第百四十六話 キサマ、何をした!?
「「「「「「「「この世界が始まって二百余年、我にダメージを与えた者は無い。その我の首を7つまでも落としたのだ、誇って良いぞ」」」」」」」」
ヤマタノオロチはそう言うと、8つの口を大きく開いた。
「「「「「「「「そんなお前に敬意を表して、神龍の吐息の8属性全てを駆使して、その生を終わらせてやろう」」」」」」」」
言い終わると同時に。
キィィィィィィィン!
8つの口の奥に光が宿る。
それぞれ色に違う光が8種類。
火・水・風・土・雷・冷・光・闇が生み出す光なのだろう。
その8色の光は、どんどん輝きを増していき。
キィイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!
最後には目を開けていられない程の光量になる。
「なんやキレイやなぁ、これが最後に目にする光景やとしたら、悪い人生やなかったかもしれへんなぁ」
そう呟くモカに、俺は言い切る。
「最後のワケないだろ」
「ロックにぃ!?」
驚いた顔で振り返ったモカに、俺は思いっ切り力強く頷く。
「ああ。後は俺に任せてくれ」
そして俺は神龍の吐息を掻き出す寸前のヤマタノオロチを。
「おりゃ!」
「「「「「「「「ブァッ!?」」」」」」」」
8つまとめて蹴り飛ばした。
「ロックにぃ、その強さは……」
真面に戦ったら絶対に勝てない敵を楽々と蹴り飛ばしたからだろう。
モカが言葉を失っている。
俺は、そんなモカの頭にそっと手を乗せると。
「モカがガンバってくれたおかげで武器を強化できた。ありがとな」
モカの頭を何度もナデナデする。
「うぇぇぇぇぇぇぇ、死ぬかと思ったよ~~~~~」
緊張の糸が切れたのだろう。
モカが顔をクシャクシャにして抱き着いてきた。
そんなモカを俺はギュッと抱きしめる。
「ああ、モカの頑張りは見てたぞ。よしよし」
「ロックにぃ~~~~~」
俺に抱き着く手に、更に力を入れたモカを左手で抱き締めながら。
「「「「「「「「我に背中を向けて何をしとるか!」」」」」」」」
8つの首で襲い掛かってくるヤマタノオロチを。
ブン!
「「「「「「「「グワッ!」」」」」」」」
右手から伸ばした槍で、今度は地面に叩き付けた。
「ロ、ロックにぃ……今のは?」
目を丸くするモカに、俺は微笑む。
「モカのお陰で手に入れるコトが出来た、新しい力だ。この力でヤマタノオロチを倒すから、良く見ててくれ。ってココは危険だな。モカは天空城の中に避難してた方がイイだろうな」
「う、うん」
俺は、モカが天空城に駆け込むのを確認してから。
「さて、待たせたな」
ヤマタノオロチに向き直った。
と、そこでヤマタノオロチが口を開く。
「「「「「「「「その急激な強化! キサマ、何をした!?」」」」」」」」
……せっかくの質問だし、俺が今まで何をしてたか話そうか。
時を少し戻そう。
モカにヤマタノオロチ迎撃を任せた後。
俺は天空城に駆け込むと武器の融合を始めた。
ヤマタノオロチの出鱈目な攻撃力と防御力。
それに対抗できるダケの武器を作りあげる為に。
じゃあ俺が持っている武器の中で上位のモノを確認するか。
英雄神の万斬太刀(攻撃力 5兆5千億 特殊能力 万斬自在)
神の護り刀 (攻撃力 4兆2千億 特殊能力 殲滅結界)
神秘の七支神刀 (攻撃力 4兆1千億 特殊能力 神秘の泉)
究極無敗の鎧 (攻撃力・防御力 4兆5千億)
瞬装無双の神小手(攻撃力・防御力 5兆)
これは今、俺が装備しているモノ。
そしてマジックバックに収納してる中じゃ。
10倍強化山脈斬りの脇差 (攻撃力 2兆5000億)
10倍強化隕石砕きの神弓 (攻撃力 2兆3000億)
10倍強化如意神槍 (攻撃力 4兆)
10倍強化堅牢強固の盾 (攻撃力・防御力 3兆2000億)
10倍強化百戦錬磨の脛当て(攻撃力・防御力 4兆)
この5つが、特に強い。
これを全部、融合させてみよう。
まずベースとなるのは究極無敗の鎧。
攻撃力と防御力を同時に上げる為には、この選択肢しか思いつかない。
というコトで、HPとⅯPを回復させる神秘の七支刀を融合すると。
攻撃力と防御力が10兆の鎧に変化した。
凄いな、いきなり2倍を超える能力アップだ。
でもヤマタノオロチの680兆には遠く及ばない。
だから他の装備も1つに融合させると攻撃力と防御力は30兆になった。
素晴らしい成果だけど、これじゃゼンゼン足りない。
10倍強化武具も融合させよう。
結果、攻撃力と防御力は50兆にアップした。
くそ、まだヤマタノオロチに対抗できるレベルじゃない。
となると、時間がかかるけど仕方ない。
竜宮城で手に入れた武器を全部、10倍に強化。
その全てを融合させてやる。
というコトで、俺は武具を10倍強化して鎧に融合を繰り返す。
51兆、52兆、54兆、55兆、56兆、57兆、59兆……
たまに2兆アップするけど、1兆しかアップしない方が多い。
って「1兆しか」と言う方が間違ってるのは分かってる。
あ、今度は3兆アップしてくれた。
この調子で頼む!
……無理か、基本1兆しか上がらない。
モカが頑張ってるんだ、一刻も早く強化を終えたい!
って、次が最後の武器か。
その結果、鎧の攻撃力と防御力は、613兆に強化された。
……足りない……いいトコまでいったけど、でも足りない。
これじゃヤマタノオロチに勝てない。
どうしたら……ってアレがあったな。
装備者の肉体そのものを、武具と融合する裏技が。
しかしそれを行うと、俺は武器というカテゴリーに入ってしまう。
モンスターを倒しても経験値は得られないし、レベルアップもしない。
どうする?
と悩む俺に耳に。
「「「「「「「「そんなお前に敬意を表して、神龍の吐息の8属性全てを駆使して、その生を終わらせてやろう」」」」」」」」
ヤマタノオロチの声が届いた。
ってモカがマズい!
悩んでいる場合じゃないだろ!
俺は自分を叱り付けると同時に、鎧と融合したのだった。
2023 オオネ サクヤⒸ




