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   第十四話  冒険者カード払いで





 33億3586万4500ゴルドという大金を得た後。


「じゃあな、ロック。また顔を出してくれ」


 そう言って笑うグラッグさんに見送られ、俺は冒険者ギルドを後にした。


 今、目指しているのは道具屋だ。

 京の都には、色々な道具屋をプログラムしている。

 冒険者にアイテムを売る、ゲームでもよく買い物をする店。

 町の飾りとして見た目だけ整えた、買い物とは無縁の店。

 隠し要素をクリアすると利用できるようになるレアショップ。

 高レベルの冒険者だけが利用できるショップ。

 色々な情報が得られる店。

 この世界に暮らす人達が、独自に出した店。

 そして、ある手順を踏むとイベントがスタートする店だ。


 よし、さっそくその店に行って、最強を目指すとするか。


 おっと、その前に。

 用心の為に、物資を買い備えておいた方がイイよね。

 なにしろ、この世界はリアル。

 思いもしない事態に遭遇するかもしれないのだから。


 なので、冒険者として必要な物を買い。

 衣類や食器などを一瞬で綺麗にする、清潔の生活魔法を魔法書で覚える。


「あと、武具も今より良いモンがあったら装備しとこうかな」


 というコトで、俺は武器屋に向かう。

 京の都で1番と噂の武器屋だ。


「この店で1番攻撃力が高い武器は、どれかな」


 俺は入り口を潜ると、店の1番奥へと歩いていく。

 手前に無造作に並べられた数打ちではなく。

 ケースに飾られた、高級品らしき武器を見る為に。


「へえ、ここ等にあるのは銘がある刀ばかりだな」


 銘とは、その刀だけの名前のコトだ。

 正宗とか村正みたいに。

 まあ正宗でも三日月正宗とか色々あるけど。

 などと考えながら、ケースを覗き込んでると。


「おいおい坊主、ここはオマエごときが入れる店じゃないぞ」


 後ろから明らかに馬鹿にした声が聞こえてきた。

 振り返ってみると。


「さ、商売の邪魔だから、さっさと出ていきな」


 京の都らしく、丁稚姿の店員が俺を見下ろしていた。


「確かにボクは子供ですけど、ここにある武器が買えないとは限りませんよ」


 そう俺が言い返すと、店員の目が吊り上がった。


「あのなぁ、ここに並んでる刀は最低でも600万ゴルドなんだぞ。オマエみたいな子供に変えるワケないだろ!」

「はぁ」


 大声を出す店員に、俺はため息をつくと。


「店は大きいかもしれませんが、店員の質は低い店ですね。こんな店、こっちから願い下げですよ」


 ちょっとイラッときたので、そう言い放って店を出る事にした。

 のだが。


「こぉぉぉんの大馬鹿モンがぁぁぁぁぁぁ!」


 妙に迫力のある怒鳴り声が響き。


 カパァン!


 顔を真っ赤にした老人が、偉そうな店員の頭をフライパンでドツき倒した。


「痛ってぇぇぇぇぇぇぇ! バアちゃん、何すんだよ!」


 頭を抱えながら、涙目で抗議する偉そうな店員に。


「そのお客さんは、攻撃力11000超えのアサシンなんだよ! そんなバケモンにケンカ売ってどうすんだよ! 殺されたいのかい!」


「え? 攻撃力11000超え? アサシン? まさか、こんなガキが?」


 顔色が青くなり、青白くなり、最後には死人の顔色になった店員に。


「ま、オマエみたいな出来の悪い孫なんぞ、殺された方が店の為だけどね!」


 老人が、そう怒鳴った。


「そ、そんなぁ~~」


 ついには泣き出す店員の尻を、老人がドカッと蹴り飛ばす。


「そんなんだからオマエに店を任せられないんだよ、この能無しが! 便所掃除でもしてな!」

「はひぃい~~」


 偉そうだった店員が、泣きながら店の奥に引っ込むと。


「村雨屋の主人、二階堂菊でございます。先程は大変失礼をいたしました」


 二階堂菊さんが、俺に深々と頭を下げた。


「本来ならクビにするべき大バカ者なのですが、残念ながらあの者は、たった1人の孫なのです。故に見捨てる事も出来ず、性根を鍛え直しておったのですが、一向に成果を上げられず、ご迷惑をおかけしてしまいました」


 そして菊さんは、展示ケースの前に立つと。


「お詫びに、どの刀でも2割引きで販売させていただきます。これが私に出来るギリギリのお詫びです。これでお許しいただけないでしょうか」


 もう1度、頭を下げた。

 うん、この人は信用できそうだ。

 俺はそう判断すると。


「分かりました。ではボクの身長で使いやすい刀を見せてもらえますか」


 そう言って笑みを浮かべてみせる。


「承知いたしました。こちらは如何でしょう」


 さっそく菊さんが見せてくれたのは、刀身40センチほどの刀だった。

 いや刀じゃないな、その刃の形は大型ナイフのモノだ。

 どうやら刀だけを売っているワケじゃないらしい。


「ヤマセミロングという銘を与えられた、大型の鎧通しです。刃の厚みが1センチもあるのにヒヒイロカネ鍛造の為、程よい重さに仕上げられております」


 手に取ってみると、驚くほど軽い。

 でも振ってみると、刀身の重さが上手く斬撃に乗る。


「攻撃力は2200もあります。名工の作ですので、普通ではあり得ない攻撃力を引き出しております。分類上はナイフですが、他の店で売っているどんな武器よりも高い攻撃力を持っていると自負しております」


 値札に視線を走らせると、2000万ゴルドとある。


「鍛造ヒヒイロカネのナイフが2000万なんて、格安ですね」


 素直な感想をぶつけてみると。


「この職人さんが手掛けたモノは全てウチが買い取る契約なので、普通より遥かに安く、高品質のモノを販売できております」


 という答えが返ってきた。

 なるほど、それなら決定だ。


「気にいりました。これを貰いたいけど、冒険者カード払いで大丈夫ですか?」

「もちろんです」


 ニコッと笑う二階堂さんに、俺は聞いてみる。


「これと同じモノはありますか?」


 普通なら、ある筈などないのだが。


「はい。この職人さんは腕利きなので、ほぼ同じモノが2本ございます」

「なら全部で3本ですね。全部いただきます」

「ありがとうございます」


 というコトで。

 俺は攻撃力が2200もある武器を手に入れたのだった。


 よし、次は防具だ!

 と、意気込む俺に。


「こちらは「龍の戦衣」。文字通り、龍の皮で仕立てた戦衣装です。見た目は普通の服ですが1200もの防御力を誇ります。おそらく京の都で1番の防御力を持つ防具です」


 値段は、これも2000万ゴルド。


「ではそれも売ってください。もしあれば、着替えを含めて合計3着」

「毎度ありがとうございます。では御約束通り2割引きで販売させていただきますので、ヤマセミロング3本と龍の皮の戦衣装3着で合計9600万ゴルドでございます」

「では冒険者カード払いで」


 こうして俺は、京の都で1番の武器と防具を手に入れたのだった。








2023 オオネ サクヤⒸ

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