第十七話 『術』を手に入れるのが正しいルートだ
スキル『強手裏剣』と『取り出しの指輪』と大量の手裏剣を手に入れた。
次は『術』を手に入れるのが正しいルートだ。
というコトで俺は罠を無効化し、忍者を躱し、毒グモを避け。
そして忍者屋敷の庭に辿り着いた。
広い日本庭園で、大きな池を石灯篭が囲んでいる。
この高さ20メートル近い、巨大な石灯篭がギミックだ。
灯篭の数は、全部で9つ。
それぞれ1から9まで番号が刻まれている。
その灯篭を正しい順番で砕いていけば、術が手に入る仕掛けだ。
本来なら忍者屋敷中を探しまくらないと、壊す順番は分からない。
でも俺は正しい順番を覚えてる。
正解は3,6,7,1,9,5,2,4,8の順だ。
とはいえ石灯篭を跡形もなく砕かないと、仕掛け解除にはならない。
でも巨大灯篭を粉々に砕くなんて、拳撃強化Lv5でも不可能だ。
しかし『強手裏剣』のスキルのお陰で、簡単に砕くコトが出来る。
これが最初に『強手裏剣』スキルを手に入れた理由だ。
というワケで『強手裏剣』で石灯篭を砕き終わると。
バシャシャシャ。
池の水が一か所に集まり、そして集まった水は巻物に変わる。
その巻物に手を伸ばし、中を覗くと。
《スキル『爆水の術』を手に入れました。付随して『爆水の術』の符の製作法を覚えました。特典して『爆水の術符』50枚を手に入れました》
脳内にアナウンスが響いた。
忍者のスキルに水遁の術というモノがある。
大型バス1台分の水を発生させるモノだが、その上位スキルが爆水の術。
水遁の200倍の水量を叩き付けたり、爆散させたりする忍術だ。
その威力は超強力。
ダイヤモンドすら粉々に砕く水圧を発生させる。
そして『爆水の術』を発生させるには、呪符を使う。
予め呪符を作っておく必要があるが、ⅯP無しでも使えるのが利点だ。
ただし、爆水の術符1枚作るのにⅯP5を消費する。
つまり暇な時に作り置きしておかないと役に立たない。
でも同威力の水魔法よりも少ないⅯPで作れるので、かなりお得だ。
ちなみに『爆水の術符』の製作に必要な和紙は、道具屋で売っている。
ま、とにかくスキル『爆水の術』は手に入れた。
次に行くか。
目的地は、今いる日本庭園の先に見えている寺院。
簡単に辿り着け……そうだが、そんな甘いダンジョンじゃない。
このまま進めば、レベル99のガーディアンと戦うコトになってしまう。
ちなみに、『強手裏剣』さえ命中すれば倒せる。
『強手裏剣』は、レベル99超えのモンスターを倒す為のモノだから。
でも今の俺のじゃあ、まだ使いこなせない、
間違いなくバッド・エンディングを迎えちまう。
だから裏技を使う。
その為に『空間把握』と『空間機動』のスキルを手に入れたんだから。
どういうコトか、というと。
この庭には『視認遮断』のスキルで身を隠したアラクネが隠れている。
『視認遮断』により、アラクネの巣も見えない状態だ。
だから何もないと思って、このまま寺院を目指すと。
見えないクモの巣に引っ掛かり、アラクネに襲われてバッド・エンドだ。
だから『空間把握』スキルで、見えないクモの巣の糸を知覚し。
『空間機動』スキルで空中を走り、クモの巣の隙間を抜ける。
これならアラクネと戦闘するコト無く神社に辿り着けるだろう。
ちなみにアラクネとは、上半身が女性で下半身がクモのモンスターだ。
「よし、やるか」
俺は小さく呟くと『空間把握』スキルで周囲を探った。
うん、アラクネの巣が壁となって行く手を阻んでいる。
でも巣自体がデカい分、隙間もデカい。
俺が潜り抜けられる隙間が、いくつもある。
後は慎重にルートを決め。
タン! タン! タン! タン! タン!
一気に『空間機動』で走り抜ければ、作戦終了だ。
「はぁ~~、自信はあったけど、失敗したらどうしようかと思った」
思わず本音が漏れてしまう。
だってリアルなんだもん。
なんてジョークは置いといて。
さっそく寺院の中に入るとするか。
と、そこには、無数の蠟燭が灯っていた。
その数、5000本。
そして、本来なら本尊の後ろには。
「正しい順番で、蠟燭の火を消せ」
と書かれた掛け軸が垂れ下がっている。
5000本もの蝋燭を正しい順番で消さなければならない。
でも蝋燭は全て同じ色で、大きさも同じ。
そんな何の目印もない蝋燭を、しかも正しい順序で?
どうやったら、正しい順番が分かるんだろう?
忍者屋敷中を探し回って、正しい刃番を調べるしかないのか?
『爆水の術』を手に入れた時のように。
おそらく、初めてココに辿り着いた者は、そう思うだろう。
しかし、今回は何処を探しても正しい順番は発見できない。
正解のヒント。
それは本尊である不動明王像の目にある。
その目は、右目を天に、左目を地に向ける「天地眼」。
世界の全てのモノを見ているコトを現す目だ。
つまり『全て』=全部の蠟燭を1度に消す。
これが正しい順序だ。
5000本の蝋燭を、どうやって1度に消すか。
その手段が、さっき手に入れた『爆水術』だ。
というコトで、俺は『爆水の術符』を取り出すと、寺院の中に投げ込み。
「爆水!」
そう叫んだ。
と同時に『爆水の術』が起爆。
5000本の蝋燭を全て吹き飛ばした。
後に残ったのは不動明王の本尊だけ。
そしてその手には、さっきまで無かった巻物が出現している。
ちなみにさっきの爆水の術は、寺院を破壊しないように威力を下げておいた。
「よし」
こうして俺が巻物を手に取り、広げると。
《スキル『火炎の術』を手に入れました。付随して『火炎の術符』の製作法を覚えました。特典して『火炎の術符』50枚を手に入れました》
という脳内アナウンスと共に。
スキル『火炎の術』と、50枚の「火炎の術符」を入手したのだった。
もちろん、隠しイベントだけあって『火炎の術』も超強力。
10万度の炎による攻撃だ。
ちなみに地球上の全ての物質は6000度で蒸発する。
話を戻そう。
次は雷遁の強化スキル『轟雷の術』を手に入れるのが流れだ。
でも目的地は、忍者屋敷をはさんだ反対側に建てられた寺院となる。
というコトは、この忍者屋敷ダンジョンを横断しなければならない。
だから反対側の寺院を目指しつつ、他のスキルの手に入れる事にしよう。
つまり、通り道にある「鍛錬場」を目指す。
そこで手に入るのがスキル『伊賀の体術』。
ステータスの1部と、攻撃力が強化されるスキルだ。
というコトで『暗視』『空間把握』『気配察知』を駆使してサクサク進み。
やって来ました「鍛錬場」。
空手道場そっくりな板張りの広い部屋だ。
2023 オオネ サクヤⒸ