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   第百四十七話 ひょっとしてトモキ先輩ですか?






「というワケで、俺は超強化した鎧と融合、オマエを超える戦闘力を得たのさ」


 俺はそう言うと、ヤマタノオロチに向かって両手を広げてみせる。

 さっきの死を覚悟したモカと違い、俺のは挑発だ。


「オマエも転生者だろ? なら鑑定してみろよ、今の俺の強さを」

「「「「「「「「む! これは……」」」」」」」」


 ヤマタノオロチは、素直に鑑定したらしい。

 俺のステータスを視て絶叫する。


「「「「「「「「有り得ぬ! こんなステータス、存在する筈がない!」」」」」」」」


 驚くのも無理ないだろうな。


 リビングメイル=ロック(転生者)

 HP    2500兆

 ⅯP    2500兆

 攻撃力   7000兆

 防御力   7000兆


 これが今の俺のステータスなんだから。


 しかも融合した武具の特殊能力もナチュラルに使える。

 例えば。


「いくぞ」


「「「「「「「「グワッ!」」」」」」」」


 俺は右手から生やした槍をグンと伸ばして、ヤマタノオロチをなぎ倒した。

 融合した武器の1つ、如意神槍の能力だ。


「そら」


 今度は万の斬撃を飛ばす。

 英雄神の万斬太刀の能力だ。


「「「「「「「「ギャァアア!」」」」」」」」


 おや?

 手加減に失敗したか?

 ヤマタノオロチがズタズタになって死にかけてるぞ。


 って心配いらなかったみたいだな。

 見る見るうちに傷が回復していく。

 これがスキル『超高速回復』の力か。


「「「「「「「「おのれェ」!」」」」」」」


 腹立たし気な声を上げるヤマタノオロチを、今度は軽く小突く。

 それだけで。


「「「「「「「「グハッ!」」」」」」」」


 ヤマタノオロチの体が、文字通り「く」の字に折れ曲がった。

 まさにチート無双ってヤツだな。

 ヤマタノオロチすら敵じゃない。


 なんて油断は禁物。

 力に溺れるコトなく、確実に倒してしまおう。

 と俺が止めを刺そうとしたトコで。


「「「「「「「「うおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」


 ヤマタノオロチが今まで聞いたコトも無いほどの絶叫をあげ。


「「「「「「「「ぬううううううううううううう!!!!!!!!」」」」」」」」


 全身に力を込めたかと思ったら。


 グギュギュギュギュギュギュギュ!


 ドンドン小さくなっていき、そして。


「ふしゅぅぅぅぅぅ!」


 人間サイズにまで縮んだ。


 顔は龍のままだが数は1つになり、体は鱗に覆われている。

 なるほど、これがスキル『圧縮人化』か。

 でも残りの7つの頭はどうやってるんだろ?

 などと考えていると。


「これで我の能力は10倍化した。それでもキサマのステータスには及ばぬが、そこはスキルでカバーする」


 ヤマタノオロチの体が炎に包まれた。

 ってコレ、プラズマ砲を無効にしたスキル『炎熱纏い』か。


「では、参る!」


 言うと同時にヤマタノオロチが拳を放ってくる。


 む! 鋭い!

 手の足も無い姿をしてたクセに、達人の動きだぞ、これ!

 というか空手の動きだ!


 ひょっとして前世で空手を修行してたのか?

 けど俺だって空手の修行はしてる。

 竜宮城でも空手の稽古をした。

 空手対決で負けるワケにはいかない!


 というコトで俺は、空手の技をヤマタノオロチと競うコトにした。


 ふむ、確かに鋭い打撃だ。

 正拳突きも蹴りもレベルが高い。


 しかし自分の持てる全ての破壊力を相手に叩き込むモノじゃない。

 僅かだが体に残ってる余分な力がスピードを邪魔している。

 膝のバネの使い方は甘いから、打撃にキレが足りない。

 重心が僅かに高いので、1番力を発揮するポジションで攻撃できてない。

 膝と腰の回転が不足してるから、打撃に加速が足りてない。

 肩に力が入ってるから、打撃の速度が僅かに遅くなってる。

 脇が開いてるのも、打撃にキレが無い原因だ。

 前傾姿勢が僅かに崩れるから、全体重が打撃に乗ってない。

 もっと拳の握りに神経を尖らせたら、打撃に貫通力が生まれるのに。

 力を十分に籠められないのは、顎が少し前に出てるから。


 といった1つ1つの欠点が生み出す攻撃力の低下は僅かなモノ。

 しかし10個も集まれば、攻撃力の低下は大きなモノになる。

 具体的に言うと、相手を吹き飛ばせるのに倒せない。

 攻撃をいくら叩き込んでもノックアウトできない。


 それはヤマタノオロチも同じ。

 痛みを感じるが、ダメージを蓄積させる打撃じゃない。

 動きは悪くないが、相手を倒す決定力に欠ける空手。

 それがヤマタノオロチの空手だ。


 なら少しくらい攻撃をくらっても心配いらない。

 さっさと仕留めてしまおう。


 といっても無防備で打撃を食らうつもりはない。

 俺はヤマタノオロチの正拳突きを柔らかく受け流すと。


「わわ!」


 バチーン!


 バランスを崩したヤマタノオロチの顔面に、正拳突きを放った。


 いや正確に言うと顔面じゃなくて顎の側面だ。

 ここの綺麗に打ち抜かれると、脳が揺れて足にくる。

 自分の足じゃないみたいに動かそうとしても反応してくれなくなる。


「どうなってるのだ? 立てない!?」


 今のヤマタノオロチのように。


 ふう、こんなに充実した空手の戦いは久しぶりだ。

 今気づいたけど、俺って自分が思ってた以上に空手が好きなのかも。

 ま、それは後で考えるとして、これで勝負ありだ。

 1度、殺し合いを始めた以上、止めを刺さないと。


 俺は大きく息を吸うと、倒れたヤマタノオロチに近づく。


「じゃあなヤマタノオロチ。嬉しそうにお前をプログラムしたヒカルちゃんには悪いけど、止めを刺させてもらうぞ」


 と、俺が渾身の拳を放とうとした瞬間だった。


「それを知ってるなんて、ひょっとしてトモキ先輩ですか?」


 ヤマタノオロチが、想像もしなかった言葉を発したのは。










2023 オオネ サクヤⒸ

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