第百九十九話 はっけよぉいィィ……のこったァァァァ!
オーディンはユックリと消えていった。
と、これで話は一区切り、となるハズだったんだけど。
「ちょっと待ったァァァァ!!!」
いきなり声が響き渡り。
ズッドォォォン!
隕石が落下したような衝撃が走った。
そして衝撃が作り出したクレーターの中心でヒーローポーズを決めてるのは。
「帝釈天?」
俺がプログラムした通りの姿の帝釈天だった。
しかし物凄いパワーを感じる。
見た目は俺のプログラム通りだけど、中身は別物みたいだ。
まあ、帝釈天のステータスなんかプログラムした覚えはないんだけど。
でも、ナンで帝釈天がココに?
なんて俺が、考え込んでいると。
ドォオオオン! × 4
更に4人の人影が落下してきて。
「「「「我ら帝釈天様の忠実なる配下、四天王!」」」」
フォーメーションポーズを決めた。
宝剣を手にしているのが持国天。
筆と巻物を持っているのが増長天。
三叉戟を装備しているのが広目天。
宝塔を掲げ、宝棒を手にしているのが多聞天(毘沙門天)
全員武神なので、甲冑を身に付けている。
しかし、妙に暑苦しい連中だな。
行き過ぎた体育会系のノリを感じる。
という俺の悪い予感は的中。
「我々はァァァァ! 世界の中心須弥山を守護し武神なりィィィィ!」
「「「「ウォー―――ス!」」」」
帝釈天が声を張り上げ、四天王が野太い声で気合を入れた。
「その1柱の武神としてェェェェェェ! 己を高めるべく出稽古に参ったァァァァァァァ! 是非とも我々と手合わせ願いたいィィィィィィ!」
「「「「ウー――ス!」」」」
うん、体育会系というより応援団系かな。
どっちにしても、無駄に暑苦しいコトに変わりないケド。
って今、ナンとおっしゃいました?
「出稽古?」
思わず呟いた俺に、帝釈天が、更に声を張り上げる。
「その通りィィィィィィィィィィ! さァァ、尋常に勝負ゥゥゥゥゥゥゥ!」
テンション高過ぎ。
ってか昔、こんな話し方するキャラを見た気が。
ま、それはそれとして、俺は消えかかってるオーディンに視線を向ける。
「さっき言っていた戦闘狂って、このコトですか?」
「ジパングの神々が出現するとは思ってなかったが、まぁそういう事だな」
オーディンは苦笑すると、再び姿を完全に現し。
「まさか、こんなに速くやって来るとはな」
苦笑を帝釈天に向けた。
「帝釈天よ、ロック達が最強の力を得たのは、ついさっきだというのに、もう来おったのか」
「おお、オーディン殿ではないかァ! 久しぶりなのであるゥ!」
「帝釈天殿も変わりないようで、何よりだ。しかし、よく気付いたものだな、この者達が神を超える力を得た事に」
「星を粉砕できる程の力がいきなり出現したのであるゥゥゥ! それに気付かぬモノなど神ではないのであるゥゥゥ!」
個性的な話し方の帝釈天に、オーディンが念を押す。
「ならば分かっておろう。絶対に勝てぬ事を。それでも手合わせを望むのか?」
「当たり前であるゥゥゥ! 己よりも強い存在と戦うゥゥゥ! これ以上の稽古などォォォォ、存在しないのであるゥゥゥゥ!」
言い切る帝釈天に、オーディンが武神の顔で頷く。
「さすが須弥山の守護神。戦闘力の差が圧倒的であろうと、その闘志に欠片の陰りも無いか。見事だ。では存分に味わうが良い、想像を絶する戦闘力を」
「もちろんなのであるゥゥゥ!」
帝釈天は、そう言い切ると。
「では、出稽古、お願いするのであるゥゥゥ!」
俺達に向かって頭を下げた。
うん、さすが神様。
いきなり襲い掛かってくるようなコトはしないらしい。
でも、断られるとも思ってないみたいだ。
さて、どうしよう?
俺としては、何の恨みも無い神様を戦うのは、気が乗らないんだけど。
なんて俺と違い。
「よっしゃ、ウチが相手になるで!」
モカはやる気満々だった。
「せやけど勝負が終わったら血を数滴、貰うで! それでエエか?」
「承知したァァァ!」
というコトで。
「では持国天よォォォォ! 胸を貸してもらうのであるゥゥゥゥ!」
「ウォー――ス!」
モカと持国天との稽古が決定した。
「持国天とはァァァ! 国を支える者という意味ィィィィ! 力では四天王最強なのであるゥゥゥゥ!」
ワザワザ手の内を晒す帝釈天に、モカが質問する。
「自慢しとるんかいな? それとも力で勝負せえ、ちゅうとんかいな?」
「もちろん力勝負を挑んでいるのであるゥゥゥゥ! 己の得意とする分野で己以上の相手と戦うゥゥゥ! 実に得難い体験なのであるゥゥゥゥ!」
「そんなら力比べや。やり方は任せるさかい、思いっきりやろや」
ニッと笑うモカに、持国天も笑みで返す。
「ではジパング古来からの格闘技ィィィ! 相撲で勝負を願いたいィィィ!」
「受けた!」
モカが答えると同時に、床に土俵が出現した。
と同時に、周囲の風景も一変。
見渡す限り、椅子造りの床が広がる空間に様変わりした。
きっと神との戦いでパンデモニウムが壊れないように配慮したんだろうな。
「へえ。いきなりこないなモンを創り出すなんて、さすが神様やな」
「大した事ではないのであるゥゥ! では行事は私が勤めるのであるゥゥ! では両人ンンン、土俵に上がるのであるゥゥゥゥ!」
帝釈天の言葉通り、モカと持国天が土俵に上がる。
分かっていたけど、凄い体格差だ。
モカの頭は、持国天の胸にも届いてない。
しかしモカは負けるなんて欠片も思ってないらしい。
「さっさとやろや」
帝釈天を急かしている。
ま、ステータス敵に負ける筈がないんだけど。
おっと、念の為、確認しておかないと。
「モカ、『天上天下万物滅殺』はオフにしてるんだろうな?」
「へ? あ、忘れとった! へへ、今オフにしたさかい、もう大丈夫や」
ブイッとサインを送ってくるモカに、俺は密かにため息をつく。
もう少しで神様を滅してしまうトコだったぜ。
しかし帝釈天は気にしてもないらしい。
さっと軍配を構えると。
「はっけよぉいィィ……のこったァァァァ!」
相撲勝負を開始した。
と同時に。
「むん!」
持国天がモカに組み付く。
体格差を考えたら、これで勝負ありと誰もが思う光景だったが。
「ふうん、これが今のウチの力なんか。なかなかのモンやな」
そう呟いたモカは1ミリも動いてなかった。
そして。
「むぅうううううううん!」
顔を真っ赤にして力む持国天を、モカは。
「よっと」
ビックリするくらい簡単に、投げ飛ばしたのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




