第百四十三話 ドンドン撃ち込んで、このまま倒したるで!
今の俺じゃ、絶対に勝てない敵、ヤマタノオロチが襲い掛かってきた。
「ロックにぃ!」
モカが俺の腕にしがみ付いて、悲壮な声を上げるが。
「転送」
俺がそう言うと同時に、目の前からヤマタノオロチの姿が消えた。
いや、ヤマタノオロチが消えたワケじゃない。
俺達がヤマタノオロチの前から消えたのだ。
天空城の転送機能により。
「え!? どないなったん!? ヤマタノオロチは!?」
状況が呑み込めていないモカに、俺は説明する。
「ヤマタノオロチを鑑定するってコトになったろ? あのトキ、妙に悪い予感がしたから天空城にログインしておいたんだ。出来れば俺の力ダケでヤマタノオロチを倒したかったけど、絶対に無理そうだから、天空城に転送で逃げてきたんだ」
ちなみに今、俺とモカがいるのは天空城の島部分だ。
「それやったらそうと、早く教えてほしかったわ。死を覚悟したウチがアホみたいやんか」
モカが、頬を膨らませてる。
こんな顔もカワイイな、とも思うが、今はモカに見とれている場合じゃない。
「あのな、モカ。まだ危機が去ったワケじゃないんだぞ」
「ほぇ?」
頭の上に「?」を浮かべるモカに、俺は空の一画を指さす。
「ヤマタノオロチが、まだ追っかけてきてる」
「ええええええ!?」
空を飛ぶヤマタノオロチを発見したのだろう。
モカが大声を出した。
「ロックにぃ、どないするん!? ヤマタノオロチのヤツ、凄い速さでこっちに飛んで来とるで!」
ワタワタと焦りまくってるモカに、俺はニヤリと笑ってみせる。
「モカ、天空城の武器を使う練習が出来るぞ」
「うわ、簡単に言うてくれるわ」
そう言いながらも、モカは天空城にログイン。
「ほならさっきのカリ、返させてもらうで!」
全武器をコントロール下におくと、獰猛な目をヤマタノオロチに向けた。
「まずは小手調べからや!」
モカが最初に選んだ兵器はレーザーバルカン。
毎分12万発のレーザーを発射する。
主な役目は対空攻撃。
天空城を襲う、飛行兵器を迎撃するコトが、主な目的だ。
そのレーザーの弾幕がヤマタノオロチに集中する。
しかし。
「効いてへん!?」
戦車の装甲すら貫通するレーザーもヤマタノオロチには効果なし。
飛行速度を落とすコトすら出来ない。
「ほんなら最大出力や!」
モカはレーザーバルカンの威力を対戦艦モードに。
つまり戦艦大和の装甲すら簡単に撃ち抜くモードに変更した。
そして天空城に備え付けられたレーザーバルカンの数は100。
だから戦艦を撃ち抜くレーザーが毎分1200万発、発射されるが。
「これも平気なん!?」
モカが避けんだように、ヤマタノオロチの飛行を乱すコトは出来なかった。
「ち! そしたら次や!」
次にモカが選んだのはレールガンだ。
「いろんな大きさのレールガンが装備されてるようやけど、まず最初は1番小さいヤツからやな」
1番小さいといっても、レーザーバルカンで倒せなかったモノが対象。
戦艦5隻を撃ち抜く威力を持っている。
「さーて、レーザーバルカンには耐えたみたいやけど、コレならどないや?」
モカは、そのレールガン10門の照準をヤマタノオロチに合わせ。
「ふっとべ!」
レールガンをぶっ放した。
ちなみに今、天空城はヤマタノオロチから全速力で逃げている形。
それをヤマタノオロチは高速で追いかけている状態だ。
つまり天空城は全速飛行の影響で、ビリビリと揺れている。
そしてヤマタノオロチも1直線に飛んでるワケじゃない。
風圧のせいで、微妙にユラユラを飛行軌道が変わる。
だから弾をバラ撒くレーザーバルカンと違い、命中させるのは困難だが。
ドカン! × 10
10門のレールガンは全て、ヤマタノオロチに命中した。
スキル『精密射撃』『移動射撃』『動態射撃』の効果で。
しかし命中したものの。
「コレにも耐えおるんかいな」
モカがフンと鼻を鳴らしたように、ヤマタノオロチは無傷。
ジリジリと天空城との距離を縮めて来ている。
「かぁ~~、難儀なやっちゃなぁ。ほんなら1番デッカイのを食らわせたる!」
天空城が装備しているレールガンは5種類。
戦艦5隻を撃ち抜くもの。
地下要塞すら撃ち抜くもの。
山を撃ち抜くもの。
山脈を撃ち抜くもの。
大陸を撃ち抜くもの。
つまりモカは大陸を撃ち抜く威力のレールガンでヤマタノオロチを狙うと。
「ほな、さよなら」
ドォッカァアアアアン!!!!!!!!
最大威力のレールガンをヤマタノオロチに撃ち込んだ。
「どや! 大陸すら撃ち抜く威力や、なんぼヤマタノオロチいうても耐えられへんかったやろ!」
モカはヤマタノオロチを倒したと確信にたみたいだけど。
「はぁ!?」
天空城へと迫るヤマタノオロチを目にして、ポカンと口を開けた。
「って、どないなっとるねん! 大陸を撃ち抜くレールガンに直撃されても平気なんか!?」
と口にしたモカの目がキラリと光る。
「なんや、やせ我慢しおって。ちゃんとダメージ受けとるやん」
モカが言ったように、さすがに無傷というワケにはいかなかったらしい。
ヤマタノオロチの体にはレールガンの砲弾が食い込んでいた。
「よっしゃー! なら次や次! ドンドン撃ち込んで、このまま倒したるで!」
モカは張り切って次弾を発射しようとするが。
「ん?」
砲弾が体からポロリと抜け落ちると。
「なんやぁ――!? アッという間に傷口が塞がりおった!?」
モカが叫んだように、ヤマタノオロチの傷は瞬時に回復した。
「まさか1番デカいレールガンが役に立たへんとは思ってもみぃへんかったで。でも砲弾は効かへんのやったら。コレの出番やな!」
モカが選択した兵器は極々超音速ミサイルだ。
「砲弾は只の鉄の塊やけど、今度命中するんは強力なミサイルや。コレならヤマタノオロチに大ダメージを与える……ハズや」
今までのコトを考えて、ちょっとモカの声が小さくなるが。
「いーや、レールガンより強力なんやさかい、絶対ヤマタノオロチに大ダメージ与えられるに決まっとる!」
モカはそう言い切ると。
「極々超音速ミサイル、発射や!」
シュパァアアアア!
ヤマタノオロチに極々超音速ミサイルを撃ち込んだ。
2023 オオネ サクヤⒸ




