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   第十五話  忍者に興味があるのかい?





 京の都で最強の武器と防具を手に入れた後。

 俺は『里山の民』強化イベントがスタートする道具屋に直行した。

 場所は京の都の端っこ。

 しかも、かなり薄汚れた店だ。


 京の都には、綺麗な店が沢山ある。

 この店で買い物をしようと思う者はいないだろう。

 なにしろ店はボロく、売ってる物は、どこでも買える物。

 なのに値段は、他の店の倍なんだから。


 もちろん、何かあるんじゃ? と思うプレイヤーもいただろう。

 しかし店中探しても、何も発見できない。

 意味ありげな物を仕込んでいるが、時間を無駄にするだけのシロモノだ。

 店主も意味深な事を言うが、それも引っ掛け。

 全部ガセネタなので、それに気付いた時、プレイヤーは絶望するだろう。

 あるいは怒り狂うかも。


 でも。

 この店に置いてある忍者の絵草紙。

 それを手に取り、5ページを開いて待っていると。


「忍者に興味があるのかい?」


 と、店主が語り掛けてくるんだ。

 よし、イベントがスタートしたぞ。


 でも、これからだ。

 幾つものチェックポイントをクリアしないと、即失敗となる。

 ま、俺がプログラムしたんだから、失敗なんてありえないけどね。

 じゃあ、そろそろ正しいキーワードを言うか。


「そうだ。忍者のスキルに興味がある。特に伊賀忍者の」


 俺が一字一句間違わずにキーワードを口にすると。


「そうかい、伊賀かい。なら伊賀屋って料亭に行って、これを見せてみな」


 道具屋の主人が花札を差し出した。

 複雑な切り口によって、2つに切り分けられた花札の片方だ。


 よし!

 これで第2チェックポイントクリアだ。

 と同時に、キーアイテムを手に入れたぞ。

 さて、さっさと伊賀屋に急ぐか。


 というワケで到着したのが、伊賀屋。

 京の都で1番大きな料亭だ。

 もっともそれは俺がプログラムした時の話。

 転生者がいろいろな店を出してるから、今じゃ3番目ってトコかな。

 ま、いっか。

 さっさとイベントを進めよう。


 が、ここでいきなり花札を出したら強化イベント失敗。

 正解は。


「1人だけど、郷土料理コースを注文できますか?」


 そう店員に聞くコト。


 どの店員でも良いワケじゃない。

 料亭の入り口にズラリと並んでいる、右から3番目の店員だ。

 これが第3チェックポイントになる。

 そして店員が。


「はい、御一人様御案内! で、どの郷土料理をご用意いたしましょう」


 メニューを見せて聞いてくる。

 第4チェックポイントだ。


「伊賀名物料理コースで」


 と、メニューに載っていない料理名を告げる。

 ここでメニューに載っている料理を選んだらイベント失敗だ。

 そして。


「はい。ではこちらに」


 店員が案内してくれる途中で、厨房から顔を出した料理人に。


「お。強そうだね。伊賀名物料理を頼んだから、よろしく」


 と声をかける。

 これが第5チェックポイント。


 もし声を駆けなかったら、やっぱりここでイベント失敗。

 かなり難易度の高い罠だ。 

 そして。


「では、この部屋でお待ちください」


 と通された部屋で待つ。

 こじんまりした部屋で、中央に机があり、その上に盆が乗っている。

 床の間には掛け軸がかけられ、生け花が飾られている。

 かなりの時間を待たされるが、こちらからアクションを起こしてはいけない。

 もちろん『すみませ~~ん』なんて店員を読んだら、即失敗。

 これが第6チェックポイントだ。


 そして待つ事10分。

 料亭の女将さんがやって来ると。


「お客様、伊賀名物料理コースという料理は御出ししておりませんので、他の料理では如何でしょうか」


 そう言って頭を下げる。

 が、これを承知したらイベント失敗。


「じゃあ、これを料理してもらえますか」


 そう答えて、道具屋で貰った花札を見せる。

 これで第7チェックポイントクリアだ。


 でも、このまま手渡したら、やっぱり失敗。

 部屋の机の上に置かれたお盆に花札を乗せ。


「よく吟味してください」


 そう言って差し出して、第8チェックポイントクリア。

 もちろん、言葉を1つ間違ってもアウトになってたところだ。

 そして女将さんは盆を受け取ると。


「お客様、調理する素材を、ご自分で選ばれますか?」


 そう聞いてきた。

 第9チェックポイントだ。

 キーワードは。


「伊賀で捕れる素材があるのなら」


 そして。


「なら、これは御返ししましょう」


 女将さんから花札を返してもらう。


 さあ、ここからが最後のチェックポイント。

 複雑な手順を間違うコトなく進めないと失敗になる。


「失礼」


 俺は最後のキーワードを言うと、床の間の掛け軸を取り外す。

 外した掛け軸は、綺麗に巻いて机の上に置く。

 これも間違ったら、即アウトだ。


 続いて後ろの壁をトンと押すと、壁がグルンと回った。

 その壁の後ろに隠された部屋に入る。

 そして、その隠し部屋の壁に埋め込まれた、半分になった花札に近づき。

 俺が持っていた花札の切り口を合わせると。


 ゴゴゴゴゴゴゴ。


 重々しい音を立てて、床に階段が現れた。

 京の都の隠しダンジョン『伊賀の試練のダンジョン』の入り口だ。


 ああ、よかった。

 クリアする自信はあったけど、もし失敗したらどうしようかと思ったよ。

 でもやっと『里山の民』強化イベントの1つに辿り着いた。

 ここから最強の道が始まるんだ。

 よーし、やるぞぉ!








2023 オオネ サクヤⒸ

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