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   第百八十二話  どうせ勝てないのなら一騎打ちにて果てたい





 両手両足を失ったのに、まだ心は折れてないらしい。


「おのれぇ!」

「く、屈辱!」

「これで買ったと思うなよ!」


 俺を睨みつけた魔将達の目からは、まだ戦う意志は失われていなかった。


 ま、そんなコトはどうでもいい。

 魔将達の血を舐めて回ると、累計ステータスは3000兆に達した。

 これは俺やモカの基礎攻撃力の1割を遥かに超えた数値だ。

 だから俺もモカもステータスアップ。

 HP・ⅯP・力・耐久力・魔力・知性・速さが3000兆アップした。

 結果。


 ロック

 HP       1京2000兆

 ⅯP       1京2000兆

 攻撃力      4京7000兆(基礎攻撃力 2京1000兆)

 防御力      4京7000兆(基礎防御力 2京1000兆)

 装備 無限の鎧(攻撃力・防御力 2京)

 (特殊能力 万斬自在 10里刃 武具顕現

 宇宙樹の泉=30秒でHPⅯP全回復


  モカ

 HP     7000兆

 ⅯP     7000兆

 攻撃力  2京2900兆(基礎攻撃力 1京8400兆)

 防御力  2京2900兆(基礎防御力 1京8400兆)


 と、俺とモカのステータスが大幅アップした。


 そして3000兆は、ヒカルちゃんの攻撃力の1割を超えてるから。


 ヤマタノオロチ(転生者 ロックの従魔)

 Lv     9500兆

 HP   1京3000兆

 ⅯP   1京3000兆

 攻撃力  2京8000兆

 防御力  2京8000兆


 ヒカルちゃんもステータスアップを果たしてた。


「でもヒカルちゃんのステータスアップ値、ウチ等の半分なんは不公平やな」


 モカが言ったように、俺達のHPとⅯPにプラスされたのは3000兆。

 そして力・耐久力・速さも、それぞれ3000兆アップしてる。

 だから攻撃力(力+速さ)は6000兆アップだ。

 もちろん防御力(力+耐久力)も6000兆アップ。

 つまりアップした数値は、ヒカルちゃんの2倍だ。


「なんやゴメンな、ヒカルちゃん」


 申し訳なさそうなモカにヒカルちゃんが首を横に振る。


「本来『ステータス捕食』はモンスター専門のスキル。だから人間がこのスキルの恩恵を受けるなんて想定外なんです。だからワタシのアップ値が低いんじゃなくてトモキ先輩とモカちゃんのアップ率が高すぎるダケなんですよ」


 気にするそぶりの無いヒカルちゃんの手を、モカがギュッと握る。


「手に入れた攻撃力アップと防御力アップのアイテムは全部ヒカルちゃんに渡すさかい、今は我慢しといてな!」

「ま、気にしてませんけど、モカちゃんの気持ちは有り難く頂いておきますね」

「気にせぇへんでも、期待はしといてぇな」

「はい、なら素直に期待して待ってますね。モカちゃん、ありがとう」

「えへ」

「ふふ」


 うん、可愛らしい女の子が笑い合ってる光景ってイイな。

 マジでこのまま、2人を眺めていたいと思う。

 けど、そうも言ってられない。

 魔将全員の手足が元通りになりつつあるのだから。


 って、やっぱ再生するよな。

 なにしろ魔将達は限界突破Lv3クラス。

『超高速再生』みたいなスキルを持ってても不思議じゃないのだから。


 というコトで俺は、不意打ちを食らってもイイように身構えていたんだけど。


「どうせ勝てないのなら一騎打ちにて果てたい」


 ドリエーツが堂々と立ち上がって、俺の目を真っ直ぐな目で見つめて来た。


「万斬自在とやらによるワケの分からない死を迎えるのではなく、正々堂々と正面から全力を尽くして戦い、其方が握った刀なり拳を直接この身に受けて、最後を迎えたい。如何か?」


 そう言ったドリエーツの背後を、俺は指さす。


「そんなコト言ってイイのか? 全員で不意打ちを仕掛けたら、ひょっとしたら俺を倒せたかもしれないぞ」


 俺の言葉が終わらないウチに、魔将全員が立ち上がる。


 自分で言っておいて、こういうのもナンだけど。

 やっぱ恥も外聞も無く、全員で襲い掛かってくるんだろうな。

 よし、魔将40匹との戦闘だ!

 と思ったんだけど。


「御戯れを。我ら全員で襲い掛かったところで、貴方との戦闘力の差が埋まる筈がござらぬ。ならば例え敵わずとも、自分の武に誇りを抱いたまま、此度の生を終わらせたい所存でござる」


 ドリエーツが、まるで侍みたいなコトを言い出した。

 いやドリエーツだけじゃなく、魔将達まで口々に訴え出す。


「その通りでござる!」

「だからこそ、全員で襲い掛かるような醜態は論外でござる!」

「死ぬなら正々堂々と、潔く!」

「それが武士の意地でござる!」

「どれほど実力差があろうとも、1人を多数で襲うなど誇りが許さぬ」

「その通り。戦場での戦略ならともかく、此度は生き様の問題でござるから」

「血が滲むような鍛錬で身に付けた武を、思う存分発揮してから逝きたい」


 あれ?

 ナンか、今までの悪魔と違うぞ?

 まるで誇り高い侍みたいなコトを言ってる。

 ひょっとして本気で言ってるのか?

 いや、まさかな。


 とは思うケド、魔将達の目には、志と誇りを感じる。

 どうやら本当に正々堂々と戦って散る気らしい。


 ……面白い。

 ホントに武に殉ずる気なのか、試してやろう。

 俺は思わず口の端を吊り上げると。


「よし。準備が整ったヤツから掛かって来い」


 そう答えたのだった。

 すると。


「感謝する」


 ドリエーツは漢の笑みを浮かべてから。


「では魔将ナンバーワン=ドリエーツ、参る!」


 両の拳を顔の高さに構えた。


 へえ、今までの流れから言って、絶対に刀で戦うと思ってた。

 でもドリエーツは素手で戦う気らしい。


 そういや戦国時代には甲冑組打ちとか、色んな武術があったらしい。

 ドリエーツは、そんな武術を使うのかも。

 お? ナンだかオラ、ワクワクしてきたぞ。

 ナンてジョークは置いといて。


「しゃっ!」


 俺は鋭い呼気と共に間合いを詰めてきたドリエーツとの戦いに集中する。

 ……これは有意義な修行になりそうだぜ。












2023 オオネ サクヤⒸ

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