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   第百四十八話 人外の存在になってた







「トモキ先輩、トモキ先輩なんですよね!」


 可愛らしい女の子の声を上げるヤマタノオロチに。


「その声、まさかヒカルちゃん?」


 俺もつい、間抜けな声を上げてしまう。


「そうです、ヒカルです!」


 うん、何度聞いても、記憶にあるヒカルちゃんの声だ。

 さっきまで、地の底から響くようなバリトンだったのに。

 でもヒカルちゃんがヤマタノオロチに転生したのも当然かも。

 凄い情熱とエネルギーで、ヤマタノオロチをプログラムしてたから。


 なんて俺が思い出に浸ってるとヒカルちゃんは。


「トモキ先輩、会いたかった!」


 女の子の姿になって、キュッと抱き着いてきた。

 ちょっと低めだけど、スポーツで鍛えた、引き締まった体つき。

 小動物を思わせる、ちょっとオドオドした感じの可愛らしい顔。

 俺に記憶通りのヒカルちゃんだ。


「転生してから261年……たった1人で寂しかったです……」


 ヒカルちゃんが、俺の胸に顔をうずめて小さな声を漏らした。


 そういやヤマタノオロチって最初から存在してる設定だったけ。

 ならヒカルちゃんが、ヤマタノオロチに転生したのは261年前。

 1人で生きるには長すぎる時間だ。


 でも、どうして1人きりで?

 人の姿になれるんだから、街で暮らしたら良かったのに。

 そう言おうとしたトコで。


「ロックにぃ、ソレ、どちらさん?」


 背後からモカの声が聞こえてきた。


 って何故だ?

 穏やかな声なのに、ナンで背中に冷たいモノが走るんだ?

 上手く説明できないナニかを感じながら、俺が振り向くと。

 そこにはモカの笑顔があった。


 おかしい、ナンで笑顔が怖く感じるんだろ。

 しかもモカの背後に、底知れない黒いエネルギーを感じる。

 あれ? これは冷や汗か?

 俺の体はどうしたんだ?

 ひょっとして体が、本能が脅えている?

 今の俺に勝てないモノなんて存在しないハズなのに。

 でも……。


 と俺が混乱してると。


「あ、ワタシ、トモキ先輩と一緒にファイナルクエストをプログラムした、岩井ヒカルっていいます。宜しく」


 ヒカルちゃんが、とんでもないコトを口にした。


 モカもコレには驚いたのだろう。


「ほえ?」


 背負ってた黒いナニかが消え去り、ポカンと口を開ける。

 が、すぐに我に返ると。


「ロックにぃ、今のホンマなん!?」


 俺の前に駆け寄ってきた。


「ホンマにロックにぃが、この世界を作ったん!?」

「いや、この世界を作ったのは、この世界の神様だろ? 俺はファイナルクエストをプログラムしたダケだし」


 視線を逸らす俺に、モカが大声になる。


「ナンでウチに教えてくれへんかったん!?」

「いや、べつに大したコトじゃないから……」

「十分に大したコトやん!」


 更に声が大きくなるモカに、俺は平静を装って話す。


「いいか、モカ。それはあくまで前世のコト。今の俺は、この世界で生まれ育ったロックなんだ」

「そ、それはそうやけど……」


 お、モカの声が弱くなったぞ。

 このままうやむやにしてしまおう。


「そして生まれ変わって別の人生を歩んでるのに、前世のコトに縛られるなんてヘンだと思わないか?」

「いや、まあ、そうかな?」


 よし、もう一息だ。


「前世がどうであろうと、モカはモカ。なら俺だって、前世とナンの関係もない只のロック。それでいいじゃないか」

「う~~ん、そうかも」


 やった、上手く誤魔化せたぞ。


 と俺が心の中でガッツポーズを決めてると。


「え~~と、トモキ先輩。そのステータスで前世は関係ないって言っても説得力ないんじゃないですか?」


 思わぬトコからツッコみが入った。


「ワタシは伝説の怪物ヤマタノオロチだからイイですけど、トモキ先輩は一応人間なんですよね?」


 一応って何だよ。俺は正真正銘、人間だ。


「その人間がヤマタノオロチよりブッチギリで強い時点で、もう只のロックで通るはずが無いじゃないですよ」

「いや黙ってればバレないし」


 俺に言い訳に、ヒカルちゃんの目が呆れたモノになる。


「鑑定1発でバレますよ」

「勝手に鑑定するヤツは滅多にいないさ」

「でも冒険者カードを出したらバレますよ。カードには持ち主のステータスが自動で表記されるんですから」

「あっちゃ~~、それがあったか」


 ヒカルちゃんの指摘に、俺は頭を抱えた。


「冒険者カードを提示しないと依頼は受けられないし、カード決済も出来ないから絶対に人に見せるコトになりますよね? そしたら普通の人間じゃないって、直ぐにバレちゃいますよ」

「うう……」


 言い返す言葉が無い俺に、ヒカルちゃんが更に追い打ち。


「それに一応人間って言ったけど、トモキ先輩の表記はもうリビングメイル。立派な人外です」

「そういやそうだった!」


 忘れてたけど、俺は鎧と融合したんだっけ。

 うん、ヒカルちゃんの言う通り、こりゃマジでマズいわ。


「困ったな……」


 ガックリと肩を落とす俺に、ヒカルちゃんが眩しい笑顔を向ける。


「大丈夫です。ワタシが一緒にいますから。人間じゃないモノ2人で、楽しく生きていきましょ、トモキ先輩」


 うわ。

 一点の曇りもない目でそんなコト言われたら感動するじゃないか。

 と、そこに。


「勝手なコト、言わんといて。ロックにぃにはウチの大切な兄貴なんやさかい」


 モカが頬を膨らませて割り込んできた。


「普通の人間が何を言ってるんです?」


 アッサリと受け流すヒカルちゃんに、モカがフンと鼻を鳴らす。


「それはウチを鑑定してから言うんやな」

「鑑定?」


 ヒカルちゃんは眉をひそめながらも鑑定を発動させると。


「うそ……」


 目を丸くして固まった。


「? モカ、俺も鑑定していいか?」

「もちろんや」


 なぜかうれしそうなモカを鑑定してみると。


 リビングメイル=モカ

 HP    800兆

 ⅯP    800兆

 攻撃力  1500兆

 防御力  1500兆


 モカも人外の存在になってた。








2023 オオネ サクヤⒸ

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