第百九十五話 おっちゃん、ナニモンなん?
攻撃力 5該
特殊能力 投擲必中(投げたら必ず標的に命中する)
自動帰還(標的を貫いた後、自動的に手元に戻る)
これがグングニルを鑑定した結果だ。
ってこの攻撃力、マジで危なかった。
もしもフェンリルが先に投擲必中を放ってたとしたら。
俺はグングニルに刺し貫かれて死んでただろう。
しかし魔力を込めるのに時間がかかり過ぎた。
使いこなす為に必要な魔力が多過ぎたからだからだろう。
だから俺の方が、早く攻撃するコトが出来たんだけど。
結局フェンリルは、使いこなせない武器に頼ったから負けたワケだ。
しかしグングニルが物凄く強力な武器であるコトには変わりない。
イイ武器が手に入った! と喜んでおこう。
さてと、それじゃ10倍に強化して無限の鎧と融合練成するか。
というワケで俺が装備している戦闘鎧=無限の鎧P型を強化。
無限の鎧PG型
攻撃力 55該
防御力 55該
特殊能力 万斬自在 10里刃 武具顕現
宇宙樹の泉=30秒でHPⅯP全回復
投擲必中=投げたら必ず標的に命中する
自動帰還=標的を貫いた後、自動的に手元に戻る
を手に入れた。
よし、これで基礎攻撃力に相応しい武具が手に入ったぜ。
と俺が喜んでいると。
「ロックにぃ。アレなんやろ?」
モカがフェンリルの残骸を指さした。
「ナンや光が集まっとるケド、大丈夫なんやろか?」
「光が?」
モカに言われて、俺が細切れになったファンリルに目を向けると。
ヒィイイイイイイイイイイ!
目が痛くなる程の輝きを放つ光の柱が立ち昇るトコだった。
そして光の柱は一気に収束し、最後に爆発的に光を放った後。
「ふむ。フェンリルの体内から脱出できたか」
そこには1人の男が立っていた。
でも普通の男である筈が無い。
なにしろフェンリルの残骸から発生したのだから。
というか、心当たりは1つしかない。
フェンリルがグングニルと共に飲み込んだ神。
つまり北欧神話の主神であるオーディンだ。
同時に魔術と知識の神であり、戦いの神でもあり、死の神でもある。
片目が無いのは、知恵の泉の水を飲む代償に捧げたから。
ツバの広い帽子を被っているのは、その事を隠す為らしい。
しかし、これからどうしたモンだろう?
確かに俺は、フェンリルのコトをプログラムした。
でもフェンリルが呑み込んだオーディンのコトは何もプログラムしてない。
HP、ⅯP、攻撃力、防御力は勿論、性格や特殊能力なども。
だから俺は、目の前にいるオーディンについて何も知らない。
まあ、北欧神話にまつわるミニゲームは幾つもプログラムした。
ダンジョンやイベント、色々なショートストーリーも。
それらの情報から、このオーディンは生み出されたのかも。
しかし問題なのは、そのオーディンが目の前にいるコト。
そして北欧神話の最高神に、どう接したらイイか全然分からないコトだな。
マジで、どうしよう?
と困ってたら。
「おっちゃん、ナニモンなん?」
モカが声を上げた。
疑問を素直に口にする子供ような、何の躊躇いも無い声で。
「ものゴッツい凄い力を持っとるみたいやけど……いんや、神々しいと言ってもエエくらいの、なんや澄んだ力を感じるさかい、只モンやないとは思うケド」
このモカの発言に、俺は体の力を抜いて重心を安定させる。
オーディンが襲い掛かってきた時の為に、だ。
何度も言ったが、俺はオーディンをプログラムしてない。
モカの無礼とも言える発言に、オーディンが激怒しても不思議じゃない。
そうなったらオーディンとの戦いに突入するコトになるだろう。
モカを守る為に。
さあ、どうでるオーディン?
場合よっては最高神が相手だろうと戦ってやる。
『切り札』を全開にして。
と俺が覚悟を決めたトコで。
「ふはははは、面白い嬢ちゃんだな。ふははははははは」
オーディンが、いきなり笑い出した。
「しかし、神々しい澄んだ力か。ふむ、そう言われて悪い気はしないな。ふははははははは!」
そしてオーディンは、俺に向き直ると。
「フェンリルを倒してくれたのは其方らしいな。礼を言うぞ」
穏やかな笑みを浮かべた。
「あのままだったら未来永劫、儂はフェンリルの体内の異空間に閉じ込められたままだっただろう。それを考えると何度礼を言っても足りない。何でも望みを口にするが良い。叶えてやるぞ」
いや、そんな必要はない。
ファイナルクエストの世界を楽しみながら必要なモノを手に入れて行く。
俺はそう答えようとしたんだけど。
「ほならステータスをうんとアップさせて、武器も強化してぇな!」
俺が答えるより早く、モカがオーディンにそう頼み込んだ。
「今回のコトで、ウチは思い知ったんや。もっと強ぉならな、大事な人を失ってまうかもしれへん、てな。そんなのはイヤや。せやさかい、どんな強敵が襲い掛かってきても返り討ちに出来る力が欲しいんや! どんな敵も撃ち滅ぼせる武器が欲しいんや!」
フェンリルの急襲は、モカにとって大変なコトだったらしい。
フェンリルの凄いステータスも。
それを見てモカは思い知ったのだろう。
俺達は無敵じゃないコトを。
敵が俺達より強かったら、あっさりと命を失うコトを。
そして今のモカじゃ、それを防ぐコトなど出来ないコトを。
だから強さを欲したんだろう。
俺やヒカルちゃんを守れる強さを。
実にモカらしい考えだ。
でも、そんなにモカに大切に思われてたのか。
ちょっと感動。
ケド、ちょっと複雑。
俺はモカ守られるより護る側でいたい。
そして、どんな時も妹を護れる、強い兄でいたい。
ならつまらない拘りなど捨てて、さっさと『切り札』を使うべきか?
なんて俺の心の中の迷いなんかカンケ―無く。
「その意気や良し!」
オーディンはカカカ、と笑うと、
「その望み、叶えよう」
モカに、そう言い渡した。
そしてオーディンは俺に真剣な眼差しを向けると。
「ファイナルクエストを作りし者よ。其方には無用かもしれぬが、儂に出来る最大限の事をしておこう。其方の望み通り、この兄想いの妹を護れるようにな。ついでにそちらの友人も強化しておくか」
そう言って、パチンと指を鳴らした。
2023 オオネ サクヤⒸ




