方なく土地を離れた者、あるいは田畑を焼かれ、命からがら逃げだした者達でしょう。こんな事を繰り返していたら、国は亡んでしまうでしょうが、侵略と略奪によって食料を奪い、国を維持しているのです。民にとって地獄のような場所です」

「なるほどな。そら断罪の剣の試し斬りに持ってこいやわ」


 ギリッと歯を食いしばるドリエーツに、行則は凄みのある笑みを浮かべると。


「ほならドリエーツ。その非道を行ったゴミを10人ばかり、ここに連れて来てくれるか?」


 そう命令を下した。


 断罪の剣、どんな能力を持っているのか、まだ誰も知らない。

 しかし悪党どもの身の上に不幸な事が起きるのは間違いなさそうだ。

 もちろんドリエーツも、そう感じているんだろう。


「御意」


 ドリエーツも凄みのある笑みを浮かべてから姿を消した。

 その、数秒後。


「民を虐殺していた部隊がいたので、まとめて連れてきました」


 ドリエーツは20人ほどの兵士を連れて現れた。

 どの兵も両手を縄で縛られてガタガタと震えている。

 さすが魔将、只の兵士を拘束するなど朝飯前らしい。


「少々、多過ぎましたか? であれば、余分なゴミは私が処理します」

『ひ!』


 処理します、というドリエーツの言葉に、兵士達は真っ青になるが。


「ああ、なんぼ多ても問題ないさかい、気にせんでエエで。ちゅうか、むしろ丁度エエわ。多ければ多いほど、豊かになるさかい」


 行則は軽い口調でそう言うと、1人の兵士の前に立つ。

 そして、その兵士をジロリと睨むと。


「ほう。お前、前世でも、何の罪も無い人々を虐殺しとるな。しかも、今生でも虐殺を繰り返しとる。こら更生の見込み無しや」


 スキル『浄玻璃の鏡』を春同させたのだろう。

 兵士の前世の行いと今生の行いを口にすると。


「断罪の剣の試し斬りに相応しいクズや。試し斬り第一号はお前に決まりや、しかし、どの断罪の剣を使ぉたらエエか、迷うトコやな。どれにしよ? ま、取り敢えず断罪の剣・ビーフにしとこか」


 ザシュ。


 断罪の剣を物凄い速さで引き抜き、兵士の心臓に突き刺した。


『ひぃ!』


 まさかいきなり処刑されるとは思っていなかったのだろう。

 残りの兵士達が一斉に悲鳴を上げるが、刺された本人は。


「あ、あれ? 痛くない?」


 不思議そうな目で、刺された胸を見つめた。

 そんな兵士から断罪の剣を引き抜きながら、行則が黒い笑みを浮かべる。


「当たり前やろ。この断罪の剣は敵を殺すモンや無い。ちゅうか刺された相手を不老不死にする効果があるんや」

「不老不死!? 本当に、そんな事が!?」


 行則の言葉に刺された兵士が期待に目を輝かせるが、次の瞬間。


「ぶも?」


 刺された兵士は、奇妙な声を上げると。


「ぶもぉおおおおおお!?」


 その姿は牛に変化した。


「ぶも? ぶも? ぶもも!?」


 何かを訴えかける元兵士に、行則が悪魔の笑みで応える。


「お前はこれから困った人達の食材になるんや。ああ、心配せぇへんでもエエ。不老不死に加えて超再拘束生能力も授かっとるさかい、どれほど肉を切り取られても、切り取られた肉はすぐ再生するさかい死なへん。ちゅうか……」


 行則は、話の途中で手刀を振り上げると、そのまま牛の首を斬り落とした。

 これで牛=元兵士は死んだ。

 誰もがそう思ったが。


「な、不老不死やさかい、首を斬り落とされても、死なへんのや。しかも超高速再生の力のお陰で、あっと言う間に体も元通りや」


 行則が言い終わる前に、牛の首からギュルッと体が生えて来た。


「ぶもぉ!?」


 怯えた目を向ける牛=元兵士に、行則が冷たい声で告げる。


「今までの悪事のツケや。永遠に困った人々の飢えを満たす食材として生きていくんやな」

「ぶもぉおおおおおおおおお」


 悲壮な鳴き声が響き渡るなか。


「ふふん」


 行則は悪魔の笑みを浮かべたままだった。











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