第百七十七話 千里眼がレベル5になりました
命と引き換えに俺達を倒そうとした下級悪魔の屍を前にして。
「ロックにぃ、どないする?」
モカが俺に、声を掛けてきた。
「血ぃ舐めて、累計ステータスの足しにする?」
「そうだな……」
俺はざっと計算してみる。
得られるステータス値が600万として、8000匹で480億。
そしてモカがステータスアップするには1290兆必要だから……。
「時間の無駄だな。もっと効率よく強くなれる強い悪魔を狙おう」
俺はそう結論し、中層へと続く階段に足を掛けた。
「了解や」
「そうですね」
そんな俺に、モカとヒカルちゃんが続き。
「おや? 中層は下層と違ってキレイなんですね」
ヒカルちゃんが言ったように、普通の城のような場所に辿り着いた。
いや、普通の城よりかなり豪華な場所だ。
千里眼Lv3によると、構造自体は下層と同じ。
フロアの中心を巨大な回廊が貫き、その左右に扉が並ぶ。
扉の先は部屋だったり、通路だったり。
部屋の大きさは大小様々。
上級悪魔が何匹もいたり、何十匹もいたり、無人だったり。
通路の先も迷路になっていたり、部屋だったり、倉庫だったり色々だ。
そして上級悪魔のステータスは、こんなところ。
HP 900万 ~ 200万
ⅯP 900万 ~ 200万
攻撃力 3000万 ~ 600万
防御力 3000万 ~ 600万
つまり『ステータス捕食』によって、1200万から6000万が得られる。
平均3000万として、上級悪魔4000匹で1200億前後。
やっぱ時間の無駄だな。
そう判断して、俺はモカとヒカルちゃんに目を向ける。
「宝箱をゼンブ手に入れたら、さっさと魔将が住む上層に向かおう」
「そうですね。たった1200億じゃ、時間がもったいないです」
どうやらヒカルちゃんも、俺と同じ結論だったようだ。
そう言ってから、手前から3番目の扉を指さす。
「ならまずは、あの部屋に隠されてる宝箱からですね」
「ちゅうコトは、邪魔してくる上級悪魔は倒す、せやなかったら宝箱を回収し終わり次第、上の階を目指す。これでエエん?」
「その通り」
「よっしゃ!」
俺が答えると同時に、モカは手前から3番目の扉に駆け寄ると。
「ロックにぃ、早よ早よ!」
扉に手をかけ、ピョンピョンと飛び跳ねながら手招きを始めた。
う~~ん、こんなトコは、まだまだ子供だな。
ま、可愛らしいからイイか。
おっと、顔をマジに戻して、と。
「ああ、宝箱にナニが入ってるか楽しみだな」
俺はそう言うと、扉の前に向かった。
そして。
「ほならロックにぃ。扉、開けるで」
モカが俺をチラリと見てから、扉を開け放った。
その瞬間。
「はッ!」
扉の影から上級悪魔が襲い掛かってきた。
これがさっき、モカが俺をチラリと見た理由だ。
もちろんモカに合図されるまでもなく、俺も気付いていたから。
「遅い」
ゴシャ!
上級悪魔が攻撃を繰り出す前に、拳で迎撃した。
というか、不意打ちなら黙ってやれよ。
わざわざ声を出して、自分の存在を敵に教えて、どうすんだ。
とツッコミたいトコだけど、そこはお約束というヤツかな?
ま、いいや。
宝箱の中身はナニかな~~?
って、千里眼Lv3でも、中身が見えない?
というコトは、かなり隠蔽レベルが高いってコト。
ならここは。
「さぁて、ご対面~~!」
「ちょっと待ったぁ!」
ウキウキと宝箱を開けようとしているモカを、俺は慌てて止めると。
「千里眼のレベルを上げようと思うから、しばらく俺に観察させてくれ」
気合を入れて千里眼を発動させながら、宝箱を見つめる。
そして。
「言われてみたら、ウチにも宝箱の中身、視えへんだわ。ロックにぃから千里眼Lv3をコピーしてもろたのに。ちゅうコトは……ロックにぃ、千里眼のレベル、また上がりそうなん?」
モカが、そう声を漏らしたトコで。
《千里眼がレベル5になりました》
スキル『千里眼』はLv5にアップした。
と同時に宝箱の中身が見えるようになる。
宇宙樹の実
食べるとスキル『宇宙樹の若葉』を取得できる。
(スキル『宇宙樹の若葉』=10秒でHPとⅯPが全回復)
「凄いチートアイテムだな」
俺の呟きに。
「エラいモンが手に入ったで」
「この無節操なチートアイテム……文岡さんに間違いありませんね」
モカとヒカルちゃんの声が重なった。
ついでに言うと。
千里眼がレベル5になったおかげでフロア全てを見渡せるようになった。
だから直ぐにヒカルちゃんの『スキル複写』でコピー。
モカもヒカルちゃんも千里眼レベル5を取得。
さっそくモカは、千里眼5を発動させると。
「へえ、上層に隠されとる宝箱の中身は宇宙樹の実が2つ、力の腕輪が2つ、護りの腕輪が2つ、速さの腕輪が2つ、魔力の腕輪が2つ、攻撃力2倍化が2つ、防御力2倍化も2つずつかいな。さっすが上層、中層よりズットぎょうさんのアイテムが隠されとるわ!」
力の腕輪 = 装備すると 力 が2倍になる
護りの腕輪 = 装備すると 耐久力 が2倍になる
速さの腕輪 = 装備すると 速さ が2倍になる
魔力の指輪 = 装備すると 魔力 が2倍になる
を含む14のアイテムを発見した。
「装備したら2倍になるのなら、直ぐに装備した方がいいですね」
ヒカルちゃんの言う通り。
例えば中層で手に入れたHP2倍。
HP9000兆の俺が使ったら、HPは1兆8000兆にアップする。
つまりHPが増える両は9000兆。
そしてもしHPが10京のトキにHP2倍を使ったら、HPは20京。
増えた量は10京となる。
ならHP9000兆の今使うのと、HPが10京になってから使うのと。
ドッチが得か、なんて言うまでもない。
でも装備品なら、装備した状態が2倍になる。
なら、出来るだけ早く装備した方がイイに決まってる。
というコトで俺達は上層を駆けまわり、全アイテムを回収したのだった。
しかしまだ装備はしないでおこうかな。
もしも勝てない敵に遭遇した時。
そこで装備して敵をビビらす方が楽しそうだから。
2023 オオネ サクヤⒸ