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   第百七十九話  せやな! 練習あるのみや!





「今となってはナンの脅威でもない攻撃ですけど、上級悪魔どもはモカちゃんとワタシに喧嘩を売ってきたんですよね」


 そう言ったヒカルちゃんの背後には、無数の稲妻が見えるような気がした。

 しかもその稲妻は、激しさを増していく。


「カミカゼ・アタックを仕掛けてきた以上、殲滅される覚悟くらいある筈。なら期待通り、皆殺しにしてあげます!」


 いや、そんな期待なんかしてないと思うけど。

 なんて言える雰囲気じゃない。


「せや! そないな危険な攻撃をウチやヒカルちゃんに仕掛けて来たやなんて、絶対に許せんわ!」


 モカもやる気満々だ。

 というか、俺だって悪魔どもを、このまま放置する気なんか微塵も無い。

 なにしろモカとヒカルちゃんに自爆攻撃を仕掛けてきやがったんだ。

 しかもモカは大丈夫だったけど、ヒカルちゃんは紙一重だった。

 ヘタしたらヒカルちゃんを失ってたかもしれない。

 そう思ったら俺も。


「ブチ殺してやるよ、このクソ悪魔ども」


 煮えたぎるマグナのような怒りが沸き上がってくるのを抑えきれなかった。

 だから。


「ほなら千斬自在で真っ二つにしたるで!」


 殺す気満々のモカに、俺は押し殺した声を掛ける。


「いや、一刀両断したんじゃつまらない。モカ。千斬自在の精密コントロールの練習だ。まずは上級悪魔の右手だけ斬り飛ばしてみるんだ」

「……せやな。ジックリと痛めつけてから、自分たちが誰にケンカ売ったんかシッカリ思い知らせて、苦しみながら死んで貰うわ」


 どっちが悪魔か分からないセリフを口にしてから、モカは。


「ほなら、まずはロックにぃが言うたように、右手からや!」


 千斬自在を繰り出した。

 が、すぐにモカは顔を曇らせる。


「あちゃ~~。綺麗に斬り落とせたんは半分くらいや。残りは切断が中途半端やったり、体まで斬ってもうとるわ」


 顔をしかめるモカに、俺はニッコリと笑ってみせる。


「大丈夫だ。上級悪魔はまだ3000匹近く残ってる。だから後3回は右手だけを斬る練習ができるぞ」


 と俺は言うと、モカはパァっと顔を輝かせた。


「せやな! 練習あるのみや!」


 そして千斬自在2発目を発動。


「よっしゃ! 今度は殆どの悪魔の右手を綺麗に斬れたで! でも10匹ほどは失敗したみたいやな。なら次や!」


 というコトで、千斬自在3発目。


「よっしゃ、今度こそ完璧や! と思ったら、1匹だけ失敗してもうたか~~。よっしゃ、今度こそ!」


 口にしたように、この4発目の千斬自在で。


「よっしゃ、完璧や!」


 モカは正確に千斬自在を操った。

 なら、もっと精密に使いこなす練習をしてもらおう。


「モカ。次は左手の人差し指だけを斬ってみるんだ」

「左手の人差し指だけ!? ロックにぃ、ムチャ言うなぁ」


 笑みを浮かべるモカに、俺も笑みで応える。


「気楽にやったらいい。なにしろ4000匹も練習台がいるんだ。何回失敗してもやり直せる」

「せやな! 肩の力を抜いて、でも真剣に練習するわ!」


 モカは生き生きとした表情で。


「や! た! ほ! とりゃ!」


 千斬自在を撃ちまくり始めた。

 一方、俺とヒカルちゃんは、というと。


「はは、逃げても無駄なのに、逃げ回ってる」

「ホントはワタシの手で地獄を見せてやりたかったけど、ま、これでちょっとは気が晴れました」


 千里眼で、逃げ惑う上級悪魔を観察していた。


「俺も悪魔達が必死に逃げ回ってるのを視たから気が済んだ……かな? なら、このままモカの練習をするのを見守るとするか」

「そうですね。悪魔には、このままタップリと地獄を味わってもらいましょう」


 実際、ヒカルちゃんの言ったように。


「うわぁぁ!」

「右手が! 左の指がぁ!」

「今度は耳を斬り落とされた!」

「オレの鼻がぁぁぁぁ!」

「足が微塵切りにぃ!?」

「だから手を出すなって言ったのにぃぃぃぃぃ!」


 上級悪魔達は、地獄の真っただ中にいた。

 これが阿鼻叫喚ってヤツかも。


 しかしモカのやつ、逃げ惑う上級悪魔を、見事に切り刻んでいってるな。

 あ、今度は左手の小指の先だけ斬り飛ばした。

 ここまで精密に攻撃出来るようになったら合格かな。

 だから。


「モカ。そろそろ止めを刺していいぞ」


 俺は悪魔を全滅させて、上の階に進むコトにした……んだけど。


「たかが人間ごときが、ワタシ達=魔将が住む上層に足を踏み入れて貰っては困りますねェ」


 1人の男が立ち塞がった。

 ま、今の言葉からして、コイツは魔将なんだろうけど。


「たかが人間ちゅうたワリには、人間のカッコしとるようやけど?」


 モカが言ったように、目の前の魔将は人間の姿をしてた。


 というか、俺の第一印象はマジシャン。

 タキシードを身に付けた、中年の紳士だ。

 でもナンで人間の姿なんだ?

 下級悪魔や上級悪魔は、人が思い描く悪魔そのものの姿だったのに。


 なんて俺が考えてると。


「上級悪魔の諸君。このまま何もせずにコイツ等を通過させたら、どうなるか分かってるんだろうね?」


 魔将が、気取った声を上げた。

 どうやら魔将の声は全場上級悪魔に届いてるみたいだ。

 千里眼で確認してみると、上級悪魔の1匹が訴えてる。


「でもゲスラー様! コイツ等は1000の斬撃を自在に操ります! 我らに勝ち目はありません!」


 この魔将、ゲスラーって名前なのか。

 うん、確かにゲスラーって感じだ。

 そのゲスラーが冷たい声で言い放つ。


「全員で特攻したら良い」

「そ、そんな! 敵は1000の斬撃を連発する化け物! 特攻を仕掛けても返り討ちに遭うだけです! どうかお許し下さい!」


 必死に懇願する上級悪魔に、ゲスラーはフンと鼻を鳴らす。


「キミ達は、下級悪魔2000が1000の斬撃を放つワザで倒されるのを見てなかったのかね?」

「は、2000もの下級悪魔を、たった2連撃で全滅させておりました。そのような攻撃を受けては、我らに勝ち目は無いと……」

「愚か者。2撃目が放たれたのは1撃目の0・3秒後だった。そして転移攻撃を仕掛けるのに0・3秒あれば十分な筈。ならば初撃で1000が命を落としている間に、残った3000で止めを刺せば良い」

「でも、敵は『時空攻撃無効』のスキルを持っております。転移で特攻を仕掛けても弾かれてしまうだけです!」


 必死に訴える上級悪魔にゲスラーがフンと鼻を鳴らす。


「人間ごときのスキルなどワタシが消し去ってみせるから、無駄な心配はしなくて良い。さあキミ達。全員で特攻を仕掛けるか、ワタシに殺されるか、好きな方を選びたまえ」


 ゲスラーの言葉を聞き、上級悪魔達の顔に決意が浮かぶ。


「このままじゃ、魔将様達に殺されるぞ!」

「なら全員で特攻だ!」

「そうだな、生き残れる確率は、そっちの方が上だよな!」


 という上級悪魔達の相談を聞きつけて、モカは顔をしかめる。


「確かにウチの千斬自在やと、0・3秒間で4000匹を斬るんは無理や。なあロックにぃ、どないしよ? 打つ手がないワケやあらへんけど、ドレを使ったらエエと思う?」


 そうだな。

 モカでも4000匹を撃退できると思う。

 けど、ここは俺がやろうかな。












2023 オオネ サクヤⒸ

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