第百七十二話 計画を見直すぞ
隠れボス。
ゲームを普通に進めた場合、遭遇する事のないキャラ。
あるいは滅多に遭遇しなかったり、特殊な条件下でのみ遭遇するキャラだ。
大抵の場合、ラスボスより強い。
ましてやアイツがプログラムした隠しボスだ。
想像を絶する戦闘力を持ってるに違いない。
だから隠しボスに遭遇する前に、もっと強くなっておく必要がある。
そうなると、問題は1つ。
どうやって今より大幅に強くなるか、だ。
という事で俺は。
「モカ。ヒカルちゃん。計画を見直すぞ」
これからのコトを、説明しておくコトにする。
ま、ヒカルちゃんは行則のコトを知ってるから、主にモカに、だけど。
「アイツが隠しボスと言ったからには、普通じゃ有り得ない強さのモンスターがいる可能性がある。というかマジでシャレにならないモンがいるに違いない。ひょっとしたら今の俺でも勝ち目が無いレベルのな」
「ロックにぃでさえ勝てへんモンが!? そしたらウチ等じゃ、どないしょうもあらへんやん!」
「だから、レベルアップできそうなスキルは全部、限界までアップさせようと思うんだ。最初の計画よりズット時間がかかるけど、そうするしかないと俺は思う。モカは、どう思う?」
「う~~ん……そのフミオカイクノリちゅうヤツのコト、ロックにぃは良ぉ知っとんのやろ? そのロックにぃがそない思うんやったら、そうするんが1番やとウチは思うで」
どうやらモカは賛成してくれるらしい。
「じゃあヒカルちゃんはどう思う? ヒカルちゃんなら、俺とは別の視点を持ってるだろうから」
「そうですね……ワタシ1人だったら撤退します。でもトモキ先輩がスキルをガンガン上げて、カンストさせたスキルを、スキル複写でワタシとモカちゃんがコピーする戦法なら、ナンとかなりそうな気がします」
「そっか。じゃあ最初の予定を変更。ここでアップさせるコトが出来るスキルは限界までレベルアップさせるぞ」
そう宣言した俺の腕を、モカがつつく。
「で、ロックにぃ。実際のトコ、ナニするん?」
「まずは『魔力転用』をカンストさせるコトかな。反則級に強力なスキルだったからな」
そう言った俺に、モカがウンウンと何度も頷く。
「せやったなぁ。あないなスキル使われたら、普通やったら心が折れてまうで、いやホンマ」
スキル『魔力転用』。
ⅯPの数値を、攻撃力か防御力にプラスできる能力だ。
「よし、なら今から何度も『魔力転用』で攻撃力と防御力をアップさせる。それを繰り返してたらレベルアップすると思う。なにしろ今の俺のレベルは、たった1なんだからな」
スキル『魔力転用』の入手難度はSSS超級。
だからレベル1の俺が使ったら、凄い速さでレベルアップするハズ。
というコトで、俺は全ⅯP9000兆を攻撃力に転用。
攻撃力を4京1千万から5京にアップさせた。
それだけで。
「やっぱレベル1の効果、ハンパないわ」
『魔力転用』はレベル6から9に上がった。
「ロックにぃ、どない?」
と聞いてきたモカに、俺は笑顔で答える。
「1発でレベル9にアップしたぞ」
「ええ? 1度でカンストさせたん!? やっぱロックにぃは凄いで!」
と喜ぶモカに、俺は首を横に振ってみせる。
「いや『魔力転用』はレベル20までアップさせるコトが出来るスキルなんだ」
「マジで!?」
目を丸くするモカに、俺はニヤリと笑う。
「ああ。だから、もうちょっと待っててくれ」
なんてモカと話している間に、俺のⅯPは全回復した。
俺が装備している無限の鎧の特殊能力「宇宙樹の泉」の効果だ。
(覚エテマスカ? HPとⅯPを20秒で全回復させる能力デスヨ)
というコトで再びⅯP9000兆を攻撃力に転用。
今度はレベル9からレベル11に上がった。
そして20秒待って、また『魔力転用』
これを繰り返して『魔力転用』をレベル20に育てた。
さあ次は、どのスキルをカンストさせよう?
そうだな……『武器変化』にするか。
『武器変化』8本の尻尾を剣、刀、槍、斧、槌などの武器に変化させるスキル。
俺が装備している無限の鎧は、錬成融合した武器を出現させる能力を持つ。
だから俺には不必要なスキルと思うかもしれない。
でもスキル『武器変化』は、レベルを上げると。
変化させた武器の攻撃力がアップするんだ。
とはいえ、そのアップ率は微々たるモノ。
レベル1で10パーセントが上乗せされる程度。
レベル2でも20パーセントが上乗せされるにすぎない。
でもレベル3で40パーセント。
レベル4で60パーセント。
レベル5で90パーセントと、上乗せ率は上がっていく。
レベル10では攻撃力の300パーセントが、元の数値にプラスされる。
つまり攻撃力は4倍に跳ね上がるワケだ。
でも残念ながら、レベル10で『武器変化』はカンスト。
これ以上『武器変化』を育てるコトは出来ない。
それでも攻撃力が4倍というのは、かなりのチートだと俺は思う。
だから俺は。
「ヒカルちゃん。今度は『武器変化』を俺にコピーして貰えるかな? ついでに『炎熱纏い』と『魔力針』も、お願い」
そう頼みこんだ。
スキル『武器変化』は敵に攻撃をヒットさせないとスキルレベルは上がらない。
でも超高温の炎を身に纏うスキル『炎熱纏い』。
魔力を針に変えて全身に生やすスキル『魔力針』。
これらは敵と戦わなくても使うだけでレベルアップできるからだ。
ちなみに『雷撃纏い』や『空震』なんかも使うだけでレベルアップする。
『炎熱纏い』と『魔力針』の次は、それらのスキルもカンストさせよう。
とにかく、何事も1つ1つだ。
というコトで俺は。
「炎熱纏い」
そう口にして、スキル『炎熱纏い』を発動させた。
ところで、口に出さないでもスキルは発動する。
けど、1回やってみたかったんだ。
なんかこう、凄い技を使うぞ! って感じがするから。
「魔力よ、我が身に集いて炎と……」
みたいな、恥ずい詠唱はしないケド。
とにかく。
俺は何度も発動を繰り返し、『炎熱纏い』をカンストさせた。
そして『雷撃纏い』『空震』『魔力針』もカンストさせ、2人にコピーしたトコで。
「じゃあ、そろそろ『パンデモニウム』に乗り込むか」
俺はモカとヒカルちゃんと共に『パンデモニウム』に向かったのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ