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   第百七十一話  フミオカイクノリちゅうんは、ナニモンなん?





 モカが『8神龍の吐息』をカンストさせた後、ヒカルちゃんは。


「じゃあモカちゃんがカンストさせた『8神龍の吐息』のスキルを、トモキ先輩にコピーしますね」


『スキル複写』のスキルで、俺に『8神龍の吐息Lv9』をコピー。

 そして自分も『8神龍の吐息Lv9』をコピーしたトコで。


「これでアナタ達を生かしておく必要はなくなりましたね」


 ヒカルちゃんは悪魔達に、ニッコリとほほ笑んだ。

 俺の目には小動物のように控えめな可愛らしい笑顔に見える。

 けど悪魔達には、そうは見えなかったのだろう。


『ひぃいいいいい!!!!!!!』


 今までで1番怯えた声を上げた。

 けど、そんなコトで怒りが収まらなかったようだ。

 ヒカルちゃんの目が、怒れる爬虫類の目に変わる。


「さっきワタシを『胸無し』と罵りましたよね? それって、ワタシにケンカ売ったってコトですよね?」


 そして爬虫類の目が神龍の目に変わったトコで。


「いいでしょう。そのケンカ、全力で買ってあげます!」


 ヒカルちゃんはそう叫ぶと、ヤマタノオロチに姿を変えた。

 8つの首の長さは4000メートル、首の直径は400メートル。

 胴体の直径は2000メートル。

 全長は50キロメートルにも及ぶ、8つ首の超巨大神龍王の姿に。


 ところで、本当の恐怖を味わったコトはあるだろうか?

 悲鳴を上げるコトが出来るのは、まだ余裕がある証拠。

 本物の恐怖に直面したトキ、人は声すら出せなくなる。


 そしてそれは、悪魔も同じらしい。

 8つ首の超巨大神龍王の姿を目にして。


『…………………………!!!!!!!』


 悪魔達は限界まで目を見開き、声を出すコトすら出来ず、硬直していた。


 ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。

 スミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタ。

 許してください許してください許してください許してください。

 何でこんな事に?何でこんな事に?何でこんな事に?何でこんな事に?

 殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで。

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて。


 と、目が語っている悪魔に。


「では死ぬがよい」


 ヒカルちゃんは地獄から響いてくるようなバリトンでそう言うと。


 バクン × 8


 8つの口で、8匹の悪魔に噛み付き。


 ゴキン、バキン、ゴシャ、グチャ、グキン、ブチッ、カツン、ゴキキ。


「「「「「「「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ……………………」」」」」」」」


 ユックリと悪魔を噛み砕くと。


 ゴックン! × 8


 より大きな恐怖を抱かせる為だろう。

 残った悪魔に見せつけるように、大げさなジェスチャーで飲み込んだ。


 今のヒカルちゃんの口のサイズなら、1度で全ての悪魔を噛み砕けたハズ。

 なのに1つの口で、悪魔1匹しか食べてない。

 きっと胸無し発言悪魔を最後まで残して、極限の恐怖を与える気なんだろな。

 あの悪魔、バカなコトを口にしたモンだ。


 ま、ここまでヒカルちゃんを怒らせたんだから仕方ない。

 生きたまま、地獄を味わってもらうか。

 あれ? 悪魔だから地獄は知ってるのかな?

 もしチャンスがあったら聞いてみよう。


 ていうか、今さらなんだけど。

 ヤマタノオロチの姿は、普段のヒカルちゃんと、かけ離れ過ぎ。

 8つ首の超巨大神龍王を、ヒカルちゃんとは呼び難い。

 だから8つ首神龍王の姿のトキは、ヤマタノオロチと呼ぼう。

 ……心の中で。


 なんて俺が考えてるうちに、残るは胸無し発言悪魔だけになった。


「さて、覚悟は出来たか? キサマな特にユ~~~~~~~~ックリとかみつぶしてやろう。苦しみが少しでも長く、続くようにな」

「……………………!」


 声を出すコトすら出来ず、ただ泣きながらイヤイヤをする胸無し発言悪魔に。


 カパァ。


 ヤマタノオロチは1度、大きく口を開いて見せた。

 きっと胸無し発言悪魔には、その上顎は天に届いたように見えたコトだろう。

 その顎はユックリと閉じられ、胸無し発言悪魔を咥えると。


 ミシミシミシミシ……ギシギシギシギシ……。


「あぎ……あぎゃ……あげぇ……あがぁぁぁぁぁ……………………」


 言葉通り、ユ~~~~~~~~~~~ックリと力が込められていき。


 ズン!


「あび!」


 胸無し発言悪魔を嚙み潰した。

 これで気が済んだだろうな……と思ったら。


「ベッ!」


 ヤマタノオロチは、グチャグチャになった悪魔をすら高く吐き出し。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!


 レベルアップした炎の吐息で、胸無し発言悪魔を焼き尽くした。


 いや、焼いてはないな。

 吐息が命中する前に、炎の吐息の余熱で消滅してたから。


 ってか、オーバーキルどころの話じゃないぞ、コレ。

 胸のサイズの話は永久封印するコトにしよう。

 と、顔を引きつらせている俺に。


「ああ、スッキリしました」


 一瞬で人の姿になったヒカルちゃんが、イイ笑顔を向けてきた。


「この程度の悪魔じゃ、レベルアップしませんけど」


 そして、そう言った後。


「でもアソコには、ワタシがレベルアップできる敵がいそうです」


 ヒカルちゃんは遠くに見える、巨大な城を指さした。


 人骨や悪魔や化け物を飾り付けたような不気味なデザインの城。

 悪魔の居城『パンデモニウム』だ。


「どうやらアレがパンデモニウムみたいですね」


 ヒカルちゃんはそう言うと、俺に複雑な表情を向ける。


「トモキ先輩。あのデザイン……まさか文岡さんですか?」


 さすがヒカルちゃん。

 仕事の10倍の熱意で、趣味のプログラムを仕込んだアイツ。

 文岡行則の仕業だと気づいたみたいだ。


「ああ。『パンデモニウム』は200年くらい時が経過したら出現するかも、という設定で、行則が思う存分にプログラムした隠し要素だ」

「文岡さんが、思う存分……マズいですね」


 顔色を変えるヒカルちゃんに、モカが不思議そうな顔を向ける。


「なあヒカルちゃん。そのフミオカイクノリちゅうんは、ナニモンなん?」

「ファイナルクエストをプログラムした1人です。優秀なプログラマーなんですけど、自分が好きな分野だと、必要以上に凝ったプログラムをするんです。休日返上や徹夜なんか当たり前で」


 ヒカルちゃんも、あまり人のコトは御言えないけどね。


「あと、その場のノリで、とんでもないコトをする人です。そういやパンデモニウムに隠れボスを仕込んだって、悪い顔で笑ってました」

「行則が、そう言ったのか!?」


 思わず大声になる俺に、ヒカルちゃんは深刻な顔で頷く。


「ワタシも、どうせ出現するハズがない裏設定みたいなもんだと思って忘れてたんですけど、文岡さんの事だからシャレにならないモノが待ち受けていると思って間違いないでしょうね」


 う~~ん、予想外の事態になったぞ。

 隠れボスか……どうしよう?













2023 オオネ サクヤⒸ

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