第百七十四話 『塵も積もれば山となる」でガンバルしかありませんね
1人で進み出た俺に。
「お? なんだ、オマエから殺していいのか? でも楽には殺さないぜ。経験値の足しになるように、拷問の限りを尽くしてから殺してやるよ」
1匹の悪魔が立ち塞がった。
HP 82万5000
ⅯP 78万8000
攻撃力 315万2000
防御力 298万8000
20匹の悪魔の中で、1番ステータスが高いヤツだ。
ついでにいうと、角もカギ爪も1番長いし、体も1番デカい。
でも、俺にとってはゴミでしかない。
「出来るモンならやってみろ」
俺はそう言うと同時に腕から太刀を生やし。
ス。
1番強い悪魔の胸に突き刺した。
……やっぱ何の手ごたえもない。
無限の鎧から生える武器、凄すぎ。
と、俺が太刀の切れ味に感心してると。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
そこでやっと1番強い悪魔が悲鳴を上げた。
鋭利な刃物で切られると、痛みが無いので斬られたコトに気付かない。
そんな話を聞いたコトがあったけど、それってマジだったんだな。
1番強い悪魔のヤツ、今になってやっと刺されたと理解したらしい。
でも、さすが下級悪魔というべきなんだろか。
「おのれェ!」
1番強い悪魔は、直ぐにカギ爪を俺に振り下ろしてきた。
でも遅い。
ドン。
俺は1番強い悪魔の腹に拳をめり込ませ。
「ぐぉ!」
体を折り曲げた悪魔を。
「モカ。『ステータス捕食』だ」
モカへと蹴り飛ばした。
そしてモカは。
「わわわ!」
慌てながらも1番強い悪魔をキャッチし。
「……しゃーないか」
刺し傷から吹き出る血を一舐め。
「ほなヒカルちゃん、後は任せたで」
今度はヒカルちゃんに、1番強い悪魔を投げ渡した。
その1番強い悪魔を。
「任されました」
ヒカルちゃんはそう言うと。
「人化、少しだけ解除」
全長200メートルほどの、1つ首の神龍へと姿を変えた。
ヤマタノオロチと比べたらミニチュアサイズだけど、それでも。
「わひぃイイイイイ!」
1番強い悪魔が悲鳴を上げるサイズだ。
そしてヒカルちゃんは。
「神龍なのか……?」
「まさか……」
「そんなバカな……」
「本当に神龍なのか……」
「残念ながら……間違いなさそうじゃのう」
「しかし、なぜ神龍がパンデモニウムに……?」
顔色を変えて呟いてる下級悪魔達をチラリと見てから。
バクン。
1番強い悪魔を余裕で一飲みにした。
そしてヒカルちゃんは。
「攻撃力315万2000ですか。ステータスアップには程遠いですけど『塵も積もれば山となる』でガンバルしかありませんね」
そう呟いて、溜め息をついた。
『パンデモニウム』にいる下級悪魔の数は20万。
全てを倒しても、得られるステータス値は6兆に届くかどうか。
ヒカルちゃんがステータスアップできる数値じゃない。
そりゃ溜め息も、つきたくなるよな。
ヤマタノオロチに転生して261年。
きっと最近は、ステータスアップ出来てないのだろう。
というかステータスアップ出来るほどの敵なんかいないんだろな。
だから何度も自分に言い聞かせてきたハズ。
『塵も積もれば山となる』と。
下級悪魔をどれだけ倒してもステータスアップには程遠い。
でも先に進めば上級悪魔、魔将、魔王、魔神が待っている。
そいつら全部から『ステータス捕食』でステータス値を奪い取ったら。
きっとステータスはアップするだろう。
ヒカルちゃんもモカも、そして、この俺も。
なら、ここでモタモタしてる場合じゃない。
下級悪魔と戦う理由は、スキルを育てる為でもあったんだっけ。
じゃあサクサクとスキルレベルを上げて、先に進むか。
という事で俺は。
ザシュ。ヒュパッ。シュン。ボヒュッ。
次々と下級悪魔を倒していく。
しかし下級悪魔を殺してしまったら、レベルアップしてしまう。
ステータスはザコだけど、経験値は限界突破Lv2相当だから。
なので倒すコトは出来ても殺してしまうワケにはいかない。
う~~ん、ナンて面倒なんだろ。
と、一瞬思ったけど。
『ステータス捕食』をオンにしてるから経験値を得るコトはない。
なので、レベルアップの心配なく敵を倒せる。
よし、サクッと皆殺しにしてしまうか。
と、下級悪魔達に視線を戻すと。
「な、なんなんだよ、オマエ!」
「人間のクセに、何で悪魔を倒せるんだ!?」
「神龍ならともかく、人間ごときに悪魔を倒せるハズがない!」
「下等生物のクセに!」
「認めない! 認めないぞ、オレは!」
「こんな事、有り得る筈が無い!」
下級悪魔達は逆ギレして大声を上げると。
『うおぉおおおおおおおおお!!!!』
全員が、俺に襲い掛かってきた。
って、バカかお前ら。
さっき1番強い悪魔を瞬殺したのを忘れたのか?
……単に錯乱してるダケかも。
ま、どっちにしても、俺のやるコトに違いはない。
ピシュン!
俺は腕から生やした大太刀を一閃。
全ての下級悪魔の首を切断したのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ