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   第百六十八話  とりあえず何度も噛み付こう





『ぎゃぁあああああああああああ!!!!』


 両足を失った悪魔達が悲鳴を上げてるのを無視して俺はヒカルちゃんに頼む。


「なあ、ヒカルちゃん。『ステータス捕食』ってスキルを持ってたろ? それを俺にコピーしてくれないかな? 『スキル複写』のスキルを使って」

「イイですけど、いきなりどうしたんですか?」


 首を傾げるヒカルちゃんに、俺は悪魔達を指さす。


「コイツ等、限界突破1クラスだろ? ここは『パンデモニウム』の入り口でしかないのに。ってコトは、これから限界突破Lv2クラスや限界突破Lv3クラスどころか限界突破Lv4クラスの悪魔だって出て来る可能性が高い。だってアイツがプログラムしたんだから」

「ええ!? 『パンデモニウム』プログラムしたの、トモキ先輩じゃなくて、あの人なんですか!? そりゃあ……十分、有り得ますね」

「だから俺達も、それなりの用意が必要だと思ってね。というか、この際だから『パンデモニウム』を利用して、もっと強くなってしまおう」


 と俺は言うと、ヒカルちゃんは楽しそうな笑顔になる。


「そりゃイイですね。で、手始めに『ステータス捕食』で強くなろうってコトですね。コイツ等を使って」


 悪魔達を指さすヒカルちゃんに、俺は頷く。


「今の俺のレベルは1だ。だから『ステータス捕食』のレベルはドンドン上がっていくと思う。そしてレベルアップした『ステータス捕食』を『スキル複写』でヒカルちゃんにコピーし直したら、ヒカルちゃんも一気に強くなれるだろ?」

「あ、それイイですね。じゃあ早速『ステータス捕食』をトモキ先輩にコピーしますね」


 ヒカルちゃんがほほ笑んだ時には。


「お。さっそくスキルに『ステータス捕食』が記載されたな」


 俺はスキル『ステータス捕食』を手に入れていた。


 と、そこで今まで黙ってたモカが声を上げる。


「なあロックにぃ。ウチにはロックにぃがナニする気ィなんかゼンゼン分からへんのやけど?」

「ヒカルちゃんのスキル『ステータス捕食』は、食べた相手のステータスを自分のステータスにプラスできる能力なんだ」

「強い敵を食べれば食べるほど、強うなれる、ちゅうコト?」

「その通り」

「凄いやん! そしたらウチもそのスキルをコピーしてもろたら、ドンドン強うなれる、ちゅうコトやな」


 目を輝かせるモカに、俺は首を横に振ってみせる。


「そうはいかない。今の『ステータス捕食』は丸呑みした相手のステータスを取り込めるもの。敵の体を全部食べるなんて、モカに出来るか?」

「え? ゼンブ? 敵の体をゼンブ食べなアカンの? そらちょっと……」


 急に勢いがなくなるモカに、俺は質問を続ける。


「全部が無理なら、一口だけ食べる、ってのはどうだ?」

「いや、一口でも、ちょっと……」


 リアルに想像したんだろう。

 モカが吐きそうな顔になってる。

 ま、からかうのは、この辺にしておくか。


「だから俺が悪魔に噛み付いて『ステータス捕食』のレベルを上げる。そのレベルアップした『ステータス捕食』をヒカルちゃんが『スキル複写』で、まず自分にコピー。その後、ヒカルちゃんからモカに『ステータス捕食』をコピーしてもらうコトにしよう」

「ロックから直接ウチにコピーして貰たらエエんちゃうの?」


 モカの当然の質問に、俺は苦笑を浮かべる。


「スキル『スキル複写』で出来るコトは2つしかない。ヒカルちゃんが持ってるスキルを相手にコピーするコトと、相手からスキルをコピーするコトだ。もちろんスキルをコピーする能力だから、相手からスキルを奪えるワケじゃない。そして倒した相手か、コピーされるコトを承諾した相手からしかコピーできない」

「思うたより応用が利かへんスキルやな」


 そう言ったモカに、俺は肩をすくめてみせる。


「あたりまえだ。相手からスキルを強奪したり、勝手にスキルを、人から人に移し替えれるようなチートな能力なんか、ある筈が無い」

「ま、あったら偉いコトになるわな」


 と、モカが納得したトコで。


「じゃあスキル『ステータス捕食』のレベルを上げるか」


 俺は、そう言うと手足を失った悪魔の1匹に歩み寄り。


「とはいえ、イザとなるとイヤなモンだな。でも弱音を吐いても仕方ない。ここは覚悟を決めるか」


 俺はそう呟いて、天を仰いだ後。


 ガブッ!


 悪魔の肩に噛み付いた。

 そして。


「ぎぇええええええ!? な、何を!?」


 恐怖の悲鳴を上げる悪魔を無視して。


 ブチブチブチ!


 悪魔の肩の肉を齧り取り、血の臭いを我慢して、一気に飲み込む!

 ……つもりだったけど、やっぱ無理だわ。

 噛み付くだけで精一杯。

 肉を齧り取って、更に飲み込むなんてキツ過ぎる。


 ってか、噛み付くだけでも、かなりキツいぞ。


「う~~ん、困ったな……よし、とりあえず、このまま何度も噛み付こう! それで『ステータス捕食』がレベルアップしたらラッキー。ダメだったら、その時に改めて考えるコトにしよう」


 というコトで、もう1度、悪魔に噛み付く。


 ガブ。


「あぎゃ!」


 ……ダメだな『ステータス捕食』がレベルアップする気配がない。

 じゃあ、もう何回かトライするか。


 ガブ。ガブ。ガブ。ガブ。


「ぎゃあ! ひぃい! がぁあ! や、やめてぇええ!」


 と、悪魔が4回、悲鳴を上げたトコで。


《スキル『ステータス捕食』がLv2になりました。

 相手の四分の一を食べたらステータスを得る事が出来ます》


 というアナウンスが、俺の脳内に響いた。


 よし、結局6回のトライでレベルがアップしたぞ。

 これはかなりの、いや普通なら有り得ないスピードでのレベルアップだ。

 なにしろ『ステータス捕食』は、多分だけど誰も知らないレアスキル。

 しかも、ヒカルちゃんが260年かけてもレベルアップしなかったスキル。

 それが、たった5回でレベルアップなんて、普通なら有り得ないコトだ。


 とはいえ、相手の四分の一を食べるのもハードルが高すぎる。

 だから俺は、再び悪魔に何度も噛み付くコトにする。

 そして何度も何度も悪魔に噛み付くコトにより。


《スキル『ステータス捕食』がLv9になりました。

 相手の血を1滴口にするだけでステータスを得る事が出来ます。

 なお、これ以上、このスキルはレベルアップする事はありません》


 ついにスキル『ステータス捕食』をカンストさせるコトに成功した。

 よし、さっそくヒカルちゃんに報告だ。


「ヒカルちゃん。『ステータス捕食』がカンストしたからコピーしてくれ」

「もうですか!? 早かったですね!」


 笑顔弾けるヒカルちゃんに、俺も笑みを返す。


「今の俺のレベルは1だからな。ここまでレベル差が大きいとスキルのレベルもガンガン上がるさ」

「ちょっと羨ましいかも」


 そう言いながらも、ヒカルちゃんは『ステータス捕食Lv9』をコピー。

 そして。


「じゃあモカちゃんにもコピーしますね」

「感謝や!」


 こうしてモカも『ステータス捕食』を入手した。

 となったら、やるコトは1つ。


「よし、じゃあこの悪魔達の血を口にしてステータスをアップさせようぜ。なにしろ血を一滴舐めるダケでイイんだから」


 俺は装備している鎧から太刀を生やすと。


 スゥ。


「ぎゃぁあああああああああああ!」


 何度も噛み付いた悪魔に、太刀を突き刺した。











2023 オオネ サクヤⒸ

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