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   第百四十四話 そんなんアリかいな……






 レールガンとは超々高速で砲弾を撃ち出す兵器。

 そして破壊力は速度の2乗に比例する。

 だから弾速が2倍になれば砲撃の威力は2×2の4倍。

 弾速が3倍になれば砲撃の威力は3×3の9倍。

 10倍になったら威力は10×10で100倍だ。


 しかし砲弾そのものは、単なる鉄の塊。

 なら、その砲弾の代わりに強力な破壊力を持つミサイルを使おう。


 というモカの考えは間違いではなかった。

 大口径レールガンに匹敵する速度で撃ち込まれた極々超音速ミサイルは。


 チュドォン!!!!!


 ヤマタノオロチの体に大穴を開け。


「「「「「「「「グギャァアア!!!!!!!!」」」」」」」」


 ヤマタノオロチに苦痛の叫びを上げさせた。


 だが大穴といっても、それは人間から見た場合。

 ヤマタノオロチにとって致命傷には程遠い。

 しかもスキル『超高速回復』によって、数秒で元に戻る。


「ち! 今度こそイケる、思うたんやけどアカンかったか。いや、ちょっとやけど傷つけるコトには成功したんやし、ここは思い切って全弾、発射してみたる!」


 モカはそう決断すると。


「どや! 極々超音速ミサイル100発や!」


 発射装置に装填されている全てのミサイルを発射した。

 ちなみに1発撃ってるから、今発射した数は99発だとツッコミが聞こえる。


 まあ、それは置いといて。

 モカが発射した極々超音速ミサイルは全弾、ヤマタノオロチに命中。

 凄まじい破壊力をまき散らせた。


 と言いたいトコロだけど。


 ゴォオオオオオオオオオ!


 ドカンドカンドカンドカンドカン!


 ヤマタノオロチの神龍の吐息が、全てのミサイルを撃ち落とした。


「眼で捉えるコトすら出来ひん、超高速で飛来するミサイルを撃ち落としおったやて!? 生物に出来るコトとちゃうで!」


 モカは目を丸くした後、ギュッと拳を握り締める。


「せやけどミサイルを迎撃したちゅうコトは、ミサイルが命中するコトを嫌がったちゅうコトや。つまりダメージを受けるコトを避けた、ちゅうこっちゃ。ほなら迎撃できひん速度で、もっと強力な破壊力を叩き込んだるで!」


 そう言ってモカが手を伸ばしたのはプラズマ砲だ。


「極々超音速ミサイルは速いちゅうても、たかが音速の数十倍か数百倍や。せやけどプラズマ砲は、そうはいかへん。超高熱の熱線を食ろおて蒸発せぇ!」


 6000度と聞いたら、アナタはどう思うだろう?

 それほど大した温度じゃない?

 でも地球上の、あらゆる物が蒸発する温度だ。


 そしてモカが今から撃とうとしているプラズマ砲。

 温度は800万度に設定されている。

 これは地球を数秒で撃ち抜くほどの超高温。

 耐えられる生物など想像も出来ない。


 だからモカは。


「さあて、今度のプラズマ砲は、今までとは一味ちゃうで! レーザーバルカンもレールガンも極々超音速ミサイルも1発の破壊力は決まっとった。せやけど今度のは熱線や。ヤマタノオロチが消滅するまでナンボでも撃ち続けたるさかい、覚悟せぇよ!」


 勝利の予感に心を躍らせながら。


「今度こそ終わりや!」


 ビシュゥゥゥゥゥ。


 ヤマタノオロチにプラズマ砲を撃ち込んだ。

 その地球すら数秒で撃ち抜く800万度の熱線は。


 バチィ!


 ヤマタノオロチに命中し、その体の1点を焼き焦がした。


「「「「「「「「シャギャァァ!!!!!!!!」」」」」」」」


 ヤマタノオロチは悲鳴を上げながらプラズマ砲から逃れようと軌道を変えるが。


「逃がさへんで!」


 モカは『精密射撃』『動態射撃』『移動射撃』により命中点を修正。

 常に同じトコにプラズマ砲を照射し続ける。


「やったで! 焼け焦げた穴が少しづつ広がっていっとる。このまま撃ち続けたらヤマタノオロチを倒せるで!」


 モカの意見は正しい。

 このままだったら、間違いなくヤマタノオロチを倒せていただろう。

 しかし。


「ん? なんや?」


 モカはクシクシと目をこすった。

 気のせいか、焼けた傷が回復したような気がする。

 気のせいか?


「って、気のせいとちゃうやないか!」


 叫んでからモカは、ヤマタノオロチの体に炎に包まれているコトに気付く。


「これってまさか……」


 モカは呟きながらヤマタノオロチを鑑定してみると。

 ヤマタノオロチがスキル『炎熱纏い』を発動させているコトが判明した。


「って、炎熱を纏って、プラズマ砲に対するバリアにしおったんかい!」


 モカはグギギギ、と唸るが。


「ち! プラズマ砲、停止。エネルギーの無駄や」


 プラズマ砲により攻撃を断念した。

 ま、効果なしと判明すると同時に、攻撃を中止したのはイイ判断だ。

 そしてモカはギリッと歯を食いしばると。


「まさか天空城最強の兵器を使わなアカンとこまで追い込まれるとは、これっぽっちも思わへんかったで」


 最後の切り札=ガンマ線バースト砲に目を向けた。


 ガンマ線バースト。

 宇宙を観測してたら1日に1回くらいは目にするコトができる現象だ。

 そういう意味ではありふれた現象と、言えなくもない。


 しかしその威力は、とても「ありふれた」などと表現できるモンじゃない。

 ガンマ線バーストとは、恒星が消滅時に噴き出す、ガンマ線の奔流だ。

 その威力は惑星を死の星に変えるほど。

 近距離で直撃したら惑星すら砕け散るだろう。


 そのガンマ線バーストを位相空間に保存。

 砲口を向けた先に、位相空間からガンマ線バーストを射出する。

 つまり直撃したら惑星すら滅ぶ、究極の破壊兵器がガンマ線バースト砲だ。


「とはいえ、地上に被害が及ばんよぉ、角度を調整して威力を弱めなアカン。最大威力で撃ち込んだら、ヤマタノオロチでも消滅間違いなしやのに、もったいない話しやで」


 ブツブツ文句を言いながら、モカはガンマ線バースト砲を調整する。


 ガンマ線バーストが地上に当たらないように射出角度を調整。

 しかも空を通過しても地上に被害が出ない程度に威力を弱めた。


「はぁ、本来の威力には程遠いけど、その状態でもプラズマ砲なんぞ足元にも及ばへん、天空城最強の兵器=ガンマ線バースト砲、発射や!」


 ドパッ!


 モカは今度こそ、と祈るような気持ちでガンマ線バースト砲を発射した。

 その天空城最強の攻撃は、ヤマタノオロチに命中すると。


 バチィ!


「「「「「「シャギャォオン!!!!!!」」」」」」


 ヤマタノオロチの首を1つ、吹き飛ばした。


「やったでぇ!!」


 モカは今までに無い成果に飛び上がって喜ぶと。


「よっしゃ、ドンドン撃つで!」


 ガンマ線バースト砲の照準をヤマタノオロチに合わせた。

 が、モカが次弾を発射する前に。


 ズルリ。


 ヤマタノオロチが失った首が体から生えた。

 まるで飛び出してきたように見えるほどの勢いで。


「そんなんアリかいな……」


 モカは茫然となるが。


「せやけど首をもぎ取ったんは事実や。こうなったら何度でもその首、千切ったるさかい覚悟でぇ!」


 直ぐに気持ちを立て直すと、ガンマ線バースト砲の狙いを定めた。









2023 オオネ サクヤⒸ

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