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   第百八十七話  この程度で倒されたと思われるとは心外です





「ワシは正面から刀を振るう! 色欲は魂魄攻撃で敵をけん制! 暴食と怠惰は敵が隙を見せたら、すぐさま攻撃!」


 憤怒は指示を飛ばすと同時に、ヒカルちゃんに斬りかかって来た。

 憤怒の攻撃力は1京6000兆。

 パンデモニウムの護り刀の攻撃力は5京。

 つまり憤怒が放った斬撃の攻撃力は6京6000。

 これは防御力2京8000兆のヒカルちゃんでは、耐えられない攻撃だ。


 しかしそれは、まともに食らったら、の話。


「当たりません!」


 ヒカルちゃんは華麗に憤怒の斬撃を躱してみせた。

 しかし避けたヒカルちゃんに。


「ひょあっ!」


 憤怒の指示通り、怠惰が拳を打ち込んできた。

 どうやら怠惰は、打撃攻撃が専門らしい。


 が、ヒカルちゃんは。


「余裕です!」


 流れるような動きで、怠惰の拳を躱した。


 正直なトコ、怠惰の打撃は達人の域と言える。

 SSS級冒険者でも瞬殺できるレベルだ。

 けどヒカルちゃんの動きは、怠惰よりも上。 

 怠惰がどれほど攻撃しても、ヒカルちゃんに攻撃は当たらないだろう。


 が、それは敵が怠惰だけだったら。

 怠惰の攻撃の合間を縫って、暴食がヒカルちゃんの後ろに回り込む。

 しかし暴食は攻撃する前に。


「させません!」


 ヒカルちゃんの蹴りを食らって、愉快なほど吹き飛んだ。

 ついでにいうと色欲もヒカルちゃんに魂魄攻撃を仕掛けているが。


「ふん」


 何のダメージも無いのでヒカルちゃんは無視。

 ヒカルちゃんの動きは、滑らかで力強いままだ。

 しかし怠惰と色欲の攻撃は、単なるフェイントだったらしい。


「きぇええええええええ!」


 憤怒が今までとは桁違いの気合を込めて斬りかかってきた。

 防御も攻撃後の事も、何一つ考えない、全身全霊を込めた斬撃だ。

 しかし。


「まだまだですね」


 ヒカルちゃんは、パンデモニウムの護り刀の側面に剣を当てると。


 シャィン。


 斬撃を自分に当たらない方向に、柔らかく逸らした。

 これが力で弾き飛ばしたのなら、憤怒は踏み留まっただろう。

 しかし全力の攻撃を柔らかく逸らされた憤怒は。


「うおッ!?」


 バランスを崩して、いわゆる「おっとっと」の状態に。


「えい!」


 そこを狙って放たれたヒカルちゃんの蹴りは、完璧に憤怒の顎を捕え。


「かふッ!」


 衝撃によって脳を揺らされた憤怒は意識を失い、その場に崩れ落ちた。

 そして魔王最強の攻撃力を持つ憤怒が倒されたコトにより。


「な!?」

「まさか憤怒が!?」


 色欲と怠惰が、思わず硬直する。

 もちろん、こんなチャンスをヒカルちゃんが見逃すハズがない。


「や!」


 カコン! カコン!


 迷うコトなく色欲と怠惰の顎に拳を放ち、意識を刈り取った。

 そしてヒカルちゃんは俺とモカに視線を向けると。


「これで残りは2匹だけですね」


 そう言ってほほ笑んだ。

 が、その瞬間。


「敵に背を向けるとは愚か者め!」


 暴食がヒカルちゃんに向かって、蛇の腕を伸ばした。

 仮に、そのまま蛇が噛み付いて来てもヒカルちゃんはノーダメージだったが。


 グワッ!


 暴食の右腕の蛇が、上あごが天に届くほどに巨大化。


 ばくん。


 ヒカルちゃんを飲み込んでしまった。


「な、なんやと!?」


 あまりにも予想外のコトが起こって目を見開くモカを、暴食が嘲笑う。


「ふははははははは、油断だったな! オレの右腕はどんな物も飲み込み、そして消化するだ! これでコイツはファイナルクエストから消滅したぞ!」


 この予想外の状況に、モカが今までに無いほど焦った声を上げる。


「ロ、ロ、ロックにぃ! ヒカルちゃん、デカい蛇に食われたもうたで! 今すぐあの蛇をブチ殺して、ヒカルちゃんを助け出さな!」


 が、モカが叫び終わる前に。


 シュン。


 微かな斬撃音が響き。


 ばかぁ。


 暴食の蛇が真っ二つになった。

 そして。


「な!?」


 驚きのあまり、顔を引きつらせて硬直する暴食の顔を。


 バキャッ!


 切り裂かれた蛇から、涼しい顔で出てきたヒカルちゃんの拳が襲った。

 その1発で暴食は。


「へぶッ!」


 何度もバウンドしながら転がって行くと。


「化け物にも程がある……」


 震える声で呟いてから、完全に気を失った。

 そしてヒカルちゃんは、ピクリとも動かなくなった暴食を見下ろすと。


「この程度で倒されたと思われるとは心外です」


 そう口にしてから、傲慢に声を掛ける。


「これで残ったのはアナタ1人になりました。で、まだ戦いますか? それとも降伏しますか? あ、その場合、血を3滴ほど貰いますけど」


 このヒカルちゃんの提案を。


「ふん」


 傲慢は鼻で笑うと。


「確かに魔王ナンバーワンの攻撃力を持つのは憤怒だ。しかし最強の魔王は、この我なのだ」


 引き抜いた剣を、ビシッとヒカルちゃんに突き付けた。

 が、傲慢が言ったコトが、モカには良く分からなかったらしい。


「ナンバーワンの攻撃力を持っとるんは憤怒やけど、最強なんは自分やて? コイツ、ナニ言うとるんや?」


 すかさずモカがツッコむ。


「憤怒の攻撃力が1番強いんやったら、魔王最強なんは憤怒ちゃうん?」


 そんなモカを、憤怒が嘲笑う。


「我の本体は、別の次元にある。だから、この体を幾ら攻撃しても、我が本体にダメージを当たえる事は出来ぬ。だから憤怒と我が戦えば、憤怒は我に傷一つ付ける事が出来ず、一方的に我が攻撃を受けて敗れる。だから攻撃力が1番強いのは憤怒だが、戦って1番強いのは我、という事なのだ」


 そして傲慢は、勝ち誇った眼を俺達に向ける。


「つまりキサマ等も、幾ら攻撃しようとも、我を倒す事は出来ぬのだ!」











2023 オオネ サクヤⒸ

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