第百八十話 メッチャ弱いからに決まっとるやろ
モカの代わりに上級悪魔を撃退するコトにした俺は。
「ま、見ててくれ」
そう言って、モカとヒカルちゃんの前に立った。
と、まるでそれが合図だったように。
「よし、じゃあ一斉に特攻を仕掛けるぞ」
「カウントするぞ! 3! 2! 1! ゴー!」
『おう!!!』
上級悪魔4000匹が、一斉に転移してきた。
それと同時に。
「かァ!!!!!」
ゲスラーが鋭く咆哮を上げた。
多分『時空攻撃無効』を消し去ろうとしたんだろうけど。
バチィ!
俺の『時空攻撃無効』は、ゲスラーの咆哮を弾いたようだ。
そして。
パァン!!!!!!!!
転移してきた4000匹の上級悪魔も『時空攻撃無効』が弾き返す。
『な!?』
そして目が飛び出すほど驚いている上級悪魔4000匹を。
「そら」
俺は万斬自在を放って、上級悪魔をバラバラに切り刻んだ。
おや? ゲスラーが固まってるぞ。
『時空攻撃無効』破壊に失敗したのが、そんなにショックだったんだろうか?
それとも上級悪魔4000匹が1撃で倒されたコトで放心状態なのか?
ま、いっか。
俺はフリーズしたゲスラーに背を向けると。
「1000の斬撃でダメなら10000の斬撃を放てばイイ。簡単なコトだろ」
モカとヒカルちゃんに笑顔を向けた。
と、そこで。
「そんなバカな! ワタシの特殊能力『スキル効果破壊』は効かないだと!?」
やっと我に返ったらしく、ゲスラーが大声を上げた。
「なぜだ!? ワタシは第9位の魔将! 魔将の中でも上位の魔将だ! そのワタシの攻撃がなぜ効かない!?」
顔を真っ赤にして怒鳴りまくってるゲスラーに、モカが呆れた声を漏らす。
「そらアンタがメッチャ弱いからに決まっとるやろ」
モカの声は、まさに呟いたレベルだったが。
「ワタシが弱いだとぉ!!」
ゲスラーには聞こえたらしく、真っ赤な顔に青筋を浮かべた。
が、直ぐに気取った態度を取り戻す。
パサッとオーバーアクションで前髪をかき上げると。
「ふむ。たかが上級悪魔4000匹を倒したくらい調子に乗らない事だ。私のステータスを目にして恐怖するがいい。ステータスオープン」
ゲスラー(転生者)
HP 3兆8000億
ⅯP 2兆7000億
攻撃力 9兆5500億
防御力 7兆9500億
ゲスラーは自分のステータスを俺達に見せつけた。
ふうん、やっぱ大したコトないな。
って、おい!
「コイツ転生者かよ!」
思わず口にした俺に、ゲスラーがニィッと笑う。
「その通り。ゲームのファイナルクエストでは悪役プレイ、特に悪魔キャラでプレイしたからだろうな。リアルのファイナルクエストに、悪魔として転生した。しかも高位の魔将=限界突破Lv4を最初から持っている無敵キャラとして、な」
胸を張るゲスラーに、モカがため息をつく。
「はぁ~~、その程度で無敵キャラと言い張るんかいな。アホ丸出しやで」
「なんだと?」
モカの言葉にゲスラーの顔がピクピクッと痙攣する。
が、モカは涼しい顔で続ける。
「弱っちいアホが自分は強いと思い込んでカッコつけとんのは、滑稽で哀れで情けのうて痛々しくて見っとものうて、見とられんわ」
モカは素直に思ったコトを口にしただけ。
でもゲスラーへの、これ以上ない挑発になったようだ。
「ならばその弱っちい魔将の力、思い知るが良い!」
ゲスラーはそう叫ぶと、その手からシャキン! と剣を生やし。
「首を斬り落とされて後悔しろ!!」
モカの首へと剣を疾らせた。
きっとゲスラーは自分の勝利を疑っていなかったろう。
しかし、その自信満々の顔は。
「な!?」
モカが親指と人差し指で剣を挟み止めるのを見て、驚愕に歪む。
そしてゲスラーの顔は。
「むん! はっ! やっ! ぬん! うぬぬぬぬぬぬぬ!」
引っ張っても押してもピクリとも剣が動かないコトにより、焦りが浮かび。
ポキン。
モカが涼しい顔で剣をへし折ったトコで、恐怖に染まった。
「ワタシは魔将ナンバー9のゲスラー様だぞ!? そのワタシの剣を簡単にへし折りおって、一体ナンなのだ、キサマは!?」
「ナンなんや、って、こないなモンや」
モカはダラダラと冷や汗を流すゲスラーにそう言うと。
「ステータスオープン」
モカ
HP 4000兆
ⅯP 4000兆
攻撃力 1京4500兆
防御力 1京4500兆
自分のステータスを表示した。
このモカのステータスを目にしたゲスラーは。
「1京4500兆? 攻撃力も防御力も1京4500兆だと? バカな! このワタシより上ではないか!」
反射的にそう叫んでから、モカに畏怖の目を向ける。
「勝てるワケがない……こんな化け物に勝てるワケがないではないか……」
そして、そう呟いた直後。
「ひぃいいいいいいいいいいい1」
ゲスラーは悲鳴を上げながら逃げ出した。
その恥も外聞も無い後ろ姿を眺めながら、モカが。
「あ、逃げおった。う~~ん、ロックにぃ、どないしよ?」
俺にそう聞いてきた。
このまま逃がしても構わないんだケド。
「ま、少しは累計ステータスの足しになりそうだし、仕留めて血は舐めえるコトにしようか」
俺はモカにそう答えると。
「よ」
瞬間移動でゲスラーの前に転移。
「な!?」
驚きと恐怖で顔を歪めるゲスラーを、腕から生やした太刀で一突きにした。
その一突きで。
「かは!」
ゲスラーはビクンと体を震わせると。
「ば、化け物め……」
失礼なセリフを口にして床に崩れ落ちた。
そして俺とモカとヒカルちゃんは、太刀に付いた血を舐め。
累計ステータスを9兆5500億、増やしたのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




